婚約破棄よりも、もっと前の話
バラモスの討伐から数か月。
あの時はまだ馴染まなかったこの街も、いまとなっては俺の庭のような気さえしている。
更に深まった冬に枯らされてしまった街路樹を横目に、この日も俺は夜道を闊歩していた。
周囲を賑やかな下町に囲まれたこの街は、まるで台風の目のように静かだ。
特に自宅の面する、最寄り駅を境にして西側は、再開発で築浅の物件が並び、若いファミリー層が多い。
駅前のローソンが0時に閉まり、飲食店は容易く数え切れるほどの数しかない。
もっとも独身男性の俺にとっては、この治安が良