原川大介「わたしが、認知症になったら 介護士の父が記していた20の手紙」
・本書は、介護士(介護福祉士・ケアマネジャー)で、認知症を持つ本人と家族への介護・支援に従事。現在は個人事業主として、介護事業の経営実務と運営支援を業とする著者が、介護の仕事を通して、認知症である本人や家族から多くのヒントを教わったことを、「長年、介護の仕事をしていた父親が、自分が認知症になる日に備えて書いた、娘への手紙」という形で紹介した1冊。
認知症の基礎知識(一部)
①認知症とは
・日本神経学会によると、「認知症とは、一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態で、それが、意識障害の、ないときに見られる(一時的ではなく継続している)」と定義されている。
・つまり、「後天的な脳の障害によって、いままでできていたことの一部ができなくなったり、わかっていたことの一部がわからなくなり、著しい生活のしづらさが生じている状態」である。
・具体的な症状として、「記憶障害」の他に、「料理が作れない」「服の着方がわからない」「人の顔を識別できない」「お花やティッシュを食べる」などの行動もが見られる場合もある。
②もの忘れと認知症の違い
認知症の多くで記憶障害が見られるが、認知症でなくても、人は加齢とともに「もの忘れ」が表れる。もの忘れは、加齢に伴い体験の一部を忘れるのに対し、認知症による記憶障害は、体験のすべてを忘れてしまうと言われている。
・たとえば、もの忘れでは、昨日の食事のメニューを思い出せなかったりするが、認知症による記憶障害は、食事をしたこと自体の記憶がポッカリと落ちてしまう。ただし、「加齢に伴うもの忘れは自覚があるが、認知症の人は自覚がない」は、事実ではない。
※認知症の基礎知識として、「認知症の兆し」「認知症をとりまく現状」など13の項目に分けて紹介しているが、紹介は本書をご覧ください。
介護士の父が記した20の手紙(一部・要約版)
1 お前は何も悪くない
・身内が認知症になったら、「ああしていれば、認知症にならなかったのでは」「もっと早く気づいていれば、どうにかなっていたんじゃないか?」と自分を責めたり、後悔したりするかもしれない。
・世の中に出回っている情報には、脳トレや運動をしていれば認知症は防げるとか、孤独が認知症を助長するとか、早期発見・早期対応で認知症は治るとか、認知症になった者の家族の後悔を誘うものがあるかと思うが、そんなものには鵜呑みにしなくてよい。
・なぜなら、少なくとも「絶対」ではないからだ。誰よりも脳みそや使っていたイギリスの元首相、世界一整った医療体制の中で生活なさっていた皇族、漫画を描き(手先を使い)、競馬をし(頭と心を動かして)、路線バスでいろんなところに外出していた蛭子能収氏も、認知症になっている。
・早期発見、早期対応は、ときに「早期レッテル・早期絶望」になることがある。発見が遅れたおかげで、「認知症の人」ではなく、それまで通りの人として過ごせる期間が延びたとも言える。
・だから、決して自分を責めないこと。認知症の人が認知症になったのは、「たまたま」である。
・本書では、「何よりもまず伝えたいこと」「お前が楽になるために」「介護サービスの利用にあたって」「とても大切なこと」という章で構成されており、先に紹介した「お前は悪くない」の他に、「お前の名を忘れても」「家族間で揉めたときは」「手厚い介護を受ける方法」「徘徊が始まったら」という20の手紙という体裁で、認知症患者の実際について紹介し、「認知症の種類と特徴」「介護施設を選ぶポイント」「治療・薬物療法」などの医学的情報も収録された内容となっている。また、巻末には「あなたが認知症になる前に、つくっておきたい共有シート」(書いた人の価値観および生活習慣を共有するためのもの)が収められている。
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