シェア
一之瀬なな
2017年7月13日 10:29
その日は、私の気持ちを代弁するかのような、長い長い雨が降りしきる夜だった。水玉模様が散らばるピンク色の傘をさして、少し傾斜のかかった道をふらふらと歩く。ポツリポツリとしか街灯がないこの通りは、人通りもあまりなく、とても静かだった。私は重い足を引きずりながら、あと数十メートル先にある自分の家を目指す。気分は最悪だ。2年間付き合っていた男に、別れを告げられた。聞けば浮気相手がいつの間
2017年7月14日 09:47
※1話から読みたい人はこちらある日のこと。遠くで聞こえるアラームの音に半分意識を覚醒させながらも、まだ夢の淵でまどろんでいた朝。私は寒さに身を縮めて、胸まで被っていた布団を肩の上まで引っ張り上げた。起きなきゃいけない、頭では分かっているものの、この寒さになかなか体を起こすことが出来ない。あともう少しだけ、と意識が遠く離れていく。 「オイ、起きろよ」 その時、やけに低音でセク
2017年7月15日 21:55
※1話から読みたい人はこちら「のろのろせずに、さっさと片付けろ。ったく、部屋片付けるのにいつまでかかってんだ」盛大なため息を吐く黒猫様は、優雅な格好でソファの上から私を見下ろしていた。「いやいや、だって部屋の掃除とかしてたら昔のアルバムとか、読んでた雑誌とか見つけて、つい読み込んじゃって片付かない……って、これ掃除あるあるでしょ?」「何だよ、それ。お前が部屋の片付けし始めて、もう1時
2017年7月27日 20:37
※1話から読みたい人はこちら次の日の朝。若干2日酔い気味の私を「言わんこっちゃない」という風な目で見た後、ノーブルはまた眠りについてしまった。朝が苦手なのか、私が出勤する時間は寝ていることが多いのだ。「それにしても、昨日は飲みすぎちゃったなぁ~……」なるほど。何となく参加した飲み会の所為で、こんなイマイチな状態で朝を迎えることも、きっと幸せな人生からは程遠いという訳か……。軽い
2017年7月28日 11:08
※1話から読みたい人はこちら次の日。定時で仕事が終わった私は、今朝ノーブルから言われた指令を遂行するために駅前の商業施設へ向かっていた。人通りの多いこの道は、私と同じような仕事帰りのサラリーマンやOL、大笑いしながら並んで歩く高校生、ベビーカーを押したお母さんなどいろんな人が交差する場所でもある。その表情は様々で、私は人ごみに行くと「きっとみんないろんな思いを抱えて毎日を過ごしている
2017年8月5日 16:22
「い、忙しい……」月末の事務処理に終われ、ここ数日は目まぐるしい日々が続いていた。おまけに後輩がミスした仕事の修正作業もあって、仕事が山積み。家に帰れば、軽くご飯を食べて、シャワーを浴びたらすぐに寝てしまって、以前続けていた読書も、ここ数日は出来ていない。はっきり言って私のイライラはマックスで、心に余裕がないのは自分でも自覚している。朝の支度も何だか憂うつだ。ついこの間まで「毎日