マガジンのカバー画像

デジタル権威主義

222
デジタル権威主義についての情報を発信してゆきます。 当面は備忘録代わりにニューズウィーク日本版などに発表した記事の資料を掲載します。余裕できたらオリジナル記事を書くかもしれません。
運営しているクリエイター

#デジタル影響工作

偽・誤情報、デジタル影響工作と認知戦についてのメモ

偽・誤情報、デジタル影響工作と認知戦についてのメモ


作戦の戦術偽・誤情報、デジタル影響工作、認知戦、誘導工作など情報を使って世論を操作、攪乱することの呼称はたくさんある。あくまで私見だが、その効果・影響は下記の3プラスおまけ1つになると思う。効果・影響は相手から見た場合は戦術となる。

1.既に存在している偏見、偽・誤情報、ナラティブを増強し加速する

たとえば既にテーゲット国の国内に存在している特定の人種、民族、職業などに対する偏見や陰謀論を増

もっとみる
ロシアのAI強化型ボットMelioratorによる影響工作をFBIとオランダ、カナダ当局が連携して摘発

ロシアのAI強化型ボットMelioratorによる影響工作をFBIとオランダ、カナダ当局が連携して摘発

アメリカ司法省はFBI、Cyber National Mission Force (CNMF)と、オランダのthe Netherlands General Intelligence and Security Service (AIVD)、Netherlands Military Intelligence and Security Service (MIVD)、the Netherlands Pol

もっとみる
イスラエルが行ったデジタル影響工作キャンペーンはゲーム感覚で参加できる世論操作ツールを含む包括的なものだった

イスラエルが行ったデジタル影響工作キャンペーンはゲーム感覚で参加できる世論操作ツールを含む包括的なものだった

イスラエル政府が世界各国に対して行っていたデジタル影響工作キャンペーンは、すでにopenAI、Metaの四半期脅威レポートで報告されている。

OpenAIの脅威レポートにはなにが書いてあったのか?、 https://note.com/ichi_twnovel/n/nde4210aa157b
Metaの2024年第1四半期脅威レポート、 https://note.com/ichi_twnovel/

もっとみる

AIボットの検知はきわめて難しいという論文

生成AIの発展によってAIボットがSNSに増殖することを予想した人は多かったが、今のところAIボットの急増というレポートは見たことがない。その理由はAIボットは検知できないからだった。

●代表的な3つのボット検知ツールでは歯が立たない生成AI利用がデジタル影響工作に利用された報告は増加しており、もはやAIが関与していないものの方が珍しいくらいと言ってもよいだろう。偽アカウントのアイコン画像、偽プ

もっとみる
ロシア侵攻を正当と信じるのは陰謀論的世界観を信じているためという論文

ロシア侵攻を正当と信じるのは陰謀論的世界観を信じているためという論文

2024年5月22日に公開された論文「Justifying an Invasion: When Is Disinformation Successful?」( Jan Zilinsky他、 https://doi.org/10.1080/10584609.2024.2352483 )によると、19カ国にわたる調査の結果、ロシアの主張を信じる人々には陰謀論の世界観を持っている傾向があった。

●概要

もっとみる
気になった論文や記事2024年5月24日

気になった論文や記事2024年5月24日

5月18日から5月24日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。

●ポーランドのジャーナリスト8年間の軌跡ポピュリストや右派が渦巻くポーランド政治の中で、プロパガンダのツ=ルとして利用されることも多かった。ポーランドのメディアとジャーナリストの8年間の軌跡をコンパクトに紹介した記事。

After eight years o

もっとみる

「ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義」は学際的な視点で誤・偽情報の今を学べる貴重な連載

フォーサイトで昨年末から始まった連載「ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義」(市原麻衣子、 https://www.fsight.jp/subcategory/ナラティブ戦争の国際政治学ーー標的になる民主主義 )は国際政治学、安全保障など学際的な視点で現在進行形の誤・偽情報、認知戦、デジタル影響工作を解説している貴重な連載だ。
いまのところ、下記の3本を読むことができる。

・イスラエ

もっとみる
気になった論文や記事2024年5月17日

気になった論文や記事2024年5月17日

5月11日から5月17日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。

●セネガルでジャーナリストと政府批判者に猛威をふるったフェイクニュース法セネガルではフェイクニュース法によってジャーナリストや政府批判を行った人々が投獄されている。この法律にはフェイクニュースの定義が書かれていないため、恣意的な運用が可能となっている。

Se

もっとみる
気になった論文や記事2024年5月10日

気になった論文や記事2024年5月10日

5月3日から5月10日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。

●トランプ就任後のAI規制を準備するテック長者の暗躍テック業界のフィクサーJacob Helbergのグループはワシントンの強力なロビー活動を行っている。最近は中国を抑えるためにTik Tokを追い出し、アメリカのAI優位を確立するためのルール作りを始めている。

もっとみる
アメリカ、フランスをターゲットにしたロシアの大規模作戦CopyCop

アメリカ、フランスをターゲットにしたロシアの大規模作戦CopyCop

Recorded FutureのInksiktグループは2024年5月9日、ロシアが行っているLLM=生成AIを利用した大規模な作戦CopyCopに関するレポート「Russia-Linked CopyCop Uses LLMs to Weaponize Influence Content at Scale」( https://www.recordedfuture.com/russia-linked

もっとみる
誤・偽情報対策を見直すために読むべき論文や記事のガイド

誤・偽情報対策を見直すために読むべき論文や記事のガイド

ダン・ウィリアムズによって書かれた「The misinformation wars - a reading list」(2024年5月3日、 https://www.conspicuouscognition.com/p/the-misinformation-wars-a-reading )は、誤・偽情報対策を見直すために読みべき論文や記事のガイドだ。
ただし、欧米社会全体で問題となっている多くのト

もっとみる
気になった論文や記事2024年5月3日

気になった論文や記事2024年5月3日

4月27日から5月3日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。

●ハリウッドスターの偽動画を使ったドッペルゲンガーの作戦ドッペルゲンガーはしつようにさまざまな偽情報を流布しているが、ハリウッドスターの動画に偽の音声を吹き替えた動画をSNSで拡散しているのをNewsGuardが発見した。

Kremlin Hijacks Ho

もっとみる
誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった

誤・偽情報対策の決め手? 公衆衛生フレームワークは汎用的な情報エコシステム管理方法だった

2024年4月19日に公開された論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」( https://doi.org/10.1016/S2468-2667(24)00031-8 )はコロナ禍でのインフォデミックを反省材料にして、イ

もっとみる