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読まずに本を選ぶ@読書しない読書会
オフライン読書会に参加する
私はオンライン読書会は開催していますが、とても小規模な会で、参加される方も地理的にも分散しているので、その会でオフライン読書会を開こうとは思いません。
オフライン読書会は2回参加したことがあります。その読書会のコミュニティごとの雰囲気がよくわかるのもオフラインの一つの楽しみだと思います。
2023/9/24 読書しない読書会
ジュンク堂池袋店はフロアごとに置く本の種類が決められています。くじを引いて、自分が普段立ち寄らなそうなフロアで1時間ほど本を選び、その後、その本を選んだ理由をシェアするという読書会です。
私がくじで引いたのは小説のフロア。わざわざ本屋で小説のフロアに立ち寄ることはないので、初めに情報量に圧倒されました。小説のフロアでは、1棚1棚に異なる作品が溢れていて、早々に、じっくり見て行ったのでは全く時間が足りないと気づきました。一旦フロアの奥まで、ざっと本棚を眺めつつ進んで、その帰り道にいろいろ本を物色していくことにしました。
本を探しながら、本を選んだ理由を考えなければいけません。しかも、本を読まずに(といっても、この点は人それぞれで、目次やあらすじを見る人もいれば、全く本を開かない人もいて、厳密な線引きはないですが)。
本を読まずに、本を選ぶ理由をじっくり考えることなどあるでしょうか。私たちはすぐに本を開いてその中に飛び込んでしまうのですから。私にとって、理由を考えることは、過去を思い出すことでした。過去を思い出しつつ、目の前にある本とのつながりを考える行為はとても新鮮で、全く新しい経験でした。
私は結局、タイトルや著者を拠り所として本を選び、理由を考えることにしました。まさに、「読んでいない本について堂々と語る方法」の如く、本を読まずに語ることを実現したかったのです。時間ギリギリになって選んだのがこの2冊です。それぞれ選んだ理由を思い出しつつ記録しておきます。
記憶への興味 "忘れられた巨人 カズオ・イシグロ"
今年5月に、言語交換のマッチングアプリで、「私の好きな作家はカズオ・イシグロです。」とだけ書かれたプロフィールを見かけました。私はこの一文を持って自分のプロフィールとされるカズオ・イシグロに興味を持ちました。
「忘れられた巨人」というタイトルも素晴らしいタイトルに思えました。私は私自身が、記憶や忘れること、ひらめきいうことに興味があることに、気づいています。
私たちは記憶に絶対の自信を持って生活しています。一方で、私たち自身が記憶を無自覚に、都合よく改ざんしていることも事実として知っています(自分は例外ですと注釈をつけて)。生きるにつれて体の機能や記憶を少しずつ失っていくのですから、忘れることは命が尽きる前に必ず誰もが通る道に思えるのです。
さらに、私たちが日々暮らす中で、実に細かい単位で情報を読み込み、それを削除する(忘れる)ということを繰り返しています。もし忘れることができなかったら、私たちは自分の持つ力を十分に発揮することはできないでしょう。
私たちはコンピュータのように完全なマルチタスクは不可能です。何かを始めるときに、一旦できる限りの全てを忘れることが必要で、そのためには、忘れた後でも思い出せることを担保しておく必要があります。忘れることから全ての行為は始まっているとも言えます。
片っ端から本を買う男 "はじめての人類学 奥野克己"
小説の棚を物色していくうちに新書のコーナーに迷い込みました。そのフロアはエスカレータの付近が小説のゾーンとなっており、奥が新書のゾーンだったのです。私は感覚的に新書こそエスカレータの付近におくべきなのではないかと感じつつ、新刊として置かれていたこの一冊が目に止まりました。
文化人類学はもともと私の推しの学問です。なので、この本を選択するのは今日のテーマから外れます。新しい本との偶然の出会いを期待していたからです。
私が本を手に取って、この本は今度買おうと考えていると、私の隣にいる男性の存在に気づきました。彼は棚の新刊を上から順番に猛然としたスピードで買い物カゴに入れ始めたからです。カゴの中を見ると、本が綺麗に整頓されており、それは最大限に本を入れるためだと思われました。
彼が、棚の本を上から下まで選別し終えた様子で動きが止まったので、咄嗟に本を手に取ったまま、後ろに下がりました。彼に轢かれるとわかっていて、手に取った本を戻すことが躊躇われたのだと思います。
彼はそれまでと同じように先ほど私が物色していた棚の本も大して内容を見ることもなくカゴに詰めて、また次の棚へ移動していきました。
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今でも、彼が何者だったのか気になります。彼に話しかけてしまえばよかったのです。しかし、彼に話しかけることや、その行為の理由を聞くこと自体が、本を読まずに本を選ぼうとしている自分と対極にあるような気がして、咎められたのだと思います。
私は結局この本を選ぶことにしました。理由は本の内容を見ずに大量に本を購入する彼に圧倒されたからです。
読書しない読書会
Peatixで目に止まって参加した読書会でした。主催の方の雰囲気が柔らかくて、一緒に参加された皆さんの選んだ本もさまざまで、一味違った読書会が楽しめました。また参加したいと思います。