いろんな野菜を 《家で育てる》 (Farm at Home) ことで、身近な自然と触れ合う心豊かな経験をする (大変な状況のなかでの暮らしのヒント)
今日紹介するのは、いろんな野菜を《家で育てる》(Farm at Home)というものです。
家にこもりがちな最近、必要最低限の買い物と、ちょっと周囲を散歩をするくらいしか、なかなか家の外に出る機会がないのではないでしょうか。
外出できないから、家の中にいるしかないですよね。
でも、もしかしたら、私たちは、「家の中」か「外出」かという二分法で考えてしまいがちなのかもしれません。
よくよく考えてみると、「家の中」か「外出」の間に、家の一部だけれども屋外でもあるという「間のスペース」があることに気づきます。
庭やベランダなどが、そのような「間のスペース」です。
この「間のスペース」が、いまのこの状況のなかで価値を見直されるべき、とても大切な空間ではないでしょうか?
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そこで、今回おすすめしたいのが、この「間のスペース」(庭やベランダ)で野菜を育てるということです。
「家庭菜園」と言うと広い庭をイメージするかもしれませんが、ベランダのプランター(植木鉢)でも十分育てられます。
土だって、培養土が袋詰めで売られていてるので、大丈夫。
苗や肥料、培養土は、園芸店やホームセンターで売っていますし、オンライン(Amazonや楽天など)でも売っています。
僕はいつも園芸店で(そして、たまにホームセンターでも)買っているのですが、そういうところでは、そのときどきに植えるべき苗が並んでいます。
オンラインで買うなら、ちょっと検索するだけで、時期や育て方について簡単に知ることができるでしょう。
難しい知識や事前知識はいりません。
土と肥料をまぜ、苗を植え、水をあげれば育ちます。
ごくシンプルで簡単な話です。
おすすめは、種からではなく、苗から育てるということです。
種からの場合は時間がかかるし、たくさん撒いて間引く、みたいなことが伴います。
苗なら、植えたい位置にずばり植えられますし、何よりもすでにそこまで育っているので安定して育てやすいのです。
ですので、まずは苗から育ててみましょう。
もうひとつのおすすめは、いろんな種類の野菜を並行してつくってみるということです。
もちろん、スペースとの兼ね合いはありますけれども。
いろいろな種類を育てるメリットは、日々、いろんな変化を味わうことができるということです。
昨日はこちらの芽が出て、今日はあちらの花が咲いた、というように。
完全に自給自足するとか、つくったものを売ろうとする場合には、同種類のものをたくさんつくる必要がありますが、個人で楽しむ目的であれば、1株を何種類も育てる、というほうが楽しいのです。
僕はここ何年か、年間40〜50種類の野菜・果物を育ててきました。
参考までに、今現在(4月)僕が育てているもので、すでに何度か収穫もしているものには、サニーレタス、グリーンリーフ・レタス、パセリ、わけぎ、茎ブロッコリー、スナップえんどう、パクチー、バジルがあります。
最近苗で植えたもので、これから育てていくのは、いちご、ミニトマト、なす、ピーマン、えだまめ、きゅうり、ゴーヤです。
先日、種で植えたけど、まだあんまり変化がないのが、春菊、みつば、オクラ、しそ、えごまです。これからの成長に期待です。
何を植えようか迷ったら、これからの時期、個人的におすすめなのは・・・
まず、ミニトマト。
簡単に育ち、夏にはたくさん収穫できて、楽しいです。
そして、しそ、パセリ、わけぎ、パクチー、バジルもおすすめです。
これらは、料理で必要な時に少しずつ欲しくなるものですが、欲しい時に冷蔵庫に無かったりしますし、わざわざ買うと高いですよね。
だから、いつでも収穫できる手近にあると便利です。
あとは、サニーレタスやグリーンリーフ・レタスもおすすめです。
結球するレタスと違い、サニーレタスなどは、葉をむしって収穫しても、何度も何度もまた葉がでてきます。
つまり、根と茎と小さな葉を残しておけば、何度でも食べることができます。
我が家では、サニーレタスが育ってくると、夕飯を焼肉にして、一緒に食べることにしています。
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野菜を育て始めたら、毎朝、水をあげます。
畑ではそんなにこまめに水をあげないものなのですが、プランターなどでは畑のようには土壌環境が万全ではないので、僕は毎朝あげるようにしています(夏は朝夕)。
特にプランターは、暑くなってくるとあっという間に土が乾いてしまうので、毎日あげましょう。
ぼーっと水をあげて眺めている時間は、とてもマインドフルネスを感じる素敵な時間です。
朝の外の空気を吸いながら、ゆったりとした心持ちで1日をスタートさせることになります。
そうやって水をやりながら眺めていると、小さなかわいい変化があちこちで見つかるでしょう。
「ブロッコリーの花って、こんなに小さな黄色い花なんだ!」とか、「わけぎがだいぶ太くなってきたから、食べどきかな♪」とか。
雨の日は、雨の水を浴びているなら、自分であげる必要はありません。
雨の日は憂鬱なものですが、日頃水をあげていると、「おお、今日は雨か。朝の水やりは無しだな」ということで、少し解放感があり、プラ・マイ・ゼロ(プラス・マイナス・ゼロ)な感じになるのも、面白い感覚です。
一人で育てても、とても豊かな時間になりますが、子どもと一緒に育てるのも、食育や自然との関わりの機会としてよいでしょう。
ミニトマトやなすは、スーパーのパックや八百屋の店頭に並んでいるのではなく、こうやって育てて、こんなふうに実がなって、新鮮だとこんな味がするんだと、体感的に学ぶことができます。
また、茎や葉はこんな感じで、こんな花が咲くんだ、ということを感じ、味わうのも豊かな経験です。
また、こういう自分で育てている野菜たちは、ある程度あると、食糧の供給が一時的にストップしてしまったときにも安心です(もちろん、さすがに長い期間食べられる量は、無理ですけれども)。
こんなによいことづくめですから、いろんな野菜を《家で育てる》こと(Farm at Home)を、始めない手はないですよ!
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今回紹介した《家で育てる》(Farm at Home)は、今年、英語書籍を出版する予定の『Cooking Patterns: A Pattern Language for Cooking in Everyday Life』(Takashi Iba, Ayaka Yoshikawa, Yuma Akado, Shiori Shibata) に収録されているものです。
これは、慶應義塾大学井庭研究室とクックパッド株式会社との共同研究で作成したものがベースになっている、料理のコツと、料理を楽しむ生活のコツをまとめたパターン・ランゲージです。
残念ながら、いま日本語版はまだないのですが、英語版を出版したあとに、それをもとに日本語バージョンもつくりたいと思っています。
この料理のパターン・ランゲージのなかでは、キッチンでつくるだけでなく、その食材である野菜も自分で育ててしまおう、ということで、この《家で育てる》(Farm at Home)が一番最後に収録されています。
家にこもって人工的な環境で暮らしているだけでなく、庭やベランダに出て、心と体を癒しながら、自然と触れ合う豊かな経験をもつのはいかがでしょうか。
今のこんな状況だからこそ、家族で身近な自然を愛でることを始めるよい機会かもしれませんよ。