
『李禹煥 他者との出会い 作品に見る対峙と共存』ジルケ・フォン・ベルスヴォルト=ヴァルラーベ(水沢勉 訳)
国際的に活躍し、高い評価をうける美術作家、李禹煥、
その作品と長年向き合ってきた著者が、他の作家との比較によって現代美術の文脈の中に李の仕事を的確に位置づけ、理論的に分析したのが本書である。
あざやかで、エレガントな李禹煥論。
著者はドイツの美術史家で、本書は著者の博士論文が基になっている。というわけで、かなり理屈っぽくこむつかしい。
李自身の著作『出会いを求めて』が、李の主観的な創作理論だったのに対し、本書は、他のアーティストの作品と比較しつつ、李の作品を受容する側からの理論的な考察となっている。
個々の比較については、正直比較して何を見出したのかよく掴めないものもある(もちろん読み手の僕の読解力の問題)んだけれど、李の個性や特徴をくっきり浮かび上がらせるところもあって、面白く読めるところも多い。
結論としては結局、李の作品は、ものともの、人ともの、人と人、そんな様々な出会いの場であるという、『出会いを求めて』をなぞっただけのような気もする。ただまぁ、それを主観的ではなく、比較論として客観的に確認したのが、この本の特色なのかなと思う。
李禹煥その人、その作品のみならず、比較のために召喚されるアーティストや作品たちも興味深いものが多い。モンドリアンやセザンヌなんかも引っ張り出されてます。