店舗開業のイロハ。継続経営のための事業計画の作り方と創業計画書の書き方
このnoteは、創業計画書の書き方だけでなく、「継続してお店を続けるための計画書の作り方」・計画の方法を書いてます。
私がこれまで実際にお店の開業した際に作成した計画の立て方・マーケティング戦略の考え方を備忘録的に書いていますので、これからお店や商売を開業したいという方に少しでも参考になれば幸いです。
この記事に記載しているノウハウをテンプレート化しています。
興味のある方はこちら「店舗開業のための事業計画と創業計画書の書き方テンプレート」よりDLください。(有料)
はじめに簡単に私の自己紹介をすると、現在地方の中小企業でマーケティング・人事関連の仕事をしています。企業で年間数百万~億単位での広告宣伝や新規事業の立ち上げを経験、個人では中小企業診断士として、飲食店やエステサロンなどの個人事業や店舗のマーケティング支援を行なってきました。
今回は飲食店を新しくオープンした時に作成した事業計画・創業計画書の内容を説明しています。記事自体のボリュームが多いので、知りたい箇所だけピックアップして読んでも良いと思います。
《目次》
①事業計画の作り方
②創業計画書の書き方
③売上計画(P/L)・出納帳・資金繰り表(キャッシュフロー)の考え方
1.事業計画の作り方
(1)事業計画とは何か、その必要性
そもそも事業計画とは何でしょうか。
事業計画は、会社でいう経営計画と同じで、お店を永続的に存続していくために、「お客さんにどういう価値を生み出し、提供していくか」を示したものです。
より細かく言うと、会社でいう事業戦略を計画に落とし込んだもので、外部環境を理解した上で、ライバルと競走し、勝ち続けていくための計画です。
企業の最大の目的はゴーイングコンサーン、企業活動を継続していくことで、個人事業のお店も同じことが言えます。
お店がやりたい!という思いだけでなんとなく勢いでお店を開業してしまうと、オープンしてすぐは好調だけどその後売上が落ちていく、商品はいいのにお客さんは来ない、最後には潰れてしまうという結果になってしまうこともあるかもしれません。商品はいいのにお客さんがなかなかこない、という声も実際に何度も聞いています。いわゆる「流行り」になってしまうと、お店の賞味期限が短くなってしまいます。
じゃあどうするかというと、お店を継続していくためにはしっかりとした計画が必要で、どうやって継続して繁盛する、もしくは潰れないお店を作るのかを考える「戦略(計画)」がとても重要です。
まずはお店を出す前に一度計画を作ってみて、これならしばらくはやっていける、と思ってからはじめることを強くおすすめします。
事業計画ができると、従業員にも共有することで経営者の想いやお店の強みを理解してもらえるので、内容の一部を共有することをおすすめします。
(2)事業計画書の構成
私がこれまで企業で新規事業やプロジェクトを担当する際に色々計画を作ってきて、自分でこれが一番わかりやすい、という形式にまとめた事業計画書のスライドを紹介します。創業計画書でそのまま使える内容で作成していますが、どちらかというと、マーケティング計画によりフォーカスしています。創業融資の際にもこの形式でプレゼンしました。(無事満額融資がおりました!!)
①事業概要(サマリー)
事業の内容の全体像を簡潔に表現したものです。
誰に、何を、どうやって販売し、いくらぐらいの収益が見込めるのかを分かりやすく記載し、誰が見てもこの事業ならいけそうだ、と思わせる内容になってなくてはいけません。
概要で「あんまりイケてないな」と思う計画なら、どこかの計画をやり直す必要があります。
②マーケティング戦略
次に最も重要なマーケティング戦略の概要を記載します。
こちらも誰に、何を、どうやって販売するかを箇条書きでわかりやすく納得できるように記載します。
②-1.業界・市場分析
ここからはマーケティング戦略を細かく分解していきます。
一般的な事業企画の流れと同様に、はじめに市場分析(3C・5フォース・SWOTなど)を行い、その後マーケティングミックス(4P)を行います。
いきなり分析という言葉が出てきて抵抗感はあるかもしれませんが、要はそこにちゃんとお客さんはいるのか、ライバルはどんな相手かを下調べしよう、ということです。まずは開業しようとしている業界のこと、競合やマーケット情報を正しく認識し、その中で勝負できる、つまり勝てるポイントを明確にします。
今回はマーケティングの分析フレームワークの中でも割と使いやすい、5フォースとSWOT分析にしました。5フォースは、ポーターが提唱した5つの競争要因と呼ばれる有名な方法です。通常は競争というと、競合他社との戦いが思い浮かびますが、ポーターは競合他社だけでなく、他に4つの競争要因があるとしています。
この5つの競争要因を分析することで、業界の競争構造を明確することができます。ちなみにこの5フォースはそのまま創業計画書の「取扱商品・サービスの内容」に記載することができますので、分析をやっておくことをおすすめします。1つずつ見ていきます。
〔1〕競合
まず、既存業者との競争はどれくらい激しいかということです。
競合他社が多い場合は、もちろん競争が激しくなります。また業界全体の成長率が低く、既存業者でシェアを争っている場合も競争が激しくなります。競合が多いということは、市場が大きいとも捉えられますのでプラスの要因にもなります。
〔2〕新規参入の脅威
新規参入の脅威とは、業界に新たな業者が参入してくることを意味しています。新規参入が増えると、業界内の競争が激しくなります。参入障壁が低い業界では、新規参入してくる可能性が高くなります。
〔3〕代替品の脅威
代替品というのは、消費者にとって、既存商品でなくても満足できる別の商品のことです。
〔4〕売り手の交渉力
売り手(供給業者)とは、商品を作るのに必要な原材料を供給する業者のことです。売り手の交渉力が強い場合、仕入れが高くなり原価が高騰します。
〔5〕買い手の交渉力
買い手(お客さん)とは商品を購入する顧客のことです。
買い手の交渉力が強い場合、売れる数・額が減ることがあります。
業界の構造を理解した後、自分のお店がどんな戦略を取るかが重要となってきます。ライバルとの差別化をどうやって図り競争優位を獲得するかを考えましょう。
②-2. コンセプト
簡単に言うと、あなたのお店を一言で表すなら何か、お客さんにどう感じてもらえるかを「端的にわかりやすく」表現したものです。ここで共感を得られなければファンはつきません。「どんな提供価値をあたえるかを端的に言語化する」ということです。
②-3.ターゲット
「お客さんは誰なのか」をまとめたものです。
お客さん像をセグメント(切り分け)し、その中で自分のお店に最適なターゲットを決めていきます。セグメントにはよくデモグラフィック・サイコグラフィック・ジオグラフィックが使われます。
・デモグラフィック(人口)…性別、年齢、在住地域、学歴、職業、所得など
・サイコグラフィック(心理)…価値観、信念、趣味趣向、購買動機など
・ジオグラフィック(地理)…地域気候、人口密度など
・年齢層(女性)の例
F1層……20~34歳の女性
F2層……35~49歳の女性
F3層……50歳以上の女性
M1層……20~34歳の男性
M2層……35~49歳の男性
M3層……50歳以上の男性
また「何を」「どのように」まで記載すると、戦略の解像度が上がります。
②-4.提供価値
お客さんはどんな人で、何をどのように提供し、喜んでもらうか、どんな想いを込めるかをまとめたものです。
・お客様はどう嬉しいか?(ベネフィット・TPO)
・お客様はどんな人?(ターゲット)
・競合はどんな人?(差別化できる強み→後述)
・何をいくらでどのように?(4P→後述)
・どんな想いを込める?(想い)
②-5.差別化ポイント
SWOT分析からStrength(強み)・Weekness(弱み)を切り出したものです。強みを差別化できる機会とし、弱みを今後の改善ポイントとして明記します。強み、弱みをそれぞれ書き出します。
②-6.ポジショニングマップ
業界におけるライバル会社とのポジション(位置取り)を図で表したものです。
縦横の2軸を使い、差別化でき、自社の強みを表現することに使用します。
ただし、お客さんにとって価値のあるポジションにいることが重要です。
【ポジショニングマップ成功の条件】
・多くのライバルと同じポジションにいないこと
・自社ポジションのターゲットの数が一定数いること
・自社のポジション(強み)が顧客に正確に伝わること
《ポジショニングマップの作り方》
"縦横2軸に自分のお店とライバル店を配置する"
②-7.4P
4Pは、マーケティングのフレームワークのひとつで、Product(製品) Price(価格) Promotion(プロモーション) Place(流通)の頭文字をとったものです。簡単に言うと、「どんな商品を」「いくらで」「どこで」「どうやって」売るかをまとめたものです。
②-7-1.商品(Product)
販売する商品のことです。
提供する商品を通して、顧客ニーズをどう満たすか、提供できるメリットは何かを考えます。飲食店であれば、食品やドリンクのメニューのことです。
ちなみに、マーケティングの世界では、商品とは欲求やニーズを満たす目的で市場に提供されるすべてのものである、と述べられています。つまり、物理的な者だけでなく、サービスや人材、場所、アイデアなど取引されるものをすべて含んでいます。個人商店であればオーナーの人柄、お店の空間・デザインなど全てが商品になります。
また商品を決めるとき、「プロダクトミックス」の考え方も重要です。
簡単に言うと、品揃えのことで、商品ラインの幅と、商品アイテムの深さをどうするかということです。商品ラインの幅というのは、ラインナップのことで、カフェであればドリンクや食事の種類のことです。アイテムの深さというのは、同じ種類の中でグレードやコンセプトを変えることで、例えばコーヒーというメニューの中で、色々な種類のコーヒーを置いたり、スペシャルな価格の高いコーヒーを置くことなどです。
専門店を目指すならラインを狭くしアイテムを深くする、逆に豊富な種類の商品が売り場合はラインを広くするなど、お店のマーケティング戦略に沿った商品ラインナップを考えることが大事です。ただ、ラインナップを広げると売上は増えるかもしれませんが、管理と準備が大変なのは間違いないので、バランスは大切にしてください。
《商品の考え方》
“ラインナップを記載”
“他の店舗に負けない自信のある主力商品をつくる”
“アイテムを絞る専門店か、選べる楽しさを出すアイテム量にするか”
②-7-2.価格(Price)
次に、価格の考え方ですが、価格はお客さんが支払うお金よりも商品から受け取る価値が高い、と思ってもらえる価格の設定が必要です。
お店側からすると、価格の設定次第で利益が増減します。価格を高く設定すると、商品あたりの粗利率は増えますが、販売数が減り全体の売上や利益が減る可能性があります。
価格の設定方法はいろいろありますが、おすすめの方法は以下をバランスよく考えた価格設定です。
・コスト志向:商品の原価に利益を上乗せする方法。
・競合志向:同業他社の価格を知り、それを基準として価格を決める方法。
・需要志向:消費者の心理や、需要でこれくらいはいけるだろうと考え価格を決める方法。
やはり飲食店の場合は、廃棄率も含めて商品全体の原価率を30%前後には抑えたいところです。その上で、利益が取れそうな商品は価格を高めに設定する、季節での限定メニューなどを考えるなどし売上を増やしていきます。新商品に高い価格設定をすることを上澄み吸収戦略といい、コアなファンやイノベーターには敏感に刺さります。
《価格設定の考え方》
“商圏エリア内の同業店舗の価格帯をひたすら調べて比べてみる”
“お客さんがこれなら買ってくれそう、という金額設定にする”
“その中で最大限利益が取れそうな金額設定にする”
“価格設定自体がブランディングになる、高くすると高級店・専門店に見える”
②-7-3.店舗立地(Place)
個人事業や小さいお店にとって、店舗立地は超・超・超重要です!
いくら品揃えやお店のデザインを良くしても、お客さんに来店してもらえないと売ることができないからです。
都心であれば駅から徒歩何分以内か、地方であれば人口の多い町から車でどれくらいか・駐車場は何台か・入りやすい道か・ロードサイドかなども大きく関係します。特に地方の場合は、駐車場の台数、出入りがしやすいかなどもリピートに大きく影響します。
もちろん好立地の場合は賃料が高くなるケースがほとんどですので、その固定費を回収できる売上が出せるかを考える必要があります。やはり「賃料は売上の10%以内」に賃料は抑えたほうがベターです。
また通常の店舗集客では、お店に近い住民のほうがより来店が多いと考えられます。お店を出す前に、簡単でもよいので商圏調査をし、出店検討中の場所にどれくらい人口がいるのか、同業のライバル店の客入り調査、通行量がどれくらいあるかはチェックしておきたいです。
少しだけ店舗設計に触れておくと、来店に大きく関係してくるのが外装です。外装は、お店の存在を知ってもらい、お客さんの興味を引くことができるので、店構えや看板などを工夫することで集客につなげることができます。例えば店舗の正面外観・出入り口や窓の開放感や透視度を上げることで、お客さんが入りやすくなります。高級な専門店を謳う場合は逆に開放度を下げることで高級なイメージをもたせることもできます。
《店舗立地の考え方》
“インターネットで調べるだけでなく、不動産屋さんを回る”
“自分の足で探し、直接オーナーさんに連絡する”
”可能なら家賃を交渉する”
②-7-4.プロモーション(集客)計画(Promotion)
プロモーションは、お客さんにお店や商品の価値を知ってもらい、買ってもらうアクションを促すための行動です。広告・SNS・口コミなど幅広い媒体を使って情報を伝達していきます。集客は、お店をオープンした後に最も大事な要素の一つです。
私がお店を出店する際に意識していたことは、「プロモーションの時間軸」です。時間軸は簡単にいうと、「オープン前」「オープン直後」「オープン後」の3つに分けるということです。
そこにマーケティングの世界でよく言われている「イノベーター理論」をミックスし、時期ごとにお店のことを宣伝するターゲットと媒体を分けてプロモーションを実施しました。
※イノベーター理論:サービス・商品の普及の過程を時間軸で5つの層に分類したもの
なぜこの手法を取ったかというと、今やSNS全盛期で、「口コミ」の効果が最大限活用できるからです。最近では、InstagramでのUGC(ユーザーによる口コミ)や、PtoC(オーナーから直接の情報発信)が普及し、以前よりはるかに多くの人に情報をリーチできるようになりました。
具体的なプロモーションの方法として、私が最も力を入れたのが、「オープン前のファン作り」です。
プロセスエコノミーという考え方を活用し、オープン前にInstagramアカウントとwebサイト(studioで無料)・noteを作成し、店舗ができるまでのストーリーを情報として投稿していきました。どれも無料で利用できる最強のブランディング・集客ツールです。使い分けのイメージは、Instagramで視覚訴求、webやnoteの記事でストーリー訴求、という感じです。
もちろんInstagramについても研究しどのようにすればフォロワーが増え、ファンが増えるかもテクニック的なことがあるのですが、それは今回は省きます。(プロフィールの書き方・フィード・ストーリーズ・リール投稿の棲み分けなど)
ただ大前提として、インスタは写真を綺麗に撮る、ということが必須だと考えます。お客さんにとって、初回の来店までは「映え要素」が大きく影響し、おしゃれな空間で投稿してある同じような素敵な写真を撮ってSNSアップしたい、という心理があるからです。もちろんリピーターにつなげるためには他にも必要な要素がありますが、新規客を増やすためには、フィードの投稿は綺麗な写真をとることがおすすめです。
さらにオープン前にテストマーケティングでイベントを実施することで、オープン前からファンを獲得することができます。
イノベーター(トレンドや流行りに敏感な人)は比較的関心を持ってくれイベントに参加し、その様子をSNSにアップする。その投稿からアーリーアダプター(早期採用者)に情報が届き興味を持ってもらえる、といった流れです。
オープン前からファンをつくると、キャズムと呼ばれる販路拡大への溝を超えるのは比較的平易で、初めは一気に広がります。オープン後の成長期にどれだけ差別化できる仕組みを作れるか、リピーターを獲得できるかが重要です。
またオープン後の必須作業として、「googleマイビジネス」でお店を登録し、google検索でお店の地図が出るようにすることも忘れずに行ってください。さらにMEOでエリア内で上位表示できれば、お店のことを知らない人にも検索でリーチできる可能性が増えます。
実際にこの手法がうまくいき、オープン前にお店のInstagramアカウントのフォロワーが1,000を超え、オープン数ヶ月で5,000まで伸びています。地方での結果としては上々かと思います。目安として、計画フォロワーが1,000を超えると注目を集め始め、2,000〜3,000で地域で一定の知名度になり、10,000を超えるとかなりの人気店といった感じです。おかげで当初の計画時に毎月の集客のために予定していた広告費を1円も使わずに今の所集客ができています。オープン1年でInstagramのフォローは10,000弱まで伸び、今はリピーターさんで売上を確保できてきます。
《プロモーションのヒント》
”Instagramアカウントを作成”
“インスタのプロフィールは3秒で何のお店かわかるように記載、検索ワードを意識する”
“インスタのフィード投稿はできる限りカメラマンに写真を撮ってもらう”
“インスタのストーリーズ・リールはリアル感を出す”
“簡単でいいのでwebを作成する”
“webに自身の想いを掲載する”
“googleマイビジネスに店舗を登録する”
“口コミを依頼する”
③事業規模
事業規模は、売上の規模と考えてください。
3ヵ年の売上計画(P/L)を立てておくとよいでしょう。
売上計画の立て方は、①販売計画②人員計画③月P/L④年P/Lに分けるのが、ひとつひとつわかりやすくおすすめです。ひとつずつ見ていきます。
①販売計画
どんな商品をいくら(価格)でいくつ(数量)売るか記載したもの。
売上は単価×数量で計算されます。日・月・年で分けると良いと思います。
日の売上はさらに平日と休日を分けると精度が高くなります。
②人員計画
スタッフの人件費を計算します。
社員を何人、アルバイトを何人雇い、いくら人件費が発生するか計算します。日・月・年で計算するとよいでしょう。
③月P/L
月の収支計画を表したものです。
粗利(売上ー原価)ー販管費(経費)=利益となります。
どれだけ売上を増やしても、それよりも経費がかかってしまえば赤字です。
逆に言うと、売上が少なくても、経費が少なければ利益が出るということです。計画の際は、必ず単月で黒字が出るようにしてください。
資金を借りる場合は、返済金額も忘れずに記載しましょう。
月P/Lは、楽観プランと悲観プランを用意し、悲観プラン(想定よりも売上が下回る場合)でも黒字が出ると安心です。
数値計画ですが、ざっくり売上を計画→販管費を入力→黒字になるよう売上を調整(単価もしくは数量)の順番で計画するよいと思います。
のちに詳しく書きますが、このP/L計画の数字と現金の動きは全く別です。
P/Lはあくまで計画で、実際にお金の入るタイミングと出るタイミングを考慮していませんので注意が必要です。どれだけ単月黒字の計画でも、現金がなくなればお店は潰れます(黒字倒産)。
「キャッシュ・イズ・キング」の言葉があるように、現金は最重要です。
2年目・3年目まで月P/Lを作成しておくと、事業の見通しを付けやすいです。
※損益分岐売上(月)(日)=単月と1日で黒字になるために必要な売上
※損益分岐客数(日)=黒字にするために必要な毎日の客数
こちらはテンプレートに売上と原価率を入力すると自動計算で出るようになっています。
④年P/L
年間のP/Lは、単純に月P/Lを12ヶ月分で掛け算するとよいです。
以上が事業計画の作り方です。計画作成は大変ですが、計画を立てておくと先の見通しがつきやすくなりますし、自信が出てくると思います。あとは実行するのみです!
2.創業計画書の書き方
お店の事業計画が完成したら、いよいよ創業資金を融資してもらうための創業計画書を作成します。
創業資金は全て手出しで賄う、という人もいるかもしれませんが、できれば借りれるのであれば借りていたほうが、いろいろな設備や商品開発に投資ができ、その分売上も増やせる可能性が出てくるので、借りることをおすすめします。
創業計画書は、事業計画書を作成していたら書き方はそんなに難しくはありません。内容も事業計画書から転記できる部分も多いです。
お金を貸す人(金融機関)が、この人の計画はしっかりしている、ちゃんと返済してくれそう、と思う内容になっていればOKです。
今回は、日本政策金融公庫のテンプレートをもとに作成していきます。
【創業計画書の構成】
1.創業の動機
2.経営者の略歴等
3.取扱商品・サービス
4.取引先・取引関係等
5.従業員
6.お借り入れの状況
7.必要な資金と調達方法
8.事業の見通し(月平均)
9.自由記述欄
(1) 創業の動機
冒頭に「創業されるのは、どのような目的、動機からですか。」とあるように、創業したい背景・動機を記載します。ここでのポイントは、ストーリーに一貫性があるか(オープンまでの努力が見られるか)、実績があるか、開店しても成功しそうか、という要素が盛り込まれているかどうかが重要です。要は、「この人にお金を貸して返ってくるか」を一番最初にチェックする箇所です。ただ「お店をやりたいから」「好きだから」だけでなく、きちんと成功しそうなロジックも加え、そこに熱量を乗せて書けばOKです。
(2) 経営者の略歴等
ここには実際の経歴を記入します。
ポイントは、ここでもお店の経営に必要なスキルや要素があれば記入する、と言うことです。接客の経験やマーケティングの経験など何でも構いません。過去の事業経験があれば記入してください。過去に事業経験がなくてもプラスにはなりませんが、マイナスになることもないと思います。
(3) 取扱商品・サービス
①取扱商品・サービスの内容
こちらは事業計画書で作成した商品・サービスの内訳を記入します。
売上シェアも予定を記入します。
②セールスポイント
どこがお店の売りで、どう他店と差別化し勝つか、という内容を記載します。ここは非常に重要なポイントで、この内容はなるべく多く記入し、見る人に納得してもらえる理由を記載します。事業計画書のマーケティング戦略概要や差別化ポイントから転記するとよいでしょう。
《記入のポイント》
“商品の価値(機能・情緒・金額)、お店の経験実績、ファンの数などを記入”
③販売ターゲット・販売戦略
こちらはターゲット・販売戦略をそれぞれ分けて記入します。
ターゲットは事業計画で作成した「誰に(エリア・年代・思考・性別など)」「どのように(アクセス方法・購入方法・金額設定など)」を記入します。販売戦略は、事業計画で作成したプロモーション計画を転記します。
④競合・市場を取り巻く状況
こちらも事業計画で作成した5フォースをそのまま転記できます。
ただ状況を記載するだけでなくその上でどうライバル店より優位性を築いていくかまで記載しておくとなお良いです。
(飲食店例)コロナ禍で巣ごもり需要が多いため、テイクアウトなどをSNSでプロモーションし、店舗の認知を広めていくなど、時代の変化に合わせた商品や販売方法を実施していく
(4) 取引先・取引関係等
①販売先
一般消費者が対象であれば、「一般個人(20~40代の〇〇に住む人)」などでOKです。法人も対象になる場合はそちらも記載します。回収方法が現金の場合は「即金」と記入します。
②仕入先
原材料の決まった仕入先があれば記載します。
(5) 従業員
初年度から従業員を雇う場合は人数を記載します。
(6) お借り入れの状況
借り入れの状況を記入します。仮入れ残高が多い場合、融資金額に影響が出る可能性があります。
(7) 必要な資金と調達方法
この表は実は企業の貸借対照表(B/S)と呼ばれる、お店の資産(設備や現金)と負債(調達方法)を表したもに似ている表です。書き方は、資産の使い道を左側に記載し、お金の調達方法を右側に記載します。
必要な資金(資産)と調達の方法(負債)の金額がちょうど一緒(バランスする)になります。
まず設備資金はお店の工事や什器購入に必要な資金を記載します。
続いて運転資金は、オープン前準備とオープン後に必要な運転式を記載します。
資金の調達方法は、自己資金や親族知人からの借入・日本政策金融公庫からの借入・他の金融機関からの借入を記載します。ポイントは、自己資金は多ければ多いほどいいですが、全て自己資金を投入するのではなく、借りれるのであれば金融機関から借りていた方が運転資金や設備の投資ができる、ということです。現金がなくなってしまって際に追加の融資が下りなければ倒産の可能性もありますので、手元に現金は残しておく方がベターです。
(8) 事業の見通し(月平均)
創業当初の部分には販売計画で作成した月の売上計画(P/L)を転記します。
1年後の部分も同様に作成した2年目の月計画を転記すればOKです。
右の売上・原価・経費の根拠記載欄には販売計画と月の売上計画(P/L)の販管費部分を箇条書きで転記すればOKです。
(9) 自由記述欄
「事業計画書は別添」と記載でOKです。
3.売上計画(P/L)・資金繰り表(キャッシュフロー)の考え方
ここまで事業計画書と創業計画書の書き方をまとめてきました。その計画の中で、やはりお店を継続的に経経営していくという点で大事なことが、お金の計画です。実施にお店をオープンすると、毎日お金が出入りし動きます。お金の動きの中でもやはり最重要なのがキャッシュで、現金が最も大切です。毎月の売上があっても、現金が足りずに支払いが滞れば、お店や会社は潰れてしまいます。
お店を潰さないためには、毎月の売上と資金繰りの計画・管理をしっかりとすることが大切です。要は、たとえ売上が少なくても、支出も少なければ利益は残るということです。逆に売上が多くても、それ以上の経費がかかれば赤字です。
何にいくら使っているのかを正しく把握し、損益が0になる売上を理解し、毎月の利益が残る計画をしましょう。そして、売上と現金の動きは違う、ということも理解して、必ず手元に現金が残るように経営することが大切です。経営の世界では、「売上の計画は意見・現金は事実」という言葉もあります。
不測の事態に備え、最低でも3ヶ月分の支出を賄える現金があると安心です。やはり最大の敵は固定費(賃料・人件費など)なので、計画で固定費をどれだけ抑えて毎月の支出を少なくできるか、その上で売上を最大化できるかが経営のキモとなると思います。
売上計画と資金繰り(現金の出入り)を正しく把握することで、対策を早めに取ることができます。
4.まとめ
長くなりましたが、お店を継続して経営するためにはそれだけの計画と準備が必要です。決して勢いだけで開業はしないようにしてください。運が良くてたまたま上手くいくこともあるかもしれませんが、失敗するときには必ず理由があります。プロ野球の故野村克也監督も「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」と言っています。負けるときは負ける理由があって負けています。勝つための戦略をしっかりと計画し、その計画を地道に実行することが成功への一歩だと思います。一つでも多くのお店が長く愛され続くことを願っています。
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