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素人の考古学―長野県森将軍塚・弘法山古墳と大室山古墳群巡り

 森将軍塚が所在する千曲川右岸には、「将軍塚」と呼ばれる3基の前方後円墳がある。4c前半から5c前半の築造で、これらは当該地における首長系譜を追うことが出来る点で重要である。

1.    森将軍塚古墳(国史跡)

森将軍塚古墳は、千曲川右岸の北アルプスと千曲川を望む有明山(490m)から伸びた狭い尾根の上に築かれており、地形に合わせて「く」の字に曲がっている。
墳長100m、前方部の幅30m、高さ5m、後円部は径50m、高さ10mの前方後円墳。二段築成。4c末の築造。
竪穴式石室は日本最大級。墳頂にはさまざまな形の埴輪が並べられていた。石室は盗掘をうけて副葬品の多くは失われており、三角縁神獣鏡や勾玉、鉄剣、鎌のみ。
科野国造の墓と考えられる。

(有明山(490m)から伸びた狭い尾根の上に築かれている)
(森将軍塚古墳)
(北アルプスと千曲川を望む)
(地形に合わせて「く」の字に曲がっている)

竪穴式石室は、長さ7.6m、幅2m、高さ2.3mの日本最大級。床の幅が広いのが特徴。

(竪穴式古墳)
(円筒埴輪)
(埴輪棺)

2.  弘法山古墳(国史跡)
松本平野を見下ろす場所にあって、中山古墳群の北尾根グループに含まれている。麓から頂上まで高さ約60mの丘陵突端にあり、県内唯一の前方後方墳。3c末の築造。
墳丘の規模は全長66m、後方部は幅47m・長さ41m・高さ7.15m、前方部は幅22m・長さ25m・高さ3.5m。

埴輪の樹立はなく、葺石も僅かにみられる程度。竪穴式石室は後方部中央にあって、主軸とほぼ直角になるように造られている。
石室は長さ5m・幅1.3m・高さは93cm。棺は底が平らな木棺と考えられる。
弥生時代の墳丘墓が古墳に変貌する発生期のもので、松本平に王権の成立を示すものと考えられる。

(弘法山古墳)
(後円部より前方部を望む)
(副葬品)

3.  大室古墳(国史跡)

 古墳群は長野県松城町にあり、地形的に北山・大室谷・霞城・北谷・金井山の5つの支部に分類される。
渡来人の墓制である石積塚で合掌形石室という特殊な埋葬施設であり、約400基からなる。
5c前半から8cに築造。出土品は土師器、須恵器、土馬。
大室地区周辺は「大室牧」があった場所とされ、古墳群から馬具や馬骨、馬形土製品など馬に関わる品が出土する。馬の生産は朝鮮半島から渡来人によって5cに日本に伝えられた。大室古墳はこの渡来人の墓であろう。

(234号墳)
(235号墳)
(238号墳)
(241号墳)
(168号墳)

以上
小兵衛


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