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ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』【英文学最高傑作候補】

ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』を光文社古典新訳文庫バージョンで読んでみました。

英国文学史上でもっとも高い評価を受けている作品のひとつ。ちなみにジョージ・エリオットという名前はペンネームで、この作者は女性です。

主人公が何人も登場する群像劇タイプの小説。若い主人公たちが大きな理想をもって結婚生活に突入し、すぐにそれが裏切られ、それでもどうにか現実生活を暮らしていく…といった内容。

普通に面白かったです。とはいえ個人的にはオースティンやディケンズのようにはハマらず。

トルストイとかが好きな人には合いそう。実際、トルストイはジョージ・エリオットから影響を受けている可能性があるそうです。

以下、印象的だった文章をいくつかメモ。

大多数の中年男性は、毎日定められた職務に従事し、ネクタイを結ぶのと同じように、お決まりの仕事を繰り返している。しかし、彼らのなかにも、かつては何事かを成し遂げて、世の中を多少なりとも変えようと思っていた者が、少なからずいる。彼らが世間並みの者に成り下がり、ひとまとめに束ねられるようになるまでの経緯は、本人の意識のなかでさえ説明がつかない。

ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』廣野由美子訳、以下同書より引用

「あなたの宗教はどんなものなのですか?」ドロシアは言った。「つまり、宗教についての知識ではなく、あなたにとっていちばん助けになる信仰は何か、という意味ですが」

ドロシアは、このようにあくまで心を許そうとしない夫の頑固さに、ぞっとするような感じがした。ぞっとするというのは、強い表現だが、それでも強すぎはしなかった。たかがこれくらいの些細な動作ではあっても、そのせいで喜びの種が芽を出す機会は永遠に失われてしまうのだ。そしておしまいには、夫も妻も、自分が機会を無駄にしてしまったために生じた荒廃の跡を、やつれた顔で見回し、この大地には豊かな実りがないと言う。そして、自分の否定的な考えを知識と呼ぶのだ。

青春時代が希望の季節であるとしても、それは年長者が若者に希望を託すという意味でしかない場合が多い。


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