#1 ブラームス「子守唄 」に隠された"秘密のメロディ"
第一回目に取り上げる作品は、ブラームス「子守唄 /Wiegenlied」 op.49-4
シューベルト、モーツァルト(※1) 両氏の子守唄とともに「世界3大子守唄」にも数えられる有名な作品ですが、実はこの曲には、とある「秘密の仕掛け」があります。
※1:「モーツァルトの子守唄」と呼ばれている作品については、近年は「実はモーツァルトの作品ではなかった」とされています。
Lulla Music 4:ざわざわモンスター
Tr. 11:ブラームス: 子守歌 Op.49-4 ピアノver.(井出 音 研究所 & 西本夏生)
ブラームス「子守唄 /Wiegenlied」 op.49-4
世界一有名な子守唄ともいわれる、ブラームスの「子守唄」
美しく優しい洗練された旋律は、普段クラシック音楽を聴かない人でも一度は耳にしたことがあるかもしれません。
ところで、この曲の中には隠された"秘密のメロディ"が存在することをご存知でしょうか?
「子守唄」をプレゼントされた女性とは
「ブラームスの子守唄」は、ブラームスの友人女性、ベルタ・ファーバー Bertha Faberに、二人目の子どもが生まれたことを記念して作曲されました。
ベルタはブラームスが若い頃に指導していた合唱団の初期メンバーでした。
ブラームスは当時、合唱団を熱心に指導し、メンバーの中でも特にベルタと親しくしていました。ベルタとブラームスが若い頃にどのような関係であったかは明らかになっていません。
友人関係であったかもしれませんし、一説には恋愛関係であったか、ブラームスが片想いしていた、もしくはベルタの片想いであったとも言われています。
その後、ベルタは実業家の男性と結婚します。
ブラームスはベルタの夫とも仲良くなり、生涯にわたり夫妻と親しくしていたそうです。
「子守唄」に隠された"もうひとつのメロディ"
親しい友人ベルタのために書かれた「子守唄」には、驚きの仕掛けがありました。
実は、この「子守唄」の伴奏には、「S’Is Anderscht」というラブソングの旋律が隠されています。
「S’Is Anderscht」は、劇作家&作曲家のアレクサンダー・バウマンAlexander Baumannによる(※2)、レントラーというウィンナーワルツの前身のようなダンス音楽です。
ベルタはこの曲を好み、よく歌っていました。
(※2:バウマンの作品もしくはバウマンにより出版された民謡のどちらかとされているようです)
ブラームスの子守唄の楽譜(前半部分)を見てみましょう。
隠されている「S’Is Anderscht」の旋律をピンク色に塗ってみました。
旋律はほぼ正確に引用され、中間部の和声進行も原曲を踏襲しているそうです。
引用とも言えますし、ヒップホップ等におけるサンプリングのように、
「S’Is Anderscht」という音楽を元ネタとして、その上に新しい旋律を作曲した
と捉えても、わかりやすいかもしれません。
ベルタが子どもに子守唄を歌っている間、ベルタに向けて、彼女の好きなラブソングの旋律が奏でられる。
「ブラームスの子守唄」は、子どもだけでなくその母親への心遣いが込められた、愛情あふれる優しい音楽の贈り物だったのです。
Lulla Music 1:さみしんぼモンスター
Tr.2 「ブラームスの子守唄」オルゴール&エレクトリックピアノver.(井出 音 研究所 & 松岡 美弥子)
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