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キャリアプラン、あなたの未来を輝かせる


はじめに

IBM UX Communityを愛してくださる読者の皆様!

こんにちは。
お久しぶりです。
IBMのUX Designer兼Business Technology Leaderのヒョンミンです。

IBMに中途入社してから早くも3年になりました。
Lead UX Designerとして入社し、今はUX Designerを超えBusiness Technology Leader、Squad Leaderを兼務しています。

IBM入社前は、UXデザイナー及びチームマネージャーとして「ユーザー」、「内部ステークホルダー」を対象に「プロジェクト推進」、「UX/UIデザイン」、「リサーチ」、「メソッド活用」、「メンバー育成」、「チームマネジメント」を経験してきました。

IBMでは「顧客」、「顧客の顧客」、「内部ステークホルダー」、「外部ステークホルダー」に向けた働きが必要とされ、それに伴い求められる力量が、「プロジェクト推進」、「UX/UIデザイン」、「リサーチ」、「メソッド活用」はもとより「ビジネス検討」、「顧客提案」、「リレーションシップ」、「案件獲得」、「Squad Leader」など、UXデザイナーの枠を超え「ビジネス」、「コンサルティング」、「セールス」の領域まで幅広くなったわけです。このように、応えるべき期待や果たすべき役割に変化があったとき、僕はその都度、自分自身のキャリアをデザインする時間を持つことにしています。これからいかに成長していくべきか、自分のスキルを通じて描いてみる作業です。

今回は内容そのものは公開できない部分が多いため、仮の事例を挙げながらではありますが、いかにキャリアプランをデザインするのか、その意義とは、そんなことについて紹介できればと思います。
このプロセスは今まで僕がチームマネージャーになった時メンバーを対象に実施したり、他部署メンバーにも横展開してきたものです。個人的にも定期的に実施することによって自分自身を振り返ってみる時間をしっかり持つことができるので、チームマネージャーはメンバーと、メンバーは個々人でぜひキャリアプランを実施してみるのをお勧めします。

※ この記事はチームマネージャーの観点が含まれたプロセスですが、自分自身を振り返る場合にも全く問題ないため記事を最後まで読んでいただき、ぜひ実践してみてください!

キャリアプランの目的

キャリアプランを作っていくことは、メンバー本人だけでなく、メンバーを率いるチームマネージャーやチーム全体にもポジティブな影響を与えることができます。
素早く変わっていく環境の中で、自分自身の方向性がずれていないか、いま必要とされる力量は何か、どの部分が足りないのかなど、現状やこれからを把握・再整理できます。

ただし、単純にキャリアプランのテンプレートを埋めるだけになってしまうとその意味が失われ、方向性を見失う恐れがあります。そのため、メンバーのモチベーションを維持するためにも、明確な目的を定義する必要があります。例えば、次のような目的が考えられます。

<メンバーの目的>
・自己分析を通じてキャリアを設計する
・シビアな基準で「本当の自分」を理解する
・短期/中期/長期的観点で計画的な経験や挑戦を設計する

<チームマネージャーの目的>
・各メンバーのキャリアプランを元に効果的なアサインを行う
・メンバー&サービス成長や目標達成のWin-Winな関係を構築する
・各メンバーのキャリアの方向性を理解する
・人材が足りない領域を把握し、採用計画に活用する

TIP. 進行途中で目的を見失う可能性があるため、随時チームで目的を共有しながら共通認識を持ち続けることが重要です

効果的なキャリアプランをデザインする

次は効果的なキャリアプランをデザインするためのプロセスです。

キャリアプランのプロセス(@hyunmin ver)

基本的に「自己分析」、「計画構想」、「適合性確認」はメンバー個人のワークとして進め、都度1on1を通じてチームマネージャーと深掘りしていきます。
キャリアプランが完成したら、チーム内やマネージャーなどに宣言と共有を実施します。
キャリアプランを意識しつつプロジェクトやチーム活動を進め、定期的な振り返りを通じてプランを改善していきます。

自己分析
最も多くの時間を使って「本当の自分」をシビアに理解・評価し、現在の自分の位置を把握します
計画構想
自己分析を通じて出たインサイトを短期・中期・長期的な観点で羅列し、どのようなアクションを取るかを判断します
適合性確認
プロジェクトとチームの成長・成果に繋がる計画なのかを「SMART」で適合性を確認します
宣言&共有する
各自の宣言を通じて実践のモチベーションを維持できるようにします
振り返り
定期的な振り返りを通じて進捗と課題を確認し、計画を見直します。メンバーとの1on1の時間を活用すると効果的です

1. 自己分析

まず、自己分析から始めましょう。自分自身について良く分かっていなかったり、逆に過大評価をしていないでしょうか。自分自身を明確に分析・言語化し、自分ならではの基準点を見つけてみましょう。
ただ単に答えを出すのではなく、「なぜ?そうなのか?」に対する理由・原因などを深く考え、本質的なヒントを見つけるようにしましょう。

TIP. 本人の立場から作成していくことなので、気づいていなかったり、意識していない部分があると思います。チームマネージャーは1on1で深掘りし、メンバーが深く考えられるようにヒントを与えることが重要です

STEP01. 価値観

自分の過去から未来まで考え、価値観を言語化してみましょう。

<ヒントになる質問>
・仕事をする際にどの面でやりがいを感じているのか?
・仕事において自分ならではの楽しさ、幸せは何なのか?
・最近(1年以内)、自分自身が最も成果を出したプロジェクトは何なのか?
・自分は他のメンバーをリードする立場なのか?サポートする立場なのか?
・難しい問題にぶつかった時、どういった気分になるのか?
・安定した仕事か、変化の大きい仕事、どちらが好きなのか?
・リスクのある仕事をどう考えるか?
・仕事において最も重視することは何か?
・年収、プロジェクト、ワークライフバランス、業務環境、社風、人間関係など自分なりの優先順位はどうか?

STEP02. 理想的な自分の姿

価値観を言語化し理解できたら「理想的な自分の姿」について考えてみましょう。自分はどのような立場になってどのような人になりたいですか?また、その姿は自分が最も求めている姿ですか?

<ヒントになる質問>
・現在、自分の業務や職種に満足しているのか?満足度はどうか?
・これからどのような業務と職種に携わりたいのか?
・どのような面で自分ならではの専門性を持ちたいのか?
・どのグレードあるいは肩書きを目標にしたいのか?
・スペシャリストの道を歩みたいのか?
・マネージャーの道を歩みたいのか?
・チームの結束力を持たせる役割を担いたいのか?
・目標とする年収はいくらか?
・自分が理想とする人物は誰か?

STEP03. 自分の力量把握

「理想的な自分の姿」について理解できたら、その姿に至るためにどのような力量が必要なのか、何が得意で何が不得意か、その課題を乗り越えられるのか、その勇気はあるのか、などを考えてみましょう。

このとき、ハードスキル(Hard Skill)とソフトスキル(Soft Skill)に分けて、自己評価と分析を行うことが重要です。
現在持っているスキルや、将来の理想の姿を実現するために必要なスキルをリストアップしてみましょう。

ハードスキル(Hard Skill)
業務遂行に必要な専門的な技術、知識、経験、能力など
ソフトスキル(Soft Skill)
業務遂行とその他の必要なコミュニケーション、リーダーシップ、チームワークなど

下の図を見てみましょう。力量把握の最終アウトプットです。

2x2マトリックスに当てはめた例

このイメージのように、最終的に「上手・下手」、「好き・嫌い」の2軸を使ってマトリックスに配置していきます。
自己評価が多くなるため、偏りや過大評価の可能性があります。過大評価が起こると、「右上に集中」し、「左下が空く」結果が出るかもしれません。そのような場合は、再度客観的に見直してみることが重要です。

<ヒントになる質問>
・自分が最も上手なことは何なのか?
・上手と思っているスキルで成果を出しているのか?
・上手と思っているスキルが周りと比較してどうなのか?
・下手なことは何なのか?
・経験できていないことは何なのか?
・経験した方がいいと思うことは何なのか?
・幸せを感じる部分は何なのか?
・改善するために必要なスキル・経験は何なのか?
・能力を得るために必要な環境は何なのか?

次のテンプレートを活用して評価すると判断に役立つと思います。

STEP03-1. 各スキルについて「上手・下手」を俯瞰的に評価する

自分自身が羅列したハードスキルとソフトスキルの状態を俯瞰的に評価し、「能力評価の4段階(@hyunmin ver)」で明確にしてみましょう。
上の最終イメージでいうと横軸を構成するステップです。

<能力評価の4段階> ※「学習の4段階」を応用した概念
無意識的無能力
スキルの認知や理解がなく、業務として遂行する能力がない状態
意識的無能力
スキルはある程度理解しているが、業務として遂行する能力がない状態
意識的能力
スキルを理解しており、ある程度の業務経験はあるが、遂行するのに工数が必要な状態(場合によってはサポートが必要)
無意識的能力
スキルを深く理解しており、多くの業務経験を通じて成果も出していて、適材適所に応用・活用ができるのはもちろん、他者の育成が可能な状態

【表1】能力評価の4段階の例

【表1】のように、羅列したハードスキルとソフトスキルごとに当てはまる段階をチェックして、点数をつけましょう。

STEP03-2. 各スキルの実績にフォーカスして評価する

今度は俯瞰的に見るのではなく、スキル一つ一つの実績にフォーカスして評価してみましょう。各スキルについて今までの❶経験や❷成果を振り返ってみます(下【表2】)。
次に、【表1】で実施した「❸能力評価の4段階」の点数を横の列に転記します。
さらに、より明確な評価のために❹他人評価(任意)も実施して記入してみましょう。
他人評価は、協業したメンバーやチームマネージャーの評価を取り入れることで信頼性が高まると思います。
その上で、各スキルに対する最終的な❺総合点数を記載します。

<STEP03-2のポイント>
経験
業務としていかに多様なケースを経験したか、多くのプロジェクトに参加したか?
プロジェクトに対する自分の役割や活用スキルの貢献度はどうなのか?
成果
参加したプロジェクトの成果はどうだったのか?
自分の役割や活動スキルを通じて成果を出せたのか?
能力評価の4段階
俯瞰的に評価した点数を記載
他人評価(任意、あればバランスが良くなる)
周りから見られる評価はどうなのか?
例)
・ビジネスモデル検討 ➡︎ 企画者、ディレクター
・顧客提案 ➡︎ 企画者、営業
・UIデザイン ➡︎ UIデザイナー、UXデザイナー

【表2】「上手・下手」のフォーカス評価の例

STEP03-3. 「好き・嫌い」を評価する

次に、最終イメージの縦軸を構成するステップに移ります。
今までの経験や、これから遂行していく内容への期待や幸福度の観点で、各スキルについてどの程度好きであるかまたは嫌いであるかについて評価してみましょう。
その際その評価に至った理由も明確にしてみましょう。

【表3】「好き・嫌い」の評価の例

STEP03-4. マトリックス分類

【表2】の総合点数と【表3】の評価を使って「力量」をリスト化し(【表4】)、2x2マトリックスに分類しましょう。

【表4】2軸で評価した最終リストの例

評価したスキルをマトリックスにプロットする
「上手・下手」、「好き・嫌い」の観点で評価した点数を元にマトリックスにプロットします。プロットしたスキルを見て、評価結果として正しいか改めて判断してみましょう。

適性及び成長分析
マトリックスの各領域を「趣味」「職務」「忍耐」「削減」の4つの領域に分類し、自分自身の適性や成長の可能性を総合的に判断しましょう。

2x2マトリックスに当てはめた例(再掲)

❶趣味
専門性と経験が不足しているが、大きな興味を持っているため、経験を積んでいくことで「職務」に移せる可能性が大きな部分
職務
専門性と経験を持っていて、自信があり好きな分野にもなるため、専門性をさらに高めていく成長の可能性が大きな部分
削減
専門性と経験が不足していて、大きな興味も持っていないため、職務において減らす必要がある部分
❹忍耐
専門性と経験は持っているが、大きな興味を持っていないため、職務に移すか判断が必要な部分

2. 計画構想&適合性確認

STEP04. 短期・中期・長期的な計画の適合性を確認す

計画の例(黄色は下記の【表5】の事例に利用)

自己分析結果を元に、実践できる環境とチャンスを把握し、実施プランを短期・中期・長期的な戦略で細分化しましょう。
上記の「計画の例」はあくまで例なので、さらに月々まで詳細化しても問題ありません。
抽象的だったり見通しのたたないプランにならないように、「SMART」のフレームを活用して適合性を確認し、プラン実施のタイミングや優先順位をつけましょう。

<SMARTで適合性を確認する>
S
pecific(具体性)
計画が具体的であるかどうか?
Measurable(測定可能性)
量的または定性的な測定が可能かどうか?
Attainable(達成可能性)
目標が実現可能なものであるかどうか?
Relevant(関連性)
目標が企業やサービスの目標と関連しているかどうか?
Time-bound(時間枠)
適切な期間内に目標が達成できるかどうか?

例)
「顧客提案」の経験を積みたいと思う(長期プラン)
PLAN01. 2024年9月までに、案件獲得率を10%増やす(中短期プラン)

【表5】SMARTを活用した適合性確認例

細分化した実施プランを「SMART」に当てはめて詳細定義ができるか検討しましょう。検討時点で情報が足りなく即時判断ができない可能性もあります。その場合、適合性に「▲」を入れて懸念点や確認事項をメモし、克服可能かどうか検討しましょう。
全てが「●」にならないと実施できないわけではなく、どこまで許容範囲なのかを判断して実行可否や優先順位を判断すれば良いです。

3. 宣言&共有する

STEP05. 宣言&共有を通じてポジティブなアウトカムへ

キャリアプランをデザインしても、しっかり意識して活用しないと意味が失われてしまいます。深く考えながらデザインしたものなので、常に意識できるようにし、モチベーションを維持できるように作成者が他者に宣言するのが効果的です。

A. チーム内向けの宣言(メンバーが共有実施)
各メンバーがそれぞれのキャリアプランを描く過程で、どのような価値観のもと中身を考え、どのアクションを行うことにしたのかを宣言してもらいましょう。メンバー間での理解が深まり、同じ、もしくは似ている方向性のメンバー間での協業シナジー効果にもつながります。

B. 上位マネージャー向けの宣言(メンバーが共有実施)
チームマネージャーだけでなく、さらに上位のマネージャーとの2on1の機会を作り、各メンバーが考えている成長や経験について認識してもらうように共有します。また、メンバーは上位マネージャーに宣言してもらうことでモチベーション維持や責任感を持つことに繋がります。

C. 他チーム向けの共有(チームマネージャーが共有実施)
他チームへの共有により、チームとしての活動が認められ、メンバー個々人の努力についてもアピールできる機会になります。また、横展開することで他チームの見本にもなり、チームの結束力やモチベーション維持に繋がります。

上記の3つ以外にも、「コミュニティの記事執筆」「社外イベントでの発表」「社内勉強会への登壇」など、多様な宣言&共有の仕方がありますので、チーム内で議論して決定しましょう。

4. 振り返り

業務の忙しさに追われると、キャリアプランを放置したままで活用できない恐れがあります。1on1など定期的な振り返りを通じてキャリアプランの進捗を確認し、メンバーが計画している成長や経験ができるように支援する必要があります。
注意すべき点は、キャリアプランは立てたその時点のプランに過ぎません。プラン通りにしっかり実行することが重要ではなく、メンバーと議論しながら変わっていく状況に応じ柔軟に修正していくことがポイントです。

さいごに

キャリアプランの立て方や考え方についていかがでしたか?
キャリアプランはメンバー一人ひとりのことをしっかり理解できますし、十分な個人ワークやコミュニケーションを通じて進めることで、自分自身を見つめ直すこともできます。また、デザインしたキャリアプランをチームビルディングに活用することができ、チームメンバー間の理解やメンバーとマネージャー間の理解、シナジー効果も期待できます。ぜひチーム内で、もしくは個人でキャリアプランデザインを行ってみてください!

キャリアプランのテンプレート
キャリアプランのテンプレートは、準備ができ次第、この記事にアップします。お知らせを希望する方はこちらのフォームにメールアドレスを送っていただけると幸いです。

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※当アカウントで発信する情報は会社を代表してのコメントではありません。

キム ヒョンミン(Hyunmin Kim)
UX関連やチームビルディングなど、様々なテーマで講演を行っています。
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