『聖戦士ダンバイン』の植生に目を奪われた話 [週一で書くアニメコラム]
自分で言うのもアレですが、僕はやたらと植生にうるさい。アニメを見ていても、やたらと生えている植物に目がいってしまいがちだ。
そのせいで、こと“異世界”が登場するアニメを見ていると、背景にかなり集中力を持っていかれがちだ。そんな僕がこれまでに見てきた“異世界”で一番好きな場所、それが「バイストン・ウェル」である。
「バイストン・ウェル」は『聖戦士ダンバイン』に登場した、海と陸の間にある世界。その植生は一見僕らの住む世界にようで、どこか違った趣も持っている。
まず、本作の物語開始早々に僕らの目に飛び込んでくるのは、天に向かってどこまでも伸びる海藻状の植物だ。僕らの常識からは逸脱した形状の植物が「ここは異世界ですよ!」というのを明確に提示してくる。冒頭からワクワクさせられる。
そしてこの異世界が、どうやら僕らの住む世界とあまりにかけ離れていないと思わせてるシーンが続く。第一話「聖戦士たち」、バイストン・ウェルに転送されてきた主人公ショウ・ザマたちが馬車に乗せられて移動するシーン、その背後に生えるのは濃い緑と三角形の形状が印象的な針葉樹。東京に住む僕にとって見覚えがありつつも、そこまで馴染みのない植物だ。
どうやらここは、僕らの常識から逸脱しない範囲の異世界だろうと感じられる。この世界に住む人たちとは意思疎通ぐらいならできそうだな、と。
そして、この植生は、僕たちとはかけ離れた存在が登場した瞬間に異なるものとなる。第9話「天と地と」にて水の国に突入するショウ・ザマ一行、彼らがそこで出会うのは全くもって異なる価値観で生き、話し合うことすら困難なジャコバ・アオンだ。そこに存在する植物も、僕らの常識からは逸脱した、青みがかった紫になる。これだけ生きる環境が違えば、持っている常識も違うだろう、反射的にそう思わせてくるのだ。
そこに住む人が、どれだけ自分達と近い存在なのか。それは住む環境からも幾分か推測できる。それを背景の植物で語りかけてくる『聖戦士ダンバイン』、今見ても明確に面白い作品だと思うのであった。