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「本が、読んだ人の小さなきっかけになりますように…」いちるの書店へようこそ!

ブックマンション型本屋さん「LOCAL BOOK STORE kita.」内にある「いちるの書店」店主についてのお話です。どうして1棚本屋さんを始めようと思ったのか…きっかけは店主が歩んできた人生の中にありました。

いちるの書店について

はじめまして。
横浜 馬車道にある本屋さん「LOCAL BOOK STORE kita.」の1棚店主です。

本屋の1棚店主…??
あまりなじみがない方のために説明しますと「LOCAL BOOK STORE kita.」はブックマンション型の本屋さんで、1棚につき1人の店主さんが書店として運営している形式の本屋です。

現在、kita.には60人近い店主さんがおりまして、それぞれが思い思いに本を置いているので、個性的でジャンルも様々、バラエティに富んでおり、本好きなら1日いても楽しめる空間だと思います。

「LOCAL BOOK STORE kita.」の詳しい内容につきましては、「いちるの書店(LOCAL BOOK STORE kita.)のトリセツ」が別記事でありますので、そちらをご覧ください。

店主について

さて。
私がなぜ本屋さんをやろうかと思ったか。
それは私が今までいろんな角度から本に携わってきたことがきっかけでした。

幼少期から本が好きで、小さい頃は絵本、小学生の時はエルマーシリーズやわかったさんシリーズのようなシリーズ本を主に読み、学校で年間100冊以上読んだ生徒に与えらえる「多読賞」を2年連続受賞するほど、手あたり次第本を読みまくる子供でした(笑)

中学生~大学生までは漫画、大人になってからは実用書やムックも読むようになり、ジャンル幅広く本を読むようになりました。

ずっと本を読み続けてきたこともあり、高校生くらいからは自然と本に携わる仕事がしたいと思うようになっていましたが、希望の大学(図書館情報大学)に入れず…。

そんな時、大学時代にたまたま立ち寄った図書館でアルバイト募集の張り紙を見つけ、「これはまたとないチャンス!!」と思い、速攻アルバイトを申込みました。

結果採用され、5年くらい図書館でアルバイトをすることに。一般書やヤングコーナー、CDビデオ担当として、配架業務(図書館資料を書架に順に配置すること)のほかに、特集棚を組んだりもしました。

そしていざ就職の時…漫画を長く読んできて、作品から元気をもらったことがたくさんあり、自分では作れない世界観を作り上げる作家さんの力になりたいと思うようになり、漫画の編集者を目指すことに。

が、全社落ち…。

就職を諦めて、とりあえず本屋さんでバイトをしようかなと思った時、友人から出版社の編集部での事務(庶務)のお仕事紹介の話が舞い込んできました!

作家さんを支えている編集者さんを支える仕事…いうなれば(直接ではないけれど)作家さんを支える一端になれる!と思い、青年誌の編集部で働く(のちに文芸局も経験)ことに。出版業界ではトータル3年くらい働きました。

そして出版社での仕事が契約期間満了に近づいてきたとき…。このまま出版業界や本に携わる仕事がしたいと思う反面、紙媒体ビジネスが先の未来が明るいものが感じられない&電子書籍の行く先も不透明(当時)と思い、泣く泣く本の業界から離れることを決めました。

と、ここにあげた店主の本履歴は概要になります。

どういう本が好きだったのか、本に対しての行動力(⁉)が知りたい方は、「店主の本履歴」を別記事であげますので、そちらをご覧ください。(かなり長い記事になると思います。。今まで読んだいろんな本(特に漫画)を細かくとりあげていますので、本マニアはぜひ見てほしいですw)

本を読む人、かす人、作る人の経験を経て

今まで本に対してのいろんな立場を経験してみて、自分が感じたことは…

◆本を読む(見る)
「知らなかったことを詳しく知ることができて、楽しい!」と知的好奇心が満たされるのはもちろんのこと、漫画を読むようになってからは、「知らない世界が追体験できる」「キャラクターから元気がもらえる」「キャラクターに同意!」など、前向きな気持ちももらうことが多かったです。

特に仕事で体調を崩してしまって、何もする気が起きなかった時期、家にある漫画を読んでみたら、少し元気になったことを覚えています。もう何回も読んでいる漫画で話の展開も分かっているのに…不思議な体験でした。

また本の表紙が色とりどりで、作品のカラーや特徴を限られたスペースで表現されているということに一種の芸術性を感じます。

見ていて癒されますし、限られたスペースで作風を表現することはなかなか難しく、まさに職人技!といった感じをうけます。

表紙に使用されている紙も何百種類以上とある中から、作風(と予算)に見合うものが選ばれて、自分の好みに合致していると、テンションが上がってつい購入してしまいますw
(いっそ美術館で表紙の展覧会とかしてほしい…笑)

いずれにしても、本を読む(見る)ことは「満たされる」という、前向きな気持ちにしてくれるものだと強く感じていています。

◆本をかす(かりる)
図書館は書店以上に本がたくさんあります。また種類も豊富で、一般書以外にも専門書も多数置いてあるので、幅広いジャンルを取り扱っています。

勤務当時の話になりますが、月刊誌だけでも一般書コーナーの月刊誌だけで20冊くらい、全フロア合わせると50冊は超えていたと思います。

特に私は中央館で働いており、表に出ている本の他に書庫にも本があった図書館だったため、さらに数多く幅広い年代の本にふれる機会がありました。

そこで思ったのが、図書館は「知識を横にも縦にも広げられる」自由自在に楽しい場所だということ。

例えば「家庭菜園始めたい」となった時、いろんな著書の家庭菜園の方法本を読めるので、知識のいいとこ取りができますし、読んでいくうちに「栄養価の高い野菜って何かしら?」と思ったら、野菜の栄養辞典を読む…といったような、1つの場所で派生して知識が広げられるのが図書館の強みです。

もし調べるのに行き詰まったら、レファレンスの職員さんにきけば新たな角度からの資料を提案してくれますし、調べるのに飽きたら、違う本を読んで気分転換することもできる…まさに自由自在で、知識欲を満たすことのできる最強に楽しい場所だと働いていて実感しました。

◆本を作る
出版社にいた時の私の仕事は編集者ではなく、編集部における雑務全般…本を作る人たちのサポート業務でした。

その時に1つの本を作るのに多くの人が携わっているということを知りました。

例えば「漫画の原稿」1つ完成されるためには、漫画家さん、編集者の他に、内容齟齬や文字のミスがないかを確認する校閲部、吹き出しのセリフ等の写植を作る人、貼る人(今はデジタル化されていると思いますが)、原稿を印刷する印刷会社といった、原稿1つをとってもこの人数が関わっています。

もしその漫画がコミック化した場合は表紙作成、販売、イベントなどが必要になり、上記以外にも関わる人はさらに増えます。装丁家(デザイナー)さん、用紙を決定する業務部、本の販売コード等が合っているかチェックする部署、販売部、広報部等々…。

私はこの人たちをつなぐ役割の1人として仕事をしていたのですが、みな1つの作品に対して、それぞれの立ち位置のプロとして一丸となって作品作りをしている姿をみてきて、本そのものの凄さを実感しました。

それぞれの思いや技術が込められているから、内容がちゃんとあって、出版年数関係なくみんなに必要とされる(読まれる)…。本の価値の高さを出版業界で働いてみて、強く感じることができました。

なぜ、いま、本なのか?

さて。
こうしていろんな立ち位置で本に関わってきた人生でしたが、業界的に展望が持てず、好きだった図書館や出版業界を離れてまで、いまなぜまた本に関わって、書店を始めようと思ったか。

「やっぱり本しか勝たん!!」
この一言につきます。

今まで、つらい時や壁にぶちあった時、活路を見出す方法を探す時など、本を読むことで元気や生きる知識、勇気をもらってきました。

また実際に本作りで本自体のクオリティの高さを目の当たりし、そんなクオリティの高い本がいっぱいある環境(図書館)はワクワクする楽しさがある…本は私にとって、いろんな角度から前向きに生きる感情を与えてくれました。

それら自分の経験をすべてひっくるめたうえで、生きる知識や活力につながるような、いろんな本を多くの人に届ける(発信)することで、本が誰かの人生の楽しみの1つになればいいなぁと思い、書店をはじめることにしました。

ネットが主流の今の時代。
すぐに情報や知識が手に入る環境になりましたが、ネット検索上位表示の記事を見てみると誘導記事や情報が浅いものが多く、読んでいて残念ながら本以上の精度や楽しさは感じられないのが現実です。。

ちなみに店主は今、ネットで情報収集当たり前(SNS複数使用)、支払いはクレジットカード、電子マネーで、ネット証券や銀行もガンガン利用している生活圏内完全デジタル人間(笑)なのですが、過去にアナログ(本)も経験してきたからこそ、やっぱり本は優れていると改めて実感しています。

比較対象があったからこそ、こうして本の良さを再確認できて、こんな時代だからこそ、書店をやってみて、多くの人に本の良さを知ってほしいなぁという気持ちがわいてきたのかもしれません。

人生は、ほんの小さなきっかけ1つで大きく変わることもありますし、1つ物事を知っただけで楽しくなることもあります(経験論)

そのきっかけや生活の彩りの1つに「本」を加えてみませんか?

本が、読んだ人の小さなきっかけになりますように…。