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墓地より

墓地にたどりつけば、高層ビルが取り巻いている。
高層ビル街区のど真ん中に、穏やかな場所をしめている。

日中は蝉の声、夜は虫の音、
昼夜を問わず、
ただようのは自然の空気、優しい気配だ。

苔の黄緑が覆う墓石の列が自然をつむぐ。
与えられた花の紫と青、線香の深緑には無音の火が宿っている。

お供え物を拝借して乾杯する。上向きで飲む。上空の天色の中央、輝く白金から熱力が降りそそぐ。高層ビルたちが立ち並ぶその高さ、立ちどころにくらくらする。

いまいちど、墓石がとり囲む謎めく道を歩いて廻る。ざらついた石、磨かれた石、それらが壁となる道は、パックマンの迷宮と似ているが、追いかけてくるお化けはいない。

お化けはいない? 
みろ、
ウィルオウィスプがすべての墓石のまわりで輪舞している。
群青のウィルオウィスプ、
空気をさらに浄化する。

それじゃパックマンと大して変わらないじゃないかと笑い種にしてみせても、まざまざとそれを眺めている自分はいつわれない。

高層ビル街区のど真ん中、空気と気配を大自然のもとへと浄化する幻獣たち、墓地の上空の、説話のような佇まいで直立する巨人たちまでが、いま、しゃがみ込んでくる。


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