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モーニング134日目【失踪おじさんとパトカー話】

ラーメン屋の常連で昼バイトの変なおじさんが僕が山に出かけている内に失踪騒ぎを起こし、絆の強いラーメン屋の有志が数名、警察と共に家宅捜索に向かって踏み込んだ話を1時間近く拝聴。

おじさん(赤の他人)とは元々
生活保護を家族に代わって
申請するぐらいの距離が近かったが

どうしようもないクズだと再確認して
絶縁していたので

側で聞いている分には漫画のようで楽しめた。

彼は私の中でようやく漫画になったのだ。

もう数え切れないほど
失踪したおじさんであるが。

私も失踪したことがあるので
あまり笑えないし
何かを述べられる程偉くもない。

そこまでに至る辛さ、寂しさも重々に知って経験もしている。

が、どうせ失踪するなら
もう少しちゃんと失踪してほしい。

どうやら家にTVがつけっぱなしで
ライターの音の様なモノが聞こえて

居留守のようにも
思わせる状態。

もしや…
死んでるのではないか??

人の気配がするのに
静まり返った部屋

疾走した生活保護者の
遺体確認の為に

救急車に消防車
パトカー2台
事情聴取のおばさんまで付いて

緊急オールスターズ大集合

深夜にてんやわんやの我が街モカ山


最後はガラスまで割って侵入したが
もぬけの空。

予約していたアニメが自動で流れていた。

警察&消防騒ぎでヘトヘトの友人たち。

その数日後、突然メールをよこし
ラーメン屋に舞い戻ってきて

死のうと思いましたと謝って来店

『なんで死ななかったの?』

『死にたいならちゃんと死ねよ』

まあそうなる。


私も何度も生存確認しに彼の扉の前に立ったことがあるので


同情する。
死んでるかもしれない友人の部屋を覗くのは辛い。

おじさんは周りが優しいので何だかんだ許されている。

まあ許す許さないの問題でもない。

ただのアル中のオタクで
人当たりだけは柔しく、
お手伝いを頼めば断らない元水道屋のおじさんが、仕事を無断でサボりクビにされ、仕事も探さず、人から金を借り返さず、家賃を滞納し、ライフラインを全て止められても、携帯ゲームを辞めずに、飄々と小うるさい嘘とウンチクと気持ちの悪い自慢話やアニメ話をする。

そんな人に期待をするから
いけない。

そんなことは誰もがカウンターで
確認しあってるが

おじさんを放っておけないのだ。

そうそう
期待するからいけないんだよねって。

みんながおじさんを
柔らかく包もうとしている。


ご近所に甘え
友人に甘え
大家に甘え
ラーメン屋に甘える

そのおじさんのサイクルの一端にいるのが辛くて私は絶縁を決めた。

笑えないぐらい距離を縮め過ぎた自分が悪い。

生活保護など
受けさせなければ良かったと
心底後悔している。

おじさんは益々働く気を失い
のうのうとゲームをして
酒を飲んでタバコを吹かし
お金も返してない様子。

まだ42歳なんだから
もっとちゃんと
死と向き合わせるべきだった。

人が大丈夫じゃない危険なところで
アクセル踏むバカには

それ相応のリスクと
痛い目が必要なのだ。

重度の精神疾患があるわけでもない
発達障害があるわけでもない。

ホームレスにもなれない嘘つきの

『死のうと思いました』


はもう効かないのだ。

漫画として聞いていたいので、今後も彼と一才関わらるつもりはない。

彼が

のたれ死のうが
首を吊ろうが

笑える話として
エッセイに残そうと思っている。


それだけの覚悟を決めさせる
面白人物であることだけは確かだ。

そういう人は少なからず
世の中にいて


私は彼に近いズレた人生を歩んでいて

たった数ミリ間違えれば

彼と同じ境遇にいる。

だからたった数ミリでも変わって欲しいと願ってしまう。

変われる筈だと思ってしまう。

こころのどっかで笑えないけど

笑うのだ。

笑うしかない。
仕方ないなとも思いながら

笑うのである。

ダメな大人だけど
面白いおじさんなんだから。

そういう人もいるのだ。


おじさんの疾走話を全力でしゃべる常連ウォーリーは鬼気迫り生き生きして

落とし物以外で警察と消防にお世話になるとは思ってもみなかった。

と楽しそうに語っていた。

そうやってラーメン屋にまた受け継がれるエピソードが増えていく。

長野の特産が詰まった
今朝の自慢のモーニングの味も


全く覚えてない

とのこと

明日もおじさんに邪魔されない様に

日々を笑おう。

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いちょうよもぎ
いつか間借りではない正式な自分のお店を持ちたい。 これまでに無い滋養と楽しさに満ちたモーニングで 他人様の朝を彩れる様になるまで、その全過程をnoteに残します。 面白かったらサポートして下さい。 貴方も世界でも稀なモーニングの当事者となって見届けて下さい。

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