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【特集:農業・食から見る栄養改善への道】家庭菜園と養鶏と栄養クッキングで栄養改善

各セクターの戦略活かしともに考える

パキスタン:パンジャブ州栄養施策推進アドバイザー業務

デモ栄養ガーデンで収穫されたキャベツを持つ現地の中学生

(株)コーエイリサーチ&コンサルティング
郭 詠理(かく えいり)さん
農学部出身。海外修士課程修了後、農業系NGO・コンサルティング企業に入社。日本の農業について学ぶため、与論島や埼玉などで研修。29歳の時、南スーダンの農業・農村開発プロジェクトに携わる人材募集をしていたシステム科学コンサルタンツ(当時)に入社。


 海外の農業に携わりたいと開発コンサルタントの道を選び、最近は農業を通じた栄養に業務の幅を広げている郭詠理さん。現在携わるのはパキスタンでの母子を中心とした低栄養課題。パンジャブ州では政府の各セクターが関わる「マルチセクトラル栄養センター」が2016年に設立され、保健局では栄養補助食品を配布し、農業局では家庭菜園の種を販売、畜産局では養鶏の普及活動を行い、教育局では学校菜園を推進するなど、各局が栄養戦略を実行しているが、セクター横断的な政策はなく、それらの融合による相乗効果を図って、郭さんらは動いた。
 栄養改善の啓発活動として、各セクターの戦略を取り入れ、保健所の敷地に菜園と養鶏スペースから成るデモガーデンを設置。野菜や卵の栄養素について説明する看板を作り、自宅での実践に必要なキットを裨益者に配布。管理技術に加え、収穫物を使った栄養バランスの良いレシピや栄養価を維持しやすい調理方法の紹介なども行う。レシピ作成時に郭さんが現地の栄養士に問いかけたのは「栄養補助食品の摂取が終わっても、食事から十分な栄養を摂り続けられる低コストで簡単なレシピを提案できないか」ということ。「一緒に考えて現地の人々に納得してもらい、持続可能な活動にできるよう心掛けている」と郭さん。多くの人の興味を惹くよう、レシピ写真の見映えにも配慮した。
 今後、「栄養改善のための家庭菜園」などのビデオ制作、保健所・学校・SNSを通じた配信、学校で軽食販売をする業者へ向けた啓発などにも意欲を示す郭さん。各セクターの戦略を最大限活用し、足並みをそろえつつ、マルチセクトラルな栄養改善活動をさらに推進していく。

デモ栄養ガーデンの全容
調理研修に参加する医師。
彼がつくっているのはパラクパニール(Parak paneer)という
ホウレンソウをふんだんに使ったカレー
デモ栄養ガーデンのサインボード。
本物の野菜を撮影してつくられた。写真はエンドウ豆
デモ栄養ガーデンで収穫された野菜を囲む人たち。
教育、栄養、保健、農業分野の人たちが集まっていて、
まさにマルチセクトラルな一枚
プロテインリッチカリフラワーカレー。
レシピは晴天時に太陽光の下で撮影するように意識しているそう

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本記事は国際開発ジャーナル2024年8月号に掲載されています
(電子版はこちらから)

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