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「人材」と「技術」を重んじ半世紀 途上国の港湾開発に確かな足跡【(株)エコー 創業50周年特別インタビュー】

PMなど人材育成・確保に注力し次なる50年目指す

開発途上国の港湾開発分野などで大きな実績を残してきた(株)エコーが今年創設50周年を迎えた。近年は港湾などに加え、環境、さらに気候変動に伴い激甚化する災害の多発を受け、防災・災害対策分野でもその存在感を高めている。柴木秀之社長に半世紀にわたるエコーの歩み、次なる50年を目指す上での課題などを聞いた。
           (聞き手:本誌・和泉 隆一/撮影:桜木 奈央子)

代表取締役社長 柴木 秀之 氏

”二重の節目”

――設立から半世紀。まずは誕生の経緯からお聞かせください。
 もともとエコーは、日本テトラポッドのコンサルタント事業部として1974年にスタートした。社員もテトラポッドからの出向者で構成され、株も全額同社が保有していた。大きな転機の一つは1986年頃から本社機能と技術部門を東京に集約すると共に、プロパー社員の採用を本格化させていったことだ。今、振り返るとこの時期が大きな“起点”になっていると思う。
 その後、1999年にテトラの海外事業部門をエコーに事業移管。海外業務部門への本格的な取り組みを開始していった。
 したがって、エコー創設50周年に加え、海外事業部はちょうど25周年目に当たり、“二重の節目”を迎えることができた。

――株式、社員構成は、現在どういう状況ですか。
 海外事業部が始動した1999年から2000年にかけ、テトラからの出向者を全員転籍させプロパー化するとともに、「エコー社員持株会」を設立し、全額をエコーが吸収する取り組みを開始した。経営層だけでなく、社員一人一人が株を持つことにより、ある意味、社員の経営参画を促し、仕事に対するモチベーションの維持・向上につながっていると思う。
 また、同時期に3カ年をターゲットとした中期経営計画をスタートし、現在は第8次の中期計画に入っている。コンプライアンスの堅持を基本に、「人財」と「技術」をもって公共インフラの整備と社会発展に最大限貢献していくことを経営モットーに、それを具体的な活動に結び付けるため国連持続可能な開発目標(SDGs)にリンクさせている。「人財」と「技術」は私たちの最大の“売り物”だ。国内・海外の別を問わず、それらをSDGs達成に向けた取り組みに戦略的に生かしていきたい。

国内技術の海外転用

――国際協力分野では、一時「水産無償と言えばエコー」という印象を強く持っています。
 海外事業開始から2010年頃までは大洋州、アフリカ、カリブ海地域で水産無償の案件を数多く手掛けさせていただいた。当時は、国際捕鯨委員会(IWC)への捕鯨活動に関する働き掛けとも関連し、日本との友好関係を踏まえた途上国への支援は非常に重要性が高かった。こうした時代背景に加え、テトラ出身でプロジェクト・マネージャー(PM)を担える技術者が4人在籍しており、彼らが海外で案件形成を推進し、国際協力機構(JICA)と連携しながら政府開発援助(ODA)プロジェクトを立ち上げ、それを受注・実施につなげることができた。
 発足間もない海外事業部にとって、水産無償による経験は業務基盤を固め、また途上国の現場を知る上で非常に有効であった。

――2010年頃から水産無償は減少傾向を強めていきます。
 無償資金協力による漁港や港湾案件に加え、有償(円借款)案件の受注・獲得を目指した取り組みを強化していった。他社と共同企業体を組成する形で 2012年にはバヌアツ「ポートビラ港国際多目的埠頭開発計画」を受注。次いで2014年にモザンビークのナカラ港、さらに 2017年にはマダガスカル「トアマシナ港開発計画」を受注・契約することができた。
 特にマダガスカルのトアマシナ港については、自社資金を使いながら営業活動を積極的に行い、エコーの技術を先方にPRし、何とか事業にまとめ上げた。この事業はトアマシナ港のコンテナターミナルを拡張するもので、並行して防波堤の延伸・整備が計画され、防波堤の設置水深が30mから少し沖合に出ると40mと深く、設計の難度が高かった。私たちは国内で培った経験と技術を生かし、最新の波浪推算技術を用いた設計波の算定、防波堤の設計、その延伸による海浜変形の解析と影響評価などを行った。国内部門の技術者も多数配置し、国内・海外部門がまさに協働で業務を推進する初のケースになった。
 この事業を契機に人財を含め、国内の技術の海外転用を強く意識しており、技術力を前面に出し海外市場拡大に挑んでいく考えだ。

――エコーの技術体系を教えてください。
 事業部は環境系、防災系、構造系の3事業部体制となっており、各部横断的に高い解析スキルを生かしているのがエコーの特徴だ。
 一時、組織の縦割り化の弊害が出ていたため、国際事業部門を全社共通部門に据え、3事業部に加え、技術研究所や調査解析部などの横断部門との連携を強化し、国内・海外の垣根を越えて国際事業の展開を支援するという体系だ。

PMの育成が急務

――次なる50年に向けて取り組むべき課題は何ですか。
 PMをはじめ、人財の育成・確保は急務だ。国際事業部門でPMを担える技術者はいずれも高齢化が進み、彼らを継ぐPMの育成は十分に進んでいない。組織的にPMの育成が後手に回ってしまったという反省もある。人財の育成は10年、20年と中長期の取り組みが必要であり、特に海外業務は経験と場数を踏み、“勘どころ”をつかんでいくことが大切だ。この観点から、現在は(一財)国際臨海開発研究センター(OCDI)などに中堅社員を出向させ、海外案件のノウハウなどを実地に学び、経験を積ませている。こうした取り組みは今後も続け、この中からPMとして活躍できる人財を育成していきたい。
 一方、エコーには8人の外国籍の社員が在籍し、国内外で開発されたシミュレーションモデルなどの最新技術を実務に実装するなど活躍している。彼らがいずれ母国に戻ったら、エコーの国際ネットワークの形成・強化につながっていこう。
 また、タイでは2023年にタイ分室を設け、エコーで3年間働いたタイ人技術者が常駐。タイ国内のコンサルタントや大学関係者らと協力関係を構築し、技術協力に発展させる取り組みを続けている。今後の展開に大いに期待しているところだ。

――売上目標を教えてください。
 来年4月入社の新卒者は20人で社員数は200人を超える。この200人に対して、どの程度の売上を達成するかが当面の課題だ。エコーの大きな“持ち味”の一つは技術の内製化率が高いことで、業務の外注率は極めて低い。すなわち、他のコンサルタントに比べ、高い利益率を確保できている。それをベースとした適正な売上は35~36億円を目標に据え、うち3~4億円程度は海外でカバーしたいと考えている。
 コンサルタントの発展の鍵は、やはり「人財」にある。売上の一部を人財に投資し、彼らの成長を後押しする支援制度には引き続き、注力していく。来年入社する社員をはじめ、若手人財の活躍こそが次なる50年を切り開く“原動力”である。


(株)エコーの主要プロジェクトは、下記PDFからご覧いだだけます。


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本記事は国際開発ジャーナル2024年11月号に掲載されています
(電子版はこちらから)


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