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べらぼう(3)謎の少年唐丸が登場する意味を考えてみた・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック

YouTube動画の台本です。よろしければ動画もご覧ください。

今回は、主人公・蔦重と常に行動を共にする謎の少年・唐丸について考えたいと思います。

ご覧いただきありがとうございます。
この動画は、大河ドラマ『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜』をドラマ的観点から考察し、脚本・シナリオについて学んでいこうという内容です。

毎週木曜日あたりに各回の考察動画をアップしていく予定ですので、よろしければ是非チャンネル登録してご覧ください。


今回の学び:唐丸の意味

唐丸は第1回の大火事の際、蔦重に助けられた少年です。
どうやら記憶を失っているようで、自分の名前も親の名前も覚えていません。

蔦重は彼を引き取って仕事の手伝いをさせたりしています。
唐丸というのは、蔦重が自分の幼名にちなんで彼につけた名前です。

どう考えても、この唐丸というキャラクターには、ドラマ的に大きな意味があるはずです。
皆さんはどんな意味があると思いますか?

”ワトソン君”的役割

私は2つ、意味があると思います。

ひとつは、視聴者の代わりに、蔦重から説明を聞く役割。
もうひとつは、将来的に蔦重と「親子のドラマ」を演じる役割。
この2つです。

ひとつ目は、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズに出てくる助手・ワトソン君的な役回りですね。

よく言われることですが、ポイントは、医者であるワトソンがあえて愚鈍なキャラクターとして描かれていることです。これは小説のテクニックとしてそうしているわけです。

なぜなら、ワトソンが馬鹿な質問をし、それにホームズが答えることで、読者は複雑な推理を理解することができるからです。

「べらぼう」でも、歴史的知識がないとよくわからない言葉を、蔦重が子供の唐丸に分かりやすく説明したり、蔦重が自分の考えや計画を唐丸に話したりする場面が、すでに何回もありましたよね。

そうすることで、説明的なナレーションに頼りすぎることなくドラマを進行することができる。そういう「仕掛け」なわけです。

「血のつながらない親子」のドラマ

さて、もうひとつの「親子のドラマ」というのは、私の今後の予想です。

誤解を恐れず言い切ってしまえば、ドラマで感情を揺さぶるのは、親子関係か恋愛関係、このどちらかです。

蔦重の場合、育ての親である駿河屋市右衛門との関係が、今のところドラマの中心ですよね。

その「血のつながらない親子」のドラマが、将来的に蔦重・唐丸のドラマに受け継がれるのではないか。それが私の予想です。

今回、駿河屋市右衛門と扇屋宇右衛門の会話が、「血のつながらない親」の複雑な心境を描いていましたので、ちょっと振り返ってみましょう。

「血のつながらない親」の複雑な心境

蔦重を追い出した駿河屋市右衛門に、このまま戻ってこなかったらどうするんだと扇屋宇右衛門が尋ねます。

それに対して、駿河屋市右衛門は吐き捨てるように答えます。

「そもそも親でも子でもねえんだ 吉原から追い出すだけでさね」

すると、扇屋宇右衛門はその心中を見透かして言います。

可愛さ余って憎さ百倍なんて お前さん まるで人みてえなこと言ってるよ 忘八のくせに」

人でなしの女郎屋のくせにに流されている。扇屋宇右衛門はそう言っているわけです。

「血のつながらない子供」蔦重に対する駿河屋市右衛門のこの複雑な心情が、やがて、成長した唐丸に対する「血のつながらない親」蔦重の心情として繰り返されるのではないか。
それが私の現在の見立てです。

「情」と「家」

今回、幕府・幕臣のプロットでは、田安賢丸の養子問題が描かれました。
白河松平家は、吉宗公に近い血筋の賢丸を養子にして家格を上げたいのだ。セリフでそう説明されます。

言うまでもなく、封建社会で重要なのは「家」であり、血筋ですよね。
こちらのプロットでは今後 その「血縁」を巡るドラマが始まりそうな雲行きです。

それと対比するような形で、吉原プロットでは「血のつながらない」関係、つまり「情」のつながりが強調されているのではないか。私にはそう思えます。

蔦重と駿河屋市右衛門、蔦重と朝顔姐さん、そして花の井…皆、血はつながらないが情で強く結びついた関係であり、だからこそドラマが生まれます。

そんなふうに考えると、今はただ「聞き役」でしかない唐丸が、将来的にドラマの重要な役割を担うのは確実なんじゃないか。そう私は思います。


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一尾直樹
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