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個人の情報発信はロングテールよりショートヘッドを意識する方がいい理由

 こんにちは、イデトモタカ(@idetomotaka)です。

元 WIRED 編集長のクリス・アンダーソンが提唱し、世界的にバズったキーワードが2つあります。「ロングテール」「フリー」です。どちらも、同名の著書の発売から十年以上経っていますが、未だ影響力を保っています。

今回は個人(フリーランス)の情報発信を「ロングテール」の概念に当てはめるとどうなるか、について考えていきたいと思います。

新時代を生き抜くためのシン・フリーランス論の「質」の話。

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「サバイバル・スター」の解説は、こちらをご覧ください。

■結論、個人はロングテールを狙うな

 長文になりそうなので、先に結論を述べておきます。

個人規模でビジネスを行う場合、特に情報発信ではロングテールよりもショートヘッドを意識すべきだ。理由は、評価を集めるコンテンツよりもクオリティが低いコンテンツが(多数)存在することで、全体の「評価の平均点」が引き下げられている可能性がある

そのため、発信した情報を定期的に評価し、他よりクオリティが低いと思われる(評価された)ものを「間引く」。そうすることで、全体の平均点の引き下げを防ぎ、印象をクリアにし向上できる可能性が高い。

実証実験をしたわけではないので、あくまでもぼくの仮説であり、そのため「可能性」という言葉を使用しています。以下の本文は上記仮説の補足です。このような結論を導出した背景が気になる方だけ、ご覧ください。

■ロングテールのおさらい

 ロングテールという新たなマーケットは、インターネットの商品スペースに限りがないことで可能になりました。その結果、さまざまなニッチ市場が生み出され、ビジネスとして成立するどころか、多くの利益(売上)を生みだしています。

ただし、ロングテール(ビジネス)の恩恵にあずかるためには条件があります。無制限の商品棚を持ち、その商品棚のコストが無料であることです。

……以上が、おおまかな「ロングテール」の要点です。主張は事実であり、そのとおりなのですが、当然のように一つの疑問が浮かび上がります。

「では、どんなものでも、とにかく『陳列』しておく方がいいの?」

■“評価”は考慮されていない

 ロングテール論を純粋に支持するなら、無限の陳列棚を持つ世界(インターネット)では、どんな需要があるかわからないので、とにかくなんでも陳列させておく、ということになります。

「売上」の点では、実際それが正しいかもしれません。けれど「評価」「印象」の点では、どうなのか。

そう考えるのは、人には「『足し算』すべきときに、『平均点』を求めてしまう」という認知の歪みがあるからです。これはノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが実証しました。

要約すれば、完璧な食器セット(お皿やティーカップ)Aと、同じセットにプラスして欠けたカップや、ヒビの入ったお皿を加えたセットBを、それぞれいくらなら買うかと値決めしてもらったところ、AよりもBの方が安く値付けされました。BはAを含んでいて、さらに商品点数が増えていたのに。

補足:AとBを同時に値付けしてもらうと、Bが若干高くなります。頭のなかで価値を「足し算」しているということです。けれど、AとBを別々の人に、単独で値付けしてもらうと、Bが安くなります。価値を「足し算」ではなく「平均」化しているからと考えられます。

つまり、「ガラクタ」が混ざることで、せっかくの全体のクオリティ(の印象)が、下がってしまうのです。

■情報発信は“商品”ではない、が…

 Amazon のような「ショッピングモール」は、商品点数が膨大であること自体が価値であり、膨大過ぎて一つひとつの商品の「平均点」への影響が限りなく少ないと想像できます。

けれど個人商店の場合、そもそも商品点数が膨大とは言えず、それこそマスとニッチを生みだすほどのボリュームがありません。そんななかで質の低いものがあれば、せっかくの「平均点」を下げてしまう恐れがあります。

ロングテールは商品やサービスを対象としており、それを情報発信に適応すること自体が、かなり強引なことだとは理解しています。けれど、あえて同じ土俵で思考した場合、個人(フリーランス)の情報発信は「ロングテール説」ではなく「平均点化説」を支持すべきです。

量を重視するよりも、いかに平均点を高めていけるかが問題。なぜなら、「発信」そのものが目的ではなく、それによる「ポジショニング」や「ブランディング」の成功こそ、真に達成したいことだからです。

■具体的な3つの方針

 以下が、「平均点化説」を踏まえた上での、考えうる具体的なアプローチです。

1)定期的にコンテンツを「間引く」
2)満足のいく情報だけを発信する
3)平均が意味を持たないほどの量を出す

1つめは、一度は世に出したものの、全体と比べてクオリティが低いものを「間引く」。「note」の場合、シンプルに「スキ」の数が指標になります。

「スキ」が少ないからといって、必ずしもクオリティが低いと断言できないわけですが、少なからず自分の読者の「ニーズに合っていない」ことは確かです。もしくは、自分自身「これは他と比べると質が低い」と思うものも、正直あるでしょう。そういったものを「間引き」ます。

2つめは「満足のいく情報だけを発信する」です。本当は、満足のいく情報だけを発信した上で「間引く」わけですが、現実には「毎日更新」など、発信することそのものや量が目的化し、結果、質が置き去りにされている場合が散見されます。

「毎日書く」ことを目標にすることで、情報に対するアンテナが立ち、情報発信の癖がつくなどの利点は認めます。けれど、それを「残す」かどうかは分けて考えるべき内容です。

補足:基本的にアーカイブが意味を持つ情報発信を対象としており、メルマガやツイッターといった、一過性のものは本論の対象外です。

最後に、「平均が意味を持たないほどの量を出す」ですが、これは個人規模では特殊な一群を除き、そもそも困難です。

■“タグ付け”成功のための印象操作

 詳しくは下記の記事で解説していますが、個人(フリーランス)で重要なのは、まずは自分自身への「タグ付け」です。それがポジショニングになり、ブランディングになります。

数によって「印象」を与え、質によってその「平均点」を高める。この両輪の成功を目指す必要があります。

そして、そのための情報発信の鍵が、(評価の)平均点を引き下げうるコンテンツを意識的に「間引く」こと。

せっかく「時間」と「頭」を使って発信した努力を、「なかったこと」にするのは心苦しいですが、価値の低いものは、意味がないどころか、他の価値を下げる可能性が高いと納得するしかありません。

ぼくもこの方針に従って、「note」を20記事更新したところで、10パーセントにあたつ下位2記事を「間引き」ました。読者は正直で、たしかにぼくのなかでも、他と比べるとクオリティがやや低い(雑だった)かもしれないと反省しました。

■再び、冒頭の結論

 最後に、冒頭の結論を再度書いておきます。

個人規模でビジネスを行う場合、特に情報発信ではロングテールよりもショートヘッドを意識すべきだ。理由は、評価を集めるコンテンツよりもクオリティが低いコンテンツが(多数)存在することで、全体の「評価の平均点」が引き下げられている可能性がある

そのため、発信した情報を定期的に評価し、他よりクオリティが低いと思われる(評価された)ものを「間引く」。そうすることで、全体の平均点の引き下げを防ぎ、印象をクリアにし向上できる可能性が高い。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。また書きます。
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■参考記事

■このnoteが本になりました

このnote「シン・フリーランス」の内容をベースにした、これからのフリーランスの生き抜き方を解説した本が出ました。ぜひご覧ください。


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