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【書評】村上春樹作品 主にノルウェイの森について語る
以前、若い頃といまで捉え方が変わった作品がいくつかあることを書いたが、わたしにとって、村上春樹さんの作品もそれに当たる。
とらえどころがない感じがし、でもなんとなく惹かれるものを感じ、読んでいた10代・20代。
冊数は読まず、気に入った作品を何度も読み返していた。
そして、30代になり、いろんな種類の作品を読むようになった。
もちろん、作者の意図を正確に捉えられているなんて、おこがましくてそんなこと言えない。
でも、でも、読んでいて以前と違うものが見えてきた気がする。
超有名作家であるがゆえ、ネタにされることもあるし、作品についてはいろいろな解釈もある。わたしが思いもつかないことも多い。
わたしはハルキストといえるほどは読んでないが、ノルウェイの森に関しては何回も何回も読み返している。
今日はこの本の書評を書こうと思う。
※以下、ネタバレありますのでご注意ください。
村上春樹 ノルウェイの森
二十歳のとき、初めて本にマーカーを引く経験をしたのもこの本だ。
マーカーを引いた以下の文章は、以後ずっとわたしの死生観に大きな影響を与えた。
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
さて、書評に戻ろう。
生々しい性描写におののきつつ、直子が自殺することに衝撃を受けた10代。
本作に多く登場する自殺者について考察し、精神保健学の大学のレポートを書いたのもこの時期だ。
ワタナベの中での直子と緑との関係を捉えることができはじめた20代。
それまで、ワタナベが緑に惹かれる理由が自分の中でうまく昇華できていなかったのである。
若さゆえの危うさに気付き、直子の置かれた環境、緑の置かれた環境のそれぞれの辛さがしんどくなってきた30代。
永沢さんの魅力に気付き始めたのもこの頃である(クズが故の魅力というやつである。なお、ハツミさんのことは10代からいままで、ずっと好きである。一番好きな登場人物かもしれない。)
そして、いまのわたしはレイコさんと同年代。
直子にずっとよりそってくれたレイコさんが旭川で幸せになったことを、主人公ワタナベのその後以上に案じてしまう。
登場人物がずっとセックスばっかりしてる、中身がない、メンヘラばかりなどと批判の多い本であることは重々承知している。
だが、このクリスマスカラーの本は、わたしの心を長い間、ずっと捉えて離さないのである。
これからもきっと、折に触れ読み返すであろう。