[ブロードウェイ感想] オペラ座の怪人
概要
ガストン・ルルーの20世紀初頭のゴシック小説をベースにしたミュージカルの一つで最も有名なアンドリュー・ロイド・ウェーバー版。日本でも劇団四季が公演しているもの。パリ・オペラ座の怪奇現象、謎の声「音楽の天使」に魅了されていく乙女、幼馴染との恋と怪人との対決、といったドラマティックなストーリーと音楽、舞台装置も迫力満点のロングラン作品。2023年5月?でついに幕を閉じてしまいました。ニューヨークに訪れるまでの一番好きなミュージカル作品でした。これまで映像(2011年の25周年記念ロンドン公演)、映画(2004年の作品、金曜ロードショーにて)、劇団四季(2010年)を観ています。映画版が初見で、かつ後日談も美しくてかなり好きです。お勧めです。
この度の感想
作品自体は好きなんですが、本公演はクリスティーヌが非常にメンタルが不安定な妄想癖のありそうな女の子、というキャラクター付けでかつカルロッタ役の方が個人的に声質が好みというところ、また、そんなクリスティーヌに負けず劣らずメンタルがジェットコースターな怪人、というのがもはや現代劇を見ているような感じで、、、新鮮でした。この激しい2人が仮にでも交際しようものなら大変な共依存関係になりそう。劇中、クリスティーヌがパニックを起こさないか心配になりつつ、今後彼女の依存先になるであろうラウルも心配になる。ただ、怪人(Ben Crawford)の歌は凄い迫力で、気性の激しさから「天使」と称される温かく美しい声色まで一曲の間で瞬時に変わるような表現をされていて、これまで観た怪人の中で一番怪人らしいと感じたものでした。
マダム・ギリー(Maree Johnson)が歌もお芝居も非常に素敵で目が離せませんでした。彼女が出てくると空気が変わった(そして現代劇モードからオペラ座モードに戻った気がした)。これはどなたかのエッセイで読んだことがあるが、一番鍵となる人物としていつも最も実力派が演じられるとか。そして意外性があり歌が特に好きだったのは、カルロッタ(Raquel Suareg Groen)。これまでカルロッタがわざと極端な抑揚で強め・鋭めに歌ってうるさがられそうな声にしているのに対し、クリスティーヌの方が温かい声、というイメージがあったものの、今公演ではカルロッタの声の方がまろやかで高音にも余裕がありそう(クリスティーヌの声の調子がよくなさそうだったのもある)でした。そのせいなのか、やたら巻き舌+イタリア訛り、というキャラ付けがなされていたように思う。