140字小説コンテスト「秋の星々」応募作品
「星々」様が2023年に開催されていた140字小説コンテスト「秋の星々」(題「深」)に参加した際の3作品です。
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1
彼は吸血鬼だ。深紅で揃えたスーツ姿がトレードマーク。なぜその色か尋ねれば「僕は囮さ」と返ってきた。
「吸血鬼はこの色に目がない。僕がこれを纏っておけば君が襲われる心配はなくなる。……フフ、安心をし。吸血鬼の血はまずいんだ。それこそ死ぬほどね」
彼は赤い舌を悪戯っ子のように出した。
2
「地上に連れてこられても、深海魚は深海魚と呼ばれるんだね」
水族館の展示を見ながら彼女が言った。「そうだね」と頷くと彼女は頬を膨らませる。
「じゃあ私も天使と呼ばれるべきじゃない?」
天空から落ちてきた彼女は羽を失った。今はもうただの人間としか呼ばれない。それが不満なようだった。
3
彼女はタイムカプセルを地の奥深くまで掘って埋めてしまったそうだ。どれくらい掘ったか尋ねたら「地球の核にぶつかったから、そこでやめたわ」と返ってきた。しかし、それは彼女の冗談だったのかもしれない。だって、もうそろそろ日本の反対側まで掘り終わる。それでも見つからないのだから。
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2つ目が特にお気に入りでした。
どれも予選通過ならず。精進します。
前回参加した作品は以下の記事で読めます。