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#2 意外と大人な音楽?シューマン「子供の情景」 | 音楽おもしろ豆知識

連載「明日誰かに話したくなる音楽おもしろ豆知識」
音楽がより身近に感じられる、ちょっとした雑学やおもしろエピソードをお届けします。

シューマン「子供の情景/Kinderszenen」op.15
そのタイトルから子ども向けの曲集と思われることが多いですが、子供が弾くために書かれた作品ではなく、後に妻となる恋人のクララを想って書かれた、大人のための作品です。

「子どもの情景」を作曲した頃のロベルト・シューマン

猛反対された恋愛

「子供の情景」は、1838年、シューマンが27歳の時に作曲されました。
当時シューマンは、恩師の娘であり9歳年下の天才ピアニスト、クララと恋人関係でした。
シューマンにとってピアノの師匠でもあったクララの父親フリードリヒ・ヴィークは、シューマンの才能を認めてはいたものの、娘クララとの交際・結婚には猛反対。
二人で会うことを禁じ、交際を阻みます。

美しすぎる天才ピアニスト、クララ・シューマン(クララ・ヴィーク)

密かに交わした手紙と、恋心を込めた音楽

なかなか接触できずに居た二人ですが、密かに手紙をやり取りしていたようです。
1838年3月17日、シューマンがクララに宛てて送った手紙の中に、次のような文章が記されています。

War es wie ein Nachklang von deinen Worten einmal wo du mir schriebst ‚ich käme dir auch manchmal wie ein Kind vor‘ – Kurz, es war mir ordentlich wie im Flügelkleide und hab ich da an die 30 kleine putzige Dinger geschrieben, von denen ich ihrer etwa zwölf ausgelesen und ‚Kinderscenen‘ genannt habe.

君が僕に「時々子供のように見える」と書いてくれた言葉の余韻のようなものだったのだろうか――つまり、それはまるで翼の衣をまとっているかのような感覚で、約30曲の小さくてかわいらしい作品を書き、そのうち約12曲を選んで「子供の情景」と名付けた。

Karl Storck (Hg) Schumanns Briefe in Auswahl (P.140)

シューマンは、クララがシューマンに書き送った「あなたはときどき子供のように見える」という言葉から着想を得て「子供の情景」を作曲しました。
「子供の情景」は、会えない時間に恋人を想いながら書かれた作品でした。

愛娘クララ(売れっ子ピアニスト)とシューマン(内気で繊細な作曲家)の結婚に猛反対していた頃のフリードリヒ・ヴィーク

曲中に「クララーーーーー!!!!」と叫んでいる説?

「子供の情景」 Op.15 第7曲「トロイメライ」
日本語で「夢」という意味のタイトルがつけられた、シューマンの作品の中でも最も有名な作品の一つです。

Lulla Music 2:ねむれないモンスター
Tr.7 シューマン: トロイメライ (「子供の情景」 Op.15 第7曲) ー 井出 音 研究所 & 一色 このみ


「トロイメライ」のメロディを聴いていたら、曲中の「ド⤴︎ララーーー…」というフレーズが、どうも「C-ラ-ラー…クララ???」に聴こえはじめてしまいました。
調べてみたところ、「C L A R A」を意味する「C,A,A」を忍ばせていた、という説もあるようです。
楽曲のクライマックスで恋人の名前を叫ぶ…なかなかロマンチックです!

シューマン「子供の情景/Kinderszenen」より


音楽を通して育まれた愛

クララの父親ヴィークはシューマンとクララの恋に強く反対し、最終的に二人は、結婚を認めるようヴィークに対して訴訟を起こします。
「子供の情景」が書かれた2年後の1840年、裁判に勝利し、二人は結婚することができました。
(結婚までは泥沼でしたが、数年後にシューマン夫妻とヴィークは和解できたようです。)

会うことが叶わない期間も、シューマンはクララを想って音楽を書き続け、クララは父親に反対されながらもシューマンの楽曲をコンサートで演奏しました。
二人の愛は、音楽を通して固く繋がっていたのです。

シューマン「子供の情景/Kinderszenen」op.15 初版の表紙

松岡美弥子 Miyako Matsuoka
作曲家、ピアニスト

東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。同大学院音楽文化学専攻音楽音響創造領域修了。自在な表現法を武器に、作編曲家としてゲーム、アニメ、映画、舞台等の音楽やアーティストへの楽曲提供などを中心に幅広いジャンルで活動する。
ピアニスト・キーボーディストとして、様々なアーティストのライブサポートやレコーディングに参加している。

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