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エンドーラ。街の名だ。

灯りの消えたカフェと、薬屋はいつも日蔭にある。“エンド”ーラ。誰も降りない終着駅。
いつも眠ってて、これからもそう。音楽なしのダンスのような街だ。
僕はランソンマーケットで働いている。だが皆は国道沿いのスーパーへ出かけていく。
10歳までも“もたない”と言われた弟はその年を越えたが、医者は、先はもうないと言っている。
知るもんか。

接褐色の屋根の下で、アーニーがひどく泣いている。僕は歩いていたそのままの足どりで、横に座った。顔が涙でぐしょぐしょだ。
「殺しちゃったんだ。殺しちゃったよ、ギルバート。」
バッタをポストに挟んで遊んでいたらしい。
「分かってるよ。分かってる。」
パパが残したこの家で、僕たちは暮らしている。
僕には姉と妹がいて、姉のエイミーは僕たちの母親代わりだ。コンロを3つ使って朝食を作る。目玉焼きはひっくり返してちゃんと火を通す。小学校の食堂で働いていたが、去年家事で焼けてしまった。
妹のエレンは15歳。歯の矯正器具を外したばかりで、まだ歯の感触に慣れていない。トースターを鏡替わりにして“ウーアー”と口の動きを繰り返す。トースターが焼けても知らん顔だ。本当は兄のラリーもいるが、家を出た。今や冷蔵庫のよく見えるところに写真が貼ってあるだけだ。
そしてラリーの隣の写真が、ママ。この地方一番の美人だった。パパが17年前にあの世へ行ってから過食症になった。もうこの7年間は一歩も外に出ていない。
エイミーがコンロ3つ分の朝食をママに渡すとすぐに、口の中に放り込む。

僕はギルバート。ギルバートグレイプ。

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