夢の中まで忘れもの(掌編小説)
気持ちよく寝ていたところに体を揺さぶられ、うっそりとまぶたを開く。
「眠れない」
彼女は悪夢でも見たように苦しそうな表情で俺が目覚めるのを待っていた。
「羊でもかぞえなよ」
「もうとっくにしたよ」
「そう……羊はどう? 元気?」
「めちゃくちゃ飛び跳ねてる。牧場も満員になっちゃった」
「じゃあしょうがないなぁ」
彼女の限界をさとり、仕方なく上半身を起こす。彼女の頭を胸元に引き寄せて、後ろに回した腕で彼女の背中をさすった。
「ねむれない……ねむれないの」
「うん」
こも