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icchan
2024年2月18日 13:00
新潮から出た随筆集シリーズの掉尾を飾る一冊。1974年以降に書かれた随筆を集めて、1978年刊行、翌年には福永は黄泉の河を渡ってしまったので最晩年の作品となった。収められた文章にも、体調の優れないことと、小説を書いていないことが繰り返し述べられている。とはいえ、文章の調子は決して暗く沈んではおらず、身辺雑記から腰の入った文芸批評まで、闊達で品のある筆さばきは円熟としか言いようのない味わい。
2024年2月16日 19:33
福永武彦の随筆集シリーズ5巻目。タイトルにもあるように、書物や作家にまつわる文章を蒐めた一冊、しかしながら後記で説明(言い訳?)しているように、純粋に随筆として書かれたもの(Ⅰ章)は尠くて、一冊の本に纏めるために推薦文(Ⅱ章)や書評(Ⅲ章)が集められいる。短いながらもその本の魅力を掬い取るために腐心した書評も福永の審美眼を感じさせて興味は尽きないが(「ここに挙げた書物はおおむね良書として私が推
2024年2月13日 22:07
新潮から出た六冊の随筆集シリーズの一冊。このシリーズを読むのは三冊目だけれど、どれも福永武彦のリラックスした雰囲気が感じられて、とてもこの作家を身近に感じられる。驚いたのは、結核の療養所で、後に結城昌治になる男性と交流があったという話。清瀬市のサイトにはそのことについて説明があり、結城昌治がその頃のことを綴った随筆が引用されている。有名な話のようだから、知らずに驚いたのはこちらの無知を