Growth Mindsetの話
どんなことも諦めたらそれで終わりだと自分に言い聞かせて生きている。
Growth Mindsetという言葉。
スタンフォード大学のCarol Dweckという先生が提唱したその研究結果が世界的に有名だ。
数年前、幸運なことに私はその先生を紹介してもらい、ロンドンでディナーをご一緒させていただいた。
因みに、初めての方に簡単に紹介すると、
Growth Mindsetとは、「自分のポテンシャルに限界をつくらない、努力次第で自分は伸びることが出来ると信じること」、そういう気持ちの持ちようのことだ。
対語は、Fixed Mindsetといって、「どうせ自分はこの程度しか出来ない」と限界を決めつけてしまうことで、ドゥウェック教授の研究では、似たような環境とレベルにいる生徒集団でも、その気持ちの持ちようだけで、成績に変化が現れたという結果が出ているものだ。
ディナーの席で、ドゥウェック教授は笑いながら言っていた。
「とにかく先生達が急に、朝から晩までGrowth Mindsetじゃなきゃダメだと生徒達に言い出したので、生徒達は困惑しているらしい、滑稽なのは、そういう自己肯定感を下げる教育をしてきたのは教師達であることだ」
Growth Mindset… 確かに誰が聞いても素敵な言葉だ。
魔法の言葉のようにも思えてくる。
そうか、自分の可能性を信じ続ければ何でも夢が叶うのではないかと・・・
実際に、ドゥウェック教授もそういう質問を良く受けるらしい。
私はもともと、人生に割とネガティブで、斜に構えて世間を見ていたタイプだったから、なかなか熱血タイプの教師とは馬が合わなかった。
大きな声の人が苦手であったし(今でも苦手)、晴れた空より雨の音が好きだと感じるタイプの子どもだった。
大人は「やれば出来る」というが、果たしてそうだろうか、
勉強も、運動も出来ないのは自分に才能がないからだと思っていたから、苦手だと思われることにはあえて挑戦せずにいた。
自分のことは自分が一番良くわかっている・・・そう考えていたから。
現実、人の感情は不安定で、複雑なものだ。
先生や親に「自分の可能性を信じなさい」と言われて、急に別人になれるわけでもない、信じればすべてがうまくいくなら世の中とうに平和になっている・・・斜に構えていなくてもそう考える人は多いだろう。
ドゥウェック教授は、Growth Mindsetという言葉を通じて、「信じればなんでも出来る」という理想を言っているのではなく、彼女が調査研究でみてきた様々なケースにおいて、
「しぶとく、諦めずに取り組んだ場合に成長がある」という実証がたくさんある
と言っているのだ。
現場の教師たちが見てきたのは、最終的にハイレベルな結果を出しているのは、最初から成績が良かった生徒ではなく、授業が終わった後に、何度も教師のところにやってきて、「わからないから教えてほしい」としつこく聞いてきた生徒であったという事実。
「しつこく、諦めない生徒」、そういうアクションを取っていた生徒が最後には、スタートダッシュが早かった生徒より上に行ったケースが多く見られたという事実だ。
まさに、「うさぎとカメ」の逸話そのものだ。
私は自分自身を振り返ってあらためて思った・・・自分が自分自身のことを、大して才能もない、のろまなカメだったと考えていたことは、ある意味、その通りだったのだ。
しかし、のろまなくせに、力もないくせに、出来ないのは自分が生まれ持ったもののせいだと考えて、大して努力もしなかった。
この歳になってやっと「しぶとくやり続けることの意味」を知った。
最近、こんな私が書いている記事を、現役のIB生が何人か読んでくれているらしい。
以前の記事にも私が日本の大学を突然やめて、家出同然で海外に飛び出したという身の上話を書かせてもらったことがある。
私は、自分を知っているつもりの自分と、自分が何がしたいのかがわからない自分の間で混乱し、人生のうちの随分長い間、迷い続けたので、今回は彼らに向けて改めてこれを書いておきたい。
“人生はスプリント競技(短距離走)ではなく、スタミナ勝負のマラソンだ、スピードが遅くても走るのを諦めることさえしなければいい”
何事も諦めたらそこで終わり。
Growth Mindsetとは、単に前向きな思考というより、壁にぶち当たっても「まだ他の解決方法がきっとあるはずだ」をしつこく粘り続けることに他ならない。
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