忘れられない恋
私には忘れられない人がいる。
彼との出会いは去年の夏。
彼と夏過ごした日々は
青春だった。
毎日、ダラダラして、
いっぱい笑った夏だった。
一緒にホラー映画を見た。
夏の部屋、クーラーをつけて
布団を一緒にかぶった。
あまりにも怖いのを理由に二人くっつきながら
映画を鑑賞した。
夜の河川敷で
一緒にした花火はキラキラ輝いていた。
誰もいない夜、二人の笑い声だけが
夜空には響いていた。
帰りにコンビニでアイスを買って、
公園で2時間くらいおしゃべりした。
なんともしょうもない会話だったと思う。
彼の実家の今晩の
夕食を当てるゲームをして
まさかの私の予想が的中していたことに
二人で驚きと爆笑した。
高校生の彼と、大学生になったばかりの私。
親に内緒でお泊まりもした。
二人でお風呂に入って、
夜は二人でくっついて寝た。
朝一番におはようと言い合えることに
なんともキュンキュンした。
お昼は、商店街にある地元のたこ焼きやさん。
彼と食べるご飯は幸せを呼んだ。
カラオケにも行った。
二人ほろ酔いで、
帰りは手を繋いで帰った。
お互いのTシャツを交換した。
彼がくれたのがとってもダサくて、
それもなんだかかわいらしかった。
夜中の地元の町、
二人乗りで自転車に乗って、
彼の背中をつかめることが嬉しかった。
シャボン玉をベランダでした。
外は天気がとっても良くて、
寝起きだった二人は、
シャボン玉をした後
また布団に戻ってゴロゴロした。
お互いのプレイリストを交換した。
好きとはなかなか言ってくれない彼、
でも追加する曲たちはどれも
会いたい、とか、好きな人、とか
愛、とか愛してる。そんな歌詞だった。
彼なりの愛情表現。
愛おしく思った。
そんな楽しい時間もあっという間に過ぎていった。
出来事は1ヶ月くらいだったかもしれない。
でも、私の中では、
何年も一緒にいたような気持ちだった。
夏休み、ほぼ毎日一緒にいた。
そのくらい濃い時間を過ごした。
自分でも気づいていた。
恋をしていたことに。
でも、私の願いは叶わなかった。
私の夏休みが終わり、海外に帰った。
彼は、私が帰ってすぐ
他の女の子に告白されて、
彼女ができた。
ショックで立ち直れなかった時期もあったが、
考えてもしょうがないと割り切ることにしていた。
私も吹っ切るために向こうで
彼氏を作った。
でも、あまり好きになれなくて、
すぐに別れてしまった。
そんなこんなで、
6月になった。
私は帰省して地元に帰ってきた。
久しぶりの地元は、
なんだか懐かしい匂いで
地元の街を歩くたびに
彼との思い出が蘇る。
ある日、私は駅に向かって歩いていた。
音楽を聴きながら、私は駅を通り過ぎ
目的地に向かっていた途中。
戻ってきた場所。
そんな歌詞が耳から聞こえてくる。
そんな時、
見覚えのある顔が向こうのほうから
やってきた。
だんだん近づくにつれて
気づいてしまった。
会いたかった彼だった。
1年も経つとファッションも全然違うくて
彼は大学生になっていた。
でも、彼のどこか変わらない表情で
すぐに気づいてしまった。
彼の横には、女の子がいた。
二人は楽しそうに話しながら駅に
向かっていた。
彼の彼女には嫉妬しなかった。
嫉妬したところでどうにもならないし、
二人の恋愛を邪魔することは
違うとわかっていたから。
気づいていたのは私の方だけで、
彼は、私とすれ違ったことには
気づいていなかった。
まさかすれ違うとも思っていなかった
だから、その衝動で
彼にラインをしてしまった。
久しぶりに送る彼へのライン。
アイコンが懐かしさを引き立てる。
彼は、気づかなかった。
話しかけてくれたらよかったのに。
そんなふうに言ってきた。
誰が彼女と歩いている人に話しかけられるのだろう。
ましてや、私の大好きだった忘れられない人。
現実でもこんなことが起きるのだとびっくりした。
驚きが隠せないし、
今になっては、少し話しとけばよかったな。
そんな後悔も心に浮かぶ。
好きな人は別の人の彼氏になったんだ。
嫉妬はしなかったけど、
私はまだ、忘れられていない。
そう気づいてしまった。
これから夏がやってくる。
私の青春だった夏。
今年は、どんな未来が待っているのだろう。
正直、彼との偶然の出会いによって
私の気持ちがまた戻ってしまったような気がして
なんとも複雑な気持ちになった。
私は思い出に恋をしている。
彼の中に私はもういないのに。