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スタートアップと協働し、ベトナムの教育市場へ挑戦<前編>
アイ・シー・ネットは、ODAコンサルティングの専門性や経験を活かして6つの事業を展開しています。その中のひとつである学研グローバル事業では、学研がもつ教育コンテンツ・サービスを活用した海外事業を展開しています。今回の記事でとりあげるのは、急成長を遂げるベトナムでの事業です。アイ・シー・ネットがどのような背景でベトナム市場に進出し、何を目指しているのか、ベトナム事業の担当、末田に話を聞きました。
末田 春江
2008年アイ・シー・ネット入社。政府開発援助(ODA)のプロジェクトに従事。アフリカ、中東、南アジアで、産業振興、地方行政、評価業務に携わる。2020年より(株)学研ホールディングス グローバル戦略室と兼務開始。東南アジア(ベトナム)の資本提携先とのシナジー事業を推進する。
なぜベトナムなのか
アイ・シー・ネットは2019年9月に学研グループ入りし、学研グループ全体のグローバル展開を進めることになりました。当社も策定に関わったグループ中期経営戦略では、グローバル戦略として東南アジア市場に注目しました。その中でもベトナムは、GDP成長率の高さや教育熱の高さが際立ちます。特にSTEAM教育(科学・技術・工学・アート・数学)が黎明期にあり、学研の強みを活かせる市場と判断。アイ・シー・ネットは、学研グループの戦略の一環を担う形でベトナムでの新事業に乗り出しました。
ベトナムでは、小学校から高校までの学校教育はほとんどが公立のため、外資である我々が参入するには障壁が高いのですが、幼児教育は2割が私立であるため、学研グループにとってビジネスチャンスがあると判断しました。ベトナムでは家計の約25~30%が教育費に充てられると言われています。特に都市部では、高品質な教育への需要が高まっており、幼児教育市場も急速に拡大しています。このような環境の中で、保護者と幼稚園・塾をつなぐ口コミサイトプラットフォームを運営している現地のスタートアップ企業、KiddiHub(キディハブ)社と出会い、資本参加することとなりました。KiddiHubはベトナムの幼稚園や保護者など大きな顧客基盤をもっており、学研グループがもつ教育コンテンツを販売するパートナーとして最適でした。
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現地スタートアップとの協働がカギ
ベトナムには個人経営の幼稚園が沢山あり、園児の獲得競争をしています。日本と異なり、サービスに不満があれば簡単に転園してしまうので、幼稚園側にはサービスを差別化し、それを保護者に伝えたいというニーズがあります。そのニーズにうまくこたえていたのがKiddiHubが運営する口コミサイトプラットフォームです。このプラットフォームには、2万1,000(2025年1月時点)の園・教育施設が登録しており、各園の情報を整理、評価することで、保護者が幼稚園を選択する際に役立つ情報を提供。ベトナム国内では幼稚園情報最大のプラットフォームとして会員数を年々のばしています。
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このKiddiHubの既存ビジネスにプラスしたのが学研のSTEAM教育です。科学やプログラミングといったコンテンツをローカライズして幼稚園に提供。子どもたちへの教育の質を向上させるだけでなく、他の園との差別化要素として園児を獲得する売りになると、幼稚園経営者に好評です。
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しかし、スタートアップとの連携はそう簡単ではありません。苦労も多いのですが、この続きは後編で。