邪虫 Part2
前回のあらすじ
時は西暦201X年!おつむがパッパラパーの僕は友達に深夜の昆虫採集ツアーに誘われるんだ!でも何を血迷ったか無線スピーカーでいたずらを仕掛けようとする!数日掛けて作った沢山の我が子達(音ネタ)!京都山奥で鳴り響く奇っ怪な音・音・音!!後世に語り継がれる神話と寓話の感動巨編!
やべえ、文章って大変だ心が折れそうだ!助けてーっ!
登場人物
市造:"首謀者" 私、小学校から折り紙付き陰キャ、思考回路に問題有り
中島:"今回のターゲット" 学生時代はバスプロで雑誌にも多数掲載される実績を持つ、また虫博士とあだ名が付くほど昆虫の知識は明るい。中学生時代の話を聞くと「あの頃は魚と虫しか友達がいなかった…」と語ってくれる。
山根:"協力者" 固定装備は銀縁眼鏡、元学級委員長、成績が良い
お気づきだろうか、昆虫採集ツアーには参加者が増えているのだ。実は私の作った効果音を実証する為、前日に山根くんを実験台にした際「これは怖すぎる、下手したら事故して死人が出る!危ない!」と怒られながらもお褒めの言葉を頂き、協力者として付添をお願いしたのだ。もし死なれたら一人で埋めるのも大変だし、仲間はいたほうがが良い、何より最後にごめんなさいをする時、私だけでは寂しい。そしてなぜか本人も乗り気。
決戦の日、夜は深まり23時になり3人の男は各々の仕事を終え一同に集り3時間かけて京都の誰も来ない山奥へ向かう。
運転手は中島(ターゲット・虫博士)、助手席に山根(協力者・眼鏡委員長)
後部座席に市造(私)。
私は後部座席に座る前にすでに車のトランクに最大音量にしたスピーカーをに仕込んだおいた。問題は通信状態がしっかりと維持されているかだが、すでに自宅にて様々な実験により障害になるポイントは全て取り除いておいた。効果音を使う際は "近くに車両が居ないこと・車の速度が15キロ未満・道幅が狭く閉鎖感がある所" と決めていた。
概ね一車線のトンネル、小さな橋、ヘアピン型のカーブ等だ、京都の山奥だし沢山待ち構えてくれているだろう。そして運命の歯車は回りだす。入念な計画とわたくしの私的な社会実験を乗せて…
車で走って2時間程経った頃だったろうか、もう随分と山奥に入った。カーステレオから中島君好みの音楽が流れている「三代目 J SOUL BROTHERS」「EXILE」「SEKAI NO OWARI」「やしきたかじん」が流れている。
たかじん(昭和歌謡)だけが異彩を放っている、きっと彼の心を癒やしてくれるのだろう。他の楽曲と違い彼が本当に好きなのはきっとたかじんなんだろうな。いや、違うな流行りに混ぜて異彩を放たせ、俺こんな一面もあるんだぜ的な自己主張だな、なんて酷いことを考えながら私は後部座席でひたすら時を待った。そして視界に一本の細い橋をとらえた。よし、今だ...!
ドン!ドン!ドン!(重い鉄の扉を強く叩く音)
中島「エッ!!何!!!何か聞こえんかった!!?」
山根「うんー?(聞こえないふり)」
私 「枝か小石でもはねたんちゃう?(聞こえないふり)」
まずはジャブだ、少量の違和感で抑えておくのがポイント。やり過ぎてはいけない、夜は長い。車は一旦停止し皆で傷や破損が無いかチェックする。
中島「おかしいな~、確かに何か聞こえた気がしたんやけど…」
山根「小石はねたんやろ~」
私 「たかじんに聴き入って気が付かんかった…」
中島君の不安をよそに一同は車の中へ。
昆虫採集第1ポイントへ到着。カブトムシを数匹捕まえ中島君は満面の笑みを浮かべ、落ち着きを取り戻した。ここで私は作戦を変えることにする。多数用意した効果音は使う必要性が無いと思い始めたのだ。扉を叩く音があまりにも怖くて効果が高い事を感じたからだ。実際、効果音を流した私にはあまりにリアルで走行中の車を後ろから叩かれている気分になったのだ。本当に怖かった、知っている私がこれだけ怖いのだ…中島君のそれは比較にならないだろう…。彼の心が平衡感覚を失いかねない。それに昆虫採取ポイントはまだ2つも残っている。効果音達には申し訳ないけど扉を叩く効果音だけにしておこう…ひきかえされても困る。私もちょっとカブトムシとかクワガタ、欲しいし…
昆虫採集第2ポイントへ向かう。ここは止めておこう節操がなさすぎる。カブトムシもクワガタも居なかった…いたのは大きな蜘蛛だけだ…
そして最後の第3ポイントへと向かう一同。
一度目の扉を叩く音から1時間あまりが経過し時刻は深夜の2時を過ぎていた、皆もあの異音のことを忘れ談笑している。そろそろか?そろそろ…やるか…?そう思っていた矢先、視界に光さえ灯っていない細いトンネルが現れた。効果音がなくても十分怖い、しかし最高のパフォーマンスで能力を発揮してこそ意味がある。私は意を決してウォークマンの再生ボタンへ指をかけた。
ドーン ドーン ドーン(重い鉄の扉をゆっくり叩く音)
ギギギーッ!車はトンネルの中程で急停車。
「ア"ァ"ア"ア"ァ"ーーーーーー!!!」車内に響き渡る中島の声。
...続く
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