『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』【2】私版
【2】社会人になってから、学生時代の友人となんとなく疎遠になり、プライベートの時間を1人で過ごすことが多くなってきました。新しい友だちを増やしたいと思うのですが、友だちの作り方が思い出せずに困っています(20代)
この悩みも、長く独身でいると必ずぶち当たる問題です。
そうですね私の場合は30代半ばくらいまでは、それでも大学時代の友人がまだ独身だったりしたので、1か月に1回くらいは会って喋ったりしていたので、それほど気にしていませんでしたが、40代になったら気楽に会える友だちは誰もいなくなっていました。
それでもなんだか日々仕事に追われていて、そして誰もいなくなった状態も直視していませんでした。そのうちジムの土日会員になって、挨拶を交わしたりしているうちにたまに遊びに誘ってもらったりして暮らしています。
これが、この項で吉本さんが書いている「できたスペースに新しいものが入ってくる可能性は高い」ということなのかもしれません。
さて、この項の冒頭で吉本さんは「急に友だちが減ることはないと思う。実はじわじわと減っていたはずです。その道を丁寧に戻ることが大切。それは疎遠になった人と再び会いなさいということではなく、自分自身を取り戻す作業」と書いています。
吉本さんが言わんとしているニュアンスとは違うのだと思いますが、この夏、私の中学、高校時代を彩ってくれていた友人のことを思い出して、連絡をしたという事象がありました。
私はいつも自分のタイミング、自分の感情、自分の狭い世界で生きている気がしたのです。
例えば中学1年の時、出席番号が前後だったSは、中学に入学して誰とも話そうとしなかった私に話しかけてくれたのに、神田うのさんと梅宮アンナさんを足して3で割ったくらいの感じにちょっと腹を立てて、2年の時、私が勝手に話すことを辞めたり(その後、また仲直り)。
彼女の社会人になってからの自由な生き方を受け入れられなかったり、彼女が自分の道を見つけて進んでいるのに、あなたは研究者っぽくないとひどい言葉を放ったり。それは私の理解度が低いせいなのに、自由な彼女を批判してばかりいたこと。
思えばいつも私が冷たく突き放していた気がします。
とても自由な考え方を持った彼女を、友だちなのに全然理解でいていないどころか、いつも心のどこかで「あの子って本当に変わっている」と思っていたのです。
いつの間にか、LINEのアイコンが子どもの画像に替わっていて、それも気になっていたけど、なかなか連絡ができませんでした。
私の都合で、彼女を突き放すことばかりしていたから、結婚したり、出産したことすらも知らせてもらえない関係になってしまったことを感じていました。それは私が蒔いた種。
せめて、アイコンにまつわることだけは聞いて、さらなる新しい道に進んでいることに言葉をかけたかったので、連絡をしました。
再婚して、子どもが生まれたということでした。そして今は地元に戻っているということでした。
話しているうちに、中高時代の友人(私は全然仲良くない子)と最近ではよく連絡を取り合っているということでした。それでちょっとほっとしている自分がいるようにも感じ、それで会話を終えました。
今どうしているのか分かっただけでいいのです。
そう思っていました。そのあと、この本の「自分自身を取り戻す」に通じるのかもと感じています。
聞きかじった知識で人をジャッジしている自分の傲慢さを、感じるに至っています。
Tのことも思い出していました。
私が浪人をしていた時、一足先に大学生になったTによく手紙を出していました。近くに住んでいるのに。当時は今のようにスマホも持っていませんでした。
Tはとにかく結婚したがっている人でした。
社会人になってから大失恋して、私はその相手の男性のことを薄っすら知っていたので、そんな人と結婚しなくてよかったんだよと心底思っていましたが、当時の彼女は聞く耳持たず。
そのうち、別の人と結婚しました。
私は忙しかったのかなんなのか忘れましたが、彼女の結婚式を欠席したんですね。それがなんでだったんだろうと今も後悔しています。
なぜ大切な友だちの結婚式を欠席したのだろうと。
そう考えると、友だちの結婚式を欠席したことはTに限らずあったことを今更後悔しています。
こんな薄情なことを公開しなくてもいいのですが、これから先、薄情なことをしないために、書き留めておきます。
Tとはたまに近況を連絡する仲です。
昔は週1くらいで手紙をやり取りしていたのに、LINEのような利器を持ち合わせているのに、さほどやり取りをしない。
久々に連絡をして、お互いのワクチン接種状況やその副反応でおばさんになったという他愛のない話をひとしきりしました。
これもこれでいいのだと思います。
私って傲慢でさ、ホントごめんみたいな感じだと、これこそ本当に傲慢なので、さすがにそれはしていません。
ずっと同じ関係でいることはできないけど、あなた達は私の人生を彩ってくれた大切な人だということを私なりの方法で表現していくしかないのだと思います。
だって、Tが生物のテストで誤答したあのフレーズを思い出しては、私は今でも震えながら笑うことができるのだから。