見出し画像

【社会科】一票の格差を理解する”1票を2票にするにはどうすればいい?”

どうも。いかたこです。

中学校で社会科の教員をしています。

noteでは、授業がより楽しくなるアイデア(授業のタネ)を発信しています。

今回は、一票の格差についてです。

国政選挙のたびに話題になる一票の格差ですが、大人でも少し難しく感じる問題です。

もちろん、中学生にとってはもっとイメージしづらい問題です。

一票の格差という言葉を聞いたことはあっても、「なぜ生じるのか?」「なぜ問題なのか?」と問われると、難しいと感じる生徒も多いようです。

しかし、一票の格差は、日本の選挙制度を理解するためにも、欠かせない知識であると思います。

今回の授業のタネは、「1票を2票にするには?」というちょっと変わった問いから始まります。
ですが、だからこそ生徒の興味を惹くことができる内容となっています。

参政権や選挙制度についての授業の導入やまとめでお使いいただければと思います。

以下では、授業のタネの詳しい内容について紹介します。
よろしければ、最後までご覧ください。


一票の格差とは?

小選挙区制の選挙などで、選挙区により議員1人あたりの有権者数が異なるため、有権者のもつ1票の価値に地域差が生じること。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目電子辞書版

む、むずかしい・・・

画像にすると、こんな感じです。(画像1)

画像1

オレンジ色:議員(当選者)  緑色:有権者

X議員は、選挙区①の有権者10人の投票で選ばれました。
Y議員は、選挙区②の有権者5人の投票で選ばれました。

つまり、「選挙区により議員1人あたりの有権者数が異なる」ことになります。

1人1票であることには変わりありません。
ですが、有権者の少ない選挙区の方が、1票の影響力が大きくなります。

選挙区①よりも、選挙区②の方が、1票が重くなってしまうのです。

これが、一票の格差です。

選挙区②の1票は、選挙区①の1票の2倍になります。


問い

Aさんは、○○県に住んでいます。年齢は18歳です。Aさんは、選挙の際の自分の投票券が1票から2票に増えれば、もっと自分の意見を政治に届けられるのにと考えていました。約6か月後に参議院選挙が行われる予定です。どうすれば、Aさんの1票を2票にすることができるでしょうか?

変わった問いですね・・・。

ですが、少し考えてみようかなと思える問いだと思います。

答えは、「より有権者の少ない選挙区に引っ越す」です。

もちろん、投票券が2枚に増えるわけではありませんが、2倍の選挙区に引っ越せば、2票分の価値になります。


生徒の反応

生徒たちにも興味を持ってもらえたようで、Aさんの願いを叶えるために、いろいろな方法を考えてくれました。

・変装して2回投票する
・投票用紙を破って2枚にする
・友達の投票用紙を使う
・1票を2票にする法律をつくる
・人口(有権者数)が少ない地域へ引っ越す

一票の格差に気づいた生徒もいました。
ですが、一票の格差がどのようにして生じるかについては、やはり難しかったようで、周りの生徒と相談しながら考えてくれました。

また、これは意図していなかったことですが、「投票に本人確認の書類は持って行くのか?」「投票の様子を監視する人はいるのか?」など、多くの生徒が投票のしくみに興味を持ってくれました。
授業では、投票のしくみについて扱うことが少ないため、興味を持ってもらえてよかったです。


補足

○○県は、実際に生徒たちが住んでいる都道府県がいいのかなと思います。
地域や県ごとに、1票を何票にするか調整が必要になります。

参議院選挙にしたのは、多くの選挙区が都道府県単位であるため、わかりやすいかなと思ったからです。

約6か月後としたのは、引っ越し先の選挙人名簿に登録されるには、3か月以上住んでいる必要があるためです。
授業のタネでは、切りよく6か月後(半年後)としました。


まとめ

以上が、一票の格差を題材にした授業のタネです。

この問いを理解するためには、

・国政選挙のしくみ(小選挙区制など)
・選挙の基本原則(平等選挙・普通選挙)
・法の下の平等(日本国憲法第14条)

など様々な知識が必要になります。

この問いから始めて、参政権や選挙制度の学習を進めても良し。

参政権や選挙制度の学習をしてから、この問いに取り組むも良し。

だと思います。

また、一票の格差に関する訴訟などを一緒に取り上げても、より理解が深まると思います。

授業をより楽しくするためのアイデアとして、取り入れていただければ幸いです。

今後も授業のタネを発信していきます。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?