![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46622917/rectangle_large_type_2_0520b9bc2c3ed192a4faf6679a5a4560.jpeg?width=1200)
「人を良くする優しい空間」
今年、私はまた一つ大きな節目の年を迎えました。学生生活最後の年、就活生です。
毎日エントリーシート、卒業論文を書いて、たまに学校に行き講義を受ける……やることがたくさんあって、充実した日々を過ごしています。
……嘘です。本当は卒業論文の締め切りに追われ、履歴書を送れば祈られ、毎日「この先大丈夫かなぁ」という不安に駆られています。それらと戦う日々です。
先日ちょっとしたことがきっかけでネガティヴモードに突入してしまい、精神的に参っていました。
企業説明会後の帰り道に、とあるカフェに目が止まりました。大通りに面したビルの一階に、清楚で可愛らしいお店の扉を開けると雰囲気にぴったりのお姉さんが優しく迎え入れてくれました。
店内はわざと照明を落とし柔らかい自然光が入るようになっていて、落ち着いたピアノのBGM。店内はとても静かで、扉を挟んでのこちら側は別世界のよう。
店主であるお姉さんがおすすめだと言っていた、にんじんケーキを頼みドリンクはオリジナルブレンドのホットコーヒーを。
レーズンとナッツが入った、にんじんケーキは上品かつ自然で豊かな甘みが口の中に広がり、鼻に抜ける洋酒の芳醇な香り。コーヒーはほろ苦く、だけどどこかほんのりと甘みを感じる味でした。優しい味のケーキを食べている時、自分の目からポロポロと涙がこぼれていることに気づきました。
「情けないなぁ……卒業論文も就職活動もまだ始まったばかりで、これからもっと頑張らなきゃいけないのに」
と反省しました。
こっそりハンカチで涙を拭っている時、テーブルの上に何かが置かれました。
ぼやけた視界でよく見るとそれは小さな耐熱皿の上には一枚のクッキー。
お姉さんの方に顔を向けるとふんわりと穏やかな笑みを浮かべ
「レモングラスのクッキーです。試作品なんですが、よかったらどうぞ」
と出してくれました。
クッキーはサクッとした軽い口当たりで、まだほのかに温かかったです。
バターのミルキーな風味とレモングラスがほのかに香り、上品で食べやすい味でした。まろやかで、でもスッキリとした味だったので少し冷静になることができました。
目を瞑り、ひとつ深呼吸して「まだまだこれからだ、私ならできる。今まで何とかなってきたし、これからだって何とかなるはず」と心の中でつぶやきました。さっきまでの落ち込んでいた気分が嘘だったかのようにやる気に満ちている自分に気づいたのです。
そしてお店を出た時に
「お気をつけて、応援しております」
と素敵な笑顔で送り届けてくれました。
厳選されたこだわりのメニュー。
あたたかいお姉さんの雰囲気に癒されました。
「絶対また来よう。今度来るときはあんなネガティヴな気分の時じゃなくて、内定をもらった時にしよう。それを目標に頑張ろう」
そう決意しました。
扉を開けると車の音や鳥の鳴き声が遠くで聞こえ、現実世界に帰ってきた気持ちになりました。
私は青空を見上げて「よし!」と呟き歩き出しました。
私の戦いはこれからです。