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心理学から学ぶ “自殺”

“自殺”…説明するまでもなく自ら死を選ぶことを言います。

 最近では芸能人の自殺、いじめによる自殺、パワハラでうつになり自殺…などニュースでよく耳にするため心を痛めている方も多いのではないかと思います。

 本当の原因は本人にそかわからないことですが、第三者の目線から見るとやはり“他人からの悪意”により追い込まれ、自ら死を選んでしまうことが多いように感じます。

今回はそのような状況に追い込まれた時、“踏みとどまる人”と“踏みとどまれない人”の違いについて話していきます。


■自殺に至るプロセス

 他人からの悪意や生きていることが辛い状況に陥った時に自殺を考え

実行してしまう人



踏みとどまる人

がいます。

このたった二つの選択の違いにはどのような背景があるのでしょうか?

①うつ病をはじめとする精神疾患の重症度

 自殺を考える人はほとんどの場合精神科で診断がつくレベルのうつ状態にあります。

 WHO(世界保健機関)が公表しているデータによれば、自殺者の約97%が何らかの精神障害の診断がつく状態であったことが分かっています。

 そのうちの約3割を占めるのが、うつ病を含む気分障害
その他
薬物やアルコール依存などの物質関連障害
・統合失調症

・パーソナリティー障害

などの診断が多くなっています。

 これらが自殺に関連する4大精神疾患といわれています。

 また、これらは主たる診断の統計で、重複診断も含めると、自殺者の約7割がうつ病の診断がつく状態であったという報告もあります。

しかし人が自殺に至るまでには一定のプロセスがあり、ある日突然うつ病を発症するわけではないし、うつ病を発症したすべての人が自殺するわけでもありません。

そこには“何らかの出来事”(ライフイベント)をきっかけにうつ状態になり、「トンネル・ビジョン」と呼ばれる心の視野狭さくが起こっています。

 この状態が数カ月も続いていくと、さらに視野が狭くなり

「私はもう死ぬしかない」

という気持ちに追い込まれて自殺のプロセスが進行していきます。

 冷静な第三者が客観的に見れば、その人が抱えている問題を解決する方法はあるはずなのですが、本人には“”以外の選択肢が見えなくなってしまう というプロセスを表したのが、下記の図です。

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※張賢徳さん作成の図を基に編集部が作成
図を見ていただくと分かるように、うつ状態にあるときに家族や友人、職場の仲間などから適切なサポートを受けられれば、トンネル・ビジョンを脱することが可能です。また、最終段階では先ほどお話ししたように、うつ病などの精神疾患の診断がつくレベルのケースがほとんどですので、精神科での治療やそこにつなげるサポートが必要になってきます。つまり、適切なサポートの有無も自殺をするかしないかの選択につながるといえます。


 ここでもう1つ重要なのは、自殺を考え、実行してしまう人踏みとどまる人の違いには、精神疾患の重症度のほかに、個人のパーソナリティーが大きく影響するということです。

■無宗教(信仰の薄い)の国は自殺率が高い


さまざまな宗教の中には自殺を罪とする宗教もあります。
そのような信仰を持つ人は自殺を思いとどまれる可能性が高くなります。

 これについてもWHOがデータを公表しており、世界の国や地域の自殺率を宗教圏別にまとめたデータがあります。

 これによると無宗教と見なされる国や地域の自殺率が圧倒的に高く、
次いで
・仏教
・キリスト教
・ヒンズー教
・最も低いのがイスラム教
の順になっています。

 自殺というデリケートな死因のため、そのすべてが報告されているわけではないとは思いますが、教義で明確に自殺を禁じている宗教圏では自殺率が低くなっています。

一方で、無宗教の次に自殺率が高い仏教は自殺を明確には禁止しておらず、「極楽浄土」「輪廻転生」などの思想から、自殺を誘発する懸念があることが指摘されています。

 特に日本に関しては、無宗教もしくは仏教の方も多く、自殺を含めた生死に関する文化・社会通念にも、自殺を誘発しやすいベースがあると考えられます。

 この生死に関する文化・社会通念が、自殺に対する心理的な閾値(いきち)に最も影響するのではないかと思っています。

 例えば、時代劇などで切腹のシーンがあるのを見たことがあるのではないでしょうか?
これも自殺の一種ですが、美化された描写が多く、自死に対して罪悪感よりむしろ自死をもって責任を取ることへの称賛憧れのような気持ちを抱くことがあります。

 そうしたいわゆる「切腹文化」の名残が、自殺に対する心理的な閾値を低めているように思うのです。

■さいごに

 日本では自殺に対して、「そうなってしまったことは気の毒だけど、最終的には本人が決めたことだから仕方がないよね」という考えを持つ人が少なくありません。

 しかし自殺者のほとんどは精神科で診断がつくレベルのうつ状態になっており、通常時では考えられない程に物事を考えられなくなっています。

一時期「死ぬくらいなら会社辞めればいいのに」という言葉がありましたね。本当にその通りです。

しかしうつ状態の人はその判断ができない程に思考力が低下してしまっているのです。

 冷静で客観的な判断ができなくなっているので本人が冷静に自殺を決意したわけではないことが多いです。

ネットでの誹謗中傷や理解のない人のほんとになにげない言葉が自殺へ最後のひと押しになってしまうことがあるのです。

だからこそ自殺を決意してしまう前に、サポートすることが重要になります。

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