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経済紙の記者をやっておりました http://pata.air-nifty.com/

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最近の記事

SHIBUYA 1962-1983

昨日、ヒカリエで24日まで開催中の「SHIBUYA 1962-1983 渋谷アーカイブ写真展」を見てきました。生まれ育った渋谷の街は、戦争もないのにこれほどコミュニティが破壊された土地もないんじゃないかと思うぐらいになくなり、特に道路が拡張された明治通り沿いの商店はほとんど立退きを選び、そこの子たちはいなくなりました。 しかし、多くの映画館、書店、レコード店などに支えられ、たくさんの文化資本を与えてくれた街でもありました。 今となっては、とにかく懐かしかったです。撮ったのは道

    • 『遺伝子 親密なる人類史 下』シッダールタ・ムカジー

      『遺伝子 親密なる人類史 下』シッダールタ・ムカジー、田中文 (訳)、早川書房  ギリシア哲学の時代から始まった遺伝子に関する編年体による説明は2000年代初頭の人間の全遺伝情報=ヒトゲノム解読、山中伸弥教授らによるiPS細胞の作製に成功、ジェニファー・ダウドナらが開発した新技術「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」によるゲノム編集と進みますが、下巻の後半からは近未来におけるヒトの遺伝子編集の是非について多くの頁を割いていす。  時代はゲノム解析からゲノム

      • 『THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙 あたらしい宇宙138億年の歴史』アンドリュー・ポンチェン

        『THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙 あたらしい宇宙138億年の歴史』アンドリュー・ポンチェン、竹内 薫、ダイヤモンド社  この本はダークマター、ダークエネルギーなど未知の物質がなければ宇宙は現在あるような形にはなっていないし、実は質量の95%を占めているというのがコンピュータによるシミュレーションによって明らかにされてきたという内容です。というかシミュレーションによってしか納得的な説明はできないし、ヒッグス粒子の観測もシミュレーションを重ねた後の実験

        • 『冷戦後の日本外交』高村正彦

          『冷戦後の日本外交』高村正彦、兼原信克、川島真、竹中治堅、細谷雄一、新潮選書  石破茂新首相はそれほど防衛、外交に詳しくないというか、なんとなく危うく感じているんですが、そのわけがわかったような気がしました。  福田内閣の高村外務大臣に「アフガニスタンに輸送用ヘリを送ってくれ」という要請が届いたことがあったそうです。そのきっかけは石破氏が防衛大臣の時のカウンターパートであるゲーツ国防長官から「ヘリ部隊を出せないか」と聞かれ、「自衛隊の能力としてやってやれないことはない」と

          『遺伝子 親密なる人類史 上』

          『遺伝子 親密なる人類史 上』シッダールタ・ムカジー、早川書房  ジムで運動しながらAudibleで聴いた本。  メンデルがヨーロッパの片隅で発見し、一時期は忘れ去られていた遺伝の法則と、ダーウィンの進化論が出会って遺伝学は歩み始めたのですが、そのダーウィンの従兄弟が心酔した優生学をナチス・ドイツが悪用、いきなり民族浄化に使われるという負の遺産を背負いながらの研究史となります。しかし、第二次世界大戦後のワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の発見をへて、遺伝学はクロ

          『遺伝子 親密なる人類史 上』

          『100兆円の不良債権をビジネスにした男』川島敦

          『100兆円の不良債権をビジネスにした男』川島敦、プレジデント社  ぼくは不動産は自宅しか買ったことがないし、ビジネスにしようとは思っていませんが、以下の東洋経済書評欄を読んですぐ発注しました。清原本に続いて、個人でいろいろやっている方なら読むべき本なんじゃないでしょうか  《当時、日本の不動産市場に利回りなんて概念はなかった。買い手は主に転売目的の不動産会社や自社ビルが欲しい事業会社で、テナントはむしろ邪魔。バブル期の取引には土地の値上がり期待こそあれど、賃料収入を見る

          『100兆円の不良債権をビジネスにした男』川島敦

          『風土記』橋本雅之編、角川ソフィア文庫

           今年は、平安朝の日記を角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスのシリーズで読むことが多かったのですが、まさか『風土記』にまで手を出すことになるとは、自分でも驚きでした。しかし、なんというか新鮮。読んで良かったです。  まともに読んでいないので素人感想も過ぎますが、常陸国が抜群に面白かったです。記紀の東国は伊勢だったりするけど、ヤマト王権が関東まで進出していくのをライブで読ませてもらった感じ。  また《渡来系の神や氏族に関する伝説の背景には、土地の占有をめぐって在地の人

          『風土記』橋本雅之編、角川ソフィア文庫

          『国家はなぜ存在するのか ヘーゲル「法哲学」入門』

          『国家はなぜ存在するのか ヘーゲル「法哲学」入門』大河内泰樹、NHK  ヘーゲルは1831年にコレラに罹ってあっけなく死ぬのですが、同時期にプロイセンはポーランド、ロシアとの戦争でクラウゼヴィッツ、グナイゼナウの2将軍もコレラで失っている、というあたりからの書きだしは「掴みはOK」という感じ。こんなところから医療ポリツァイについて説明し、ヘーゲルの法哲学と国家論に向かいます。  長谷川宏訳『法哲学講義』でも[C.社会政策と職能集団] Polizei(社会政策、警察)という

          『国家はなぜ存在するのか ヘーゲル「法哲学」入門』

          『国家はなぜ存在するのか』の感想を書く前に『ヘーゲル 法哲学講義』を復習してみた

           『国家はなぜ存在するのか』大河内泰樹、NHKブックスは面白かったのですが、その感想を書く前に長谷川宏訳の『ヘーゲル 法哲学講義』作品社を復習してみました。  長谷川訳『法哲学講義』は609頁以降に収められている『法哲学要綱』の当該§を読み、だいたいの流れを掴んでから、『講義』部分を読むという感じで読み進めました。構成は序論、第一部「抽象的な正義(法)」、第二部「道徳」、第三部「共同体の倫理」の三部。第二部の最後に《最初に自由が対象となりました。つぎに、自由が形をとったもの

          『国家はなぜ存在するのか』の感想を書く前に『ヘーゲル 法哲学講義』を復習してみた

          「私を構成する100枚」を選ぶ準備

          いまもやっているBlogにSong Bookというのをつくり、ボーッとしているときに口ずさんだ曲をとり上げていたんですが、55曲ぐらいあったので、ポピュラー系はその曲の入っているアルバムから選んで、後はズージャとクラシックから選んでいこうかな、とか …………追加………………. Deacon Blues Steely Dan : aja 発売当時は意味がなかなかとれなかったな…スラング強めで意訳すれば「ペテン師のブルース」でしょうか。die behind the wheel

          「私を構成する100枚」を選ぶ準備

          「上田久美子の The 舞台の哲学──すべては宝塚からはじまった? 」

          昨日、ゲンロンカフェで行われた「上田久美子 聞き手=上田洋子 上田久美子の The 舞台の哲学──すべては宝塚からはじまった? 」最高でした。こんな感じのことをお話されていたと思います。 フリーの演出家になって、なんで皆さんやっていけるんだろうと思っていたが、実家が太いのが演劇界だと分かった。そういえば、昔の文学者も高等遊民みたいな人ばかり。 実家は奈良の柿農家(星逢の「せん」かよw) 京大出て東京でサラリーマン生活。配属されたのは人事部で、能力主義に基づく考課をやらされて

          「上田久美子の The 舞台の哲学──すべては宝塚からはじまった? 」

          『吾妻鏡 鎌倉幕府「正史」の虚実』薮本勝治

          『吾妻鏡 鎌倉幕府「正史」の虚実』薮本勝治、中公新書 著者が高校教師、しかも国語を教えているということに驚きました。 しかし、だからこそ、日本中世史研究から自由な立場を維持でき、原始『平家物語』などの資料の想定から、『吾妻鏡』は編年体という正史的な装いの中で軍記物的叙述を加えることによって、頼朝〜泰時〜時頼という正当性を印象付けた物語なのだという主張は本当に目からウロコ。 『吾妻鏡』と『平家物語』は類書にない共通の虚構や構造を持ち(以仁王の令旨など)、独特の表現も共有して

          『吾妻鏡 鎌倉幕府「正史」の虚実』薮本勝治

          『昭和16年夏の敗戦』猪瀬直樹

           朝テレビを付けたら、NHKのドラマでチラッと出ていたのは猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』の話し?  猪瀬直樹は政治に近づきすぎたけど、ぼくは橋川文三の弟子だと思ってます。  読書ノートをパソコン通信やインターネットなどに上げる習慣をつける前に読んだ本なので、ドッグイヤーぐらいしか物理的な読書の爪痕は残っていないのが残念ですが、本の趣旨とは関係ないけど、こんなところも印象に残っています。これだけでも1冊書けそうなエピソードを、エピローグ 的に惜しげもなく投入する若き猪瀬直樹

          『昭和16年夏の敗戦』猪瀬直樹

          『13歳からの地政学カイゾクとの地球儀航海』田中孝幸

          『13歳からの地政学カイゾクとの地球儀航海』田中孝幸、東洋経済新報社  「地政学」は重要性が指摘されているにも関わらず、学術的な研究分野だとみなされていません。書籍でも学者が執筆したものは、非常に少なく、本書の著者もジャーナリスト。国際分野で活躍する新聞記者は地理学、政治学、国際政治学などを分野横断的に取り入れているために、向いているのかもしれません。ということで厳密な学問ではないかもしれませんが、頭の片隅に入れておけば、視点を増やすことができるわけで、ビジネス書グランプリ

          『13歳からの地政学カイゾクとの地球儀航海』田中孝幸

          『権記』藤原行成、倉本一宏(編)

          『権記』藤原行成、倉本一宏(編)角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックス日本の古典  7/21放送の『光る君へ』でも出家した定子に対する貴族の反発については、なんでそこまで嫌うの?と思うほど描かれていましたが、剃髪して出家したら、神事を行えないという問題があったのか、と改めて理解できました。  行成は『権記』でも《中宮は正妃であるとはいっても、すでに出家されている。したがって神事を勤めない》(k.2579、kはkindle番号)と記しています。  また、同じく道長が『御

          『権記』藤原行成、倉本一宏(編)

          『小右記』藤原実資

          『小右記』藤原実資、倉本一宏(編)、角川ソフィア文庫 『御堂関白記」『紫式部日記』に続き、『小右記』も読めました。ほんと、この時代の日記が読めるって素晴らしい!ぼくみたいな勉強の足りない人間にも読んだ気にさせてもらえる角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシック、感謝です!ということで『権記』も読み始めているのですが、今の世も、当時も変わらないんだな、と思って安心できます。実資には友達になりたくなかったかもしれないけど、いや、マジで良かったです。  驚いたのは二点。  道長

          『小右記』藤原実資