おさかなコンサルタントの仕事とは
開発コンサルタントには農業、保健医療、ジェンダー、社会保障、観光開発など、いろいろな分野の仕事があります。今回は水産分野にスポットをあて、どんな仕事内容なのかを、当社コンサルタントの西山に聞いてみました。
西山の入社までの経緯については過去の記事を参照ください。
水産分野でなぜ援助が必要か
世界的な人口増が進むなか、動物性タンパク質の供給源として重要な魚介類。子どもたちが十分な栄養をとれない開発途上国にとってはその重要性がさらに増します。また、貧困対策の点からも水産業は重要です。農業の場合、作物を育てて収穫し、現金を得るまでには時間がかかりますし、土地も技術も必要となります。それに比べて漁業は少ないコストで、技術的にも比較的簡単に始めることができ、その日のうちに現金を得ることができるため、土地や安定した収入源を持たない人々にとって生活のための重要な手段となっています。だからこそ開発途上国では貧しい人たちが漁業をなりわいしているケースが多く、何も管理をしないと魚介類を獲りすぎてしまう問題があります。漁業の対象となる魚や貝、海藻など、すぐに獲って食料になるものから、稚魚や稚貝など将来的な食料になるものが水産資源と言われるもので、乱獲や地球温暖化などが原因で減少してしまうことがあります。そのほかにも環境に負荷をかけてしまう漁具を使っていたり、獲った魚の加工技術がなかったりと、水産分野では多くの課題があります。
ところで、魚介類の日本の自給率は約6割ですが、アフリカから輸入している魚も多いことをご存じでしょうか。例えばタコの多くはモーリタニアやモロッコから輸入されていますし、マグロやイカなどもアフリカから多く輸入されています。こうした国で持続可能な水産業が成り立つように支援することは、私たち日本人の食卓にとっても重要です。
水産分野のプロジェクト
水産分野の支援とひと言で言ってもその内容はさまざまで、資源管理や加工、流通、養殖、環境保全など多岐にわたるプロジェクトを日本は実施しています。
今回は私が従事した、南太平洋にある島国、バヌアツのJICAプロジェクトを紹介します。バヌアツでは、食料や収入の多くを沿岸の水産資源に依存していますが、気候変動の影響や、環境破壊、魚介類の乱獲などにより、資源が減少していました。そこで、資源管理をするため、バヌアツの水産局スタッフをトレーニングしたり、獲りすぎない漁法を伝えたり、貝を養殖したり、村人たちが自ら管理する仕組みを作りました。
今回のプロジェクトチームには以下のような専門性をもつ人たちが集まりました。
総括/沿岸資源管理/資源調査・環境モニタリング
副総括/生計向上活動
海産貝類増養殖/資源管理・環境モニタリング
資源調査・環境モニタリング
漁獲方法多様化
参加型開発①/社会経済調査①
参加型開発②/社会経済調査②
日本の水産業は漁師たちが自分たちでルールを作って管理してきた歴史があります。こうした日本の経験をバヌアツに伝えています。
おさかなコンサルタントになるには
水産分野を専門とするおさかなコンサルタントになるためには、JICA海外協力隊に参加したり、水産関係の大学で学んだり、大学院で学位をとることが以前の王道でしたが、最近は民間企業、それも水産とは全く関係のない企業で働いていた人たちが転職してくることも増えてきました。学位についても、あるに越したことはないですが、必ずしも必須というわけではありません。専門性については、魚を捕る、加工する、というステップでは水産の専門知識が必要ですが、魚を運ぶ、売る、というステップでは、水産以外の分野で流通やマーケティングに携わっていた人たちが活躍しています。
性格としてどんな人がおさかなコンサルタントに向いているかというと、海が好きで柔軟性がある人だと思います。水産分野は自然が相手になるので、予定どおりにはいかないことが多いです。海が荒れたら海に出られないですし、海に出られたとしても魚が獲れるともかぎりません。しっかり計画を立てる農業を専門にする人たちとはその点が大きく違って、計画どおりにならないことを楽しめる人が向いていると思います。
現地の人たちと一緒に悩みながら、解決できたときは共に喜ぶ、とてもやりがいのある仕事です。そして、出張中はおいしい海産物が食べられるのも実は大きな魅力です。こんな仕事に関心のある方、ぜひ一度当社にご連絡ください。
オンラインイベント情報
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