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教養のためのおすすめ新書35選【歴史・社会・政治・経済・哲学etc】

今の日本で読書というと、小説かビジネス書が連想されると思います。しかし、もうちょいハードな知識とか教養がほしくなってくる人も多いはず。

そういうときに役立つのが新書です。

新書は日本に特有の書籍形態で、専門家が、専門的なことを、一般読者相手にわかりやすく解説してくれる内容になっています。これを使わないのは損。

とはいえ、現代の新書は玉石混交をきわめた世界です。どれが当たりなのかは、読むまではなかなかわからない。

というわけで僕が読んだ新書のなかから名作を紹介します。

中谷宇吉郎『科学の方法』(岩波新書)

科学論のスタンダードな名著。科学哲学の分野では本書とは違う考え方も出てきますがとっかかりとしては最高かと思います。

著者は物理学者にして一流エッセイイストなので読みやすい。


中根千枝『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)

講談社現代新書を代表するロングセラー。社会人類学の方法を日本社会に当てはめて、その特徴を浮き彫りにします。

日本は資格の共有で社会を形成するタイプではなく、場所の共有で社会を成り立たせます。ここから感情の重視、タテ型社会構造、宗教よりも道徳を重視する傾向、などが導き出されていきます。


網野善彦『日本社会の歴史』(岩波新書)

上中下の3巻構成。一人の歴史学者がまとめあげた通史は貴重。著者は日本中世史研究のスーパースター。

「日本の歴史」じゃなくて「日本社会の歴史」となっているところがこの人らしい。


坂野潤治『日本近代史』(ちくま新書)

明治維新から日中戦争突入までを450ページにまとめた力作。とんでもない歯ごたえだけれども内容は明快だしおもしろい。

この話の続きは半藤一利の『昭和史』(平凡社ライブラリー)あたりで追うのがわかりやすいと思います。


三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』(岩波新書)

こちらは明治~大正の近代日本を分析する本。政党政治、資本主義、植民地政策、天皇制の4つの観点から掘り下げる。

坂野潤治の近代史と併読すると相乗効果が期待できます。


岡本隆司『世界史序説』(ちくま新書)

中央アジアを中心に世界史を語り直そうとする本。シルクロードを主役にする構成はめずらしい。世界史の知識が再構成されておもしろいです。


中村光夫『日本の近代小説』(岩波新書)

文芸評論の名著。夏目漱石や森鴎外、志賀直哉、芥川龍之介など明治~大正の日本近代文学を分析していきます。


池尾和人『現代の金融入門』(ちくま新書)

王道の金融入門書。金融政策の役目とその限界が理解できます。

さらに金融取引、決済、中央銀行、バブル、企業統治、デリバティブ、証券化などが解説されていく構成。歯ごたえはあるけど明快。


國貞克則『財務3表一体理解法』(朝日新書)

会計入門にはこれ。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つを図式上で一体化し解説した入門書。おそろしくわかりやすい。

旧版のほうがコンパクトにまとまっていてわかりやすかったのは残念。


石野雄一『ざっくりわかるファイナンス』(光文社新書)

企業ファイナンスの入門にはこれ。すらすら読めるわかりやすい本。


猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』(中公新書)

第二次世界大戦後から2008年の金融危機までを扱った経済史。

登場する地域はアメリカ、欧州、中国、東アジア、東南アジア、東欧、南米、アフリカと幅広い。

純粋な経済システムだけを題材とするのではなく、政治との関係性を重視した内容になっています。名著『市場vs国家』の日本版みたいな本。


高坂正堯『国際政治』(中公新書)

日本を代表する国際政治学者が書いた啓蒙書。もはや古典と化しています。高坂は日本にはめずらしいリアリズムの政治思想の持ち主。


飯尾潤『日本の統治構造』(中公新書)

日本が採用している「議院内閣制」の仕組みをわかりやすく説明してくれる良書。これを読むと、政治システムへの理解度が一気に上がります。


宇野重規『民主主義とは何か』(講談社現代新書)

民主主義とはなんなのか。古代ギリシア以来の歴史をふりかえり、その特質を明らかにせんとする本。

民主主義はかならずしも多数決ではないし、かならずしも議会制ではないし、かならずしも自由主義でもない。


浅羽通明『右翼と左翼』(幻冬舎新書)

革新派の左翼に対する保守派の右翼。なぜこのような名前で呼ばれるようになったのか?

その起源たるフランス革命にまでさかのぼりわかりやすく解説してくれます。日本の事情についても解説あり。政治への理解度が爆上がりする良書。


遅塚忠躬『フランス革命 歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書)

岩波ジュニア新書を代表する名作。なんだかよくわからないフランス革命の曲がりくねった歴史を、熱く明快に解説。

浅羽通明『右翼と左翼』とあわせて読むと相乗効果が期待できます。


塩川伸明『民族とネイション ナショナリズムという難問』(岩波新書)

なんとなく使っているけれども実はよくわかってない単語ランキングの上位に「ネイション」がくると思います(他は「理性」や「ロマン主義」が入ってくる)

ネイションとか民族とか国民国家とか、このへんのフワフワしたよくわからない感じを解消してくれる良書がこれ。


大澤真幸『社会学史』(講談社現代新書)

理論社会学の通史。640ページもあります。大澤真幸の本のなかでも相当おもしろい部類に入ると思う。

なお現代の社会学は理論系の存在感がないので、本書を読んで「社会学を志そう」とは思わないほうがいいです。


山之内靖『マックス・ウェーバー入門』(岩波新書)

近代社会に対する批判者としてのウェーバーを捉えた有名な本。ニーチェとの親和性が強調されます。


末木文美士『日本宗教史』(岩波新書)

仏教伝来、仏教と神道の関係、江戸時代のキリスト教と儒教、戦時中の国家神道、現代日本の宗教性まで幅広くカバー。

同著者には同じく岩波新書から出ている『日本思想史』もあります。


安丸良夫『神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈』(岩波新書)

岩波新書のロングセラー。明治政府は社会統制のために神道を利用し、仏教に対しては弾圧を加えました。それが日本人の精神構造をいかに変えてしまったか。


阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』(ちくま新書)

日本の宗教性を考えるロングセラー。

キリスト教のような創唱宗教だけが宗教ではなく、自然宗教という形態もあり、人類史を眺めてみればむしろこちらがメジャー。そして日本も自然宗教の強い国でした。


菅野覚明『神道の逆襲』(講談社現代新書)

タイトルだけ見ると色物っぽいですが中身は良質。神道の思想史を解説してくれる本は貴重です。扱われるのは吉田兼倶、山崎闇斎、本居宣長、平田篤胤などなど。


山我哲雄『キリスト教入門』(岩波ジュニア新書)

キリスト教の歴史をわかりやすく教えてくれる本。ユダヤ教との違い、原始キリスト教の性格、ローマ帝国との結びつき、近代の宗教改革、などなど。

東方正教にまとまったページを割いているのも、この手の本にしてはめずらしい気がします。


丸山真男『日本の思想』(岩波新書)

新書界の王みたいな存在。著者は戦後日本を代表する学者です(専門は政治思想史)

日本人のもつ思想傾向、それが社会構成に反映される仕組みなどを分析。今日にも当てはまるところが大いにあると思います。


長谷川宏『丸山真男をどう読むか』(講談社現代新書)

ヘーゲルの日本語訳で有名な哲学者による丸山眞男批判の書。

大衆のがわに立ってエリートを批判する構図。丸山の説く普遍性には民衆が入っていない。それは抽象的な普遍にすぎず、真の普遍とはいえない、という議論の流れ。このパターンが高度なロジックで語られているのはインパクトあります。


岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』(岩波ジュニア新書)

西洋哲学の根っこには古代ギリシア哲学とユダヤ宗教という2つの核があります。この二要素に焦点をしぼった名著。

なお哲学系の新書は数が多すぎて収拾がつかなくなるので別記事にまとめます。


柄谷行人『世界共和国へ』(岩波新書)

著者は今の日本でもっとも世界的に名の知れた哲学者(実は文芸批評家)。21世紀の柄谷思想の大枠をざっくり描いてくれた本がこれ。

ただし柄谷は初期の文芸評論や中期の哲学作品がさらにおもしろいので、興味をもったらそちらも読むべき。


東浩紀『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)

著者は今の日本国内でもっとも有名な哲学者。本書(2001年刊行)では日本のオタク文化を題材にして現代社会の構造を語る。いまや海外でも読まれる有名な本。


木村敏『時間と自己』(中公新書)

著者は世界的権威をもった精神病理学者。

うつ病患者に特有の時間性、統合失調症患者に特有の時間性、てんかん患者に特有の時間性を取り出してきて、時間性と自己形成の関係を掘り下げていきます。ほぼ哲学といった趣ですが抜群におもしろい。


都筑卓司 『マクスウェルの悪魔』(講談社ブルーバックス)

統計力学や熱力学をわかりやすく解説してくれる貴重な本。確率と物理がいかに結びつくか。これを知っておくと他の現代物理学の本も読みやすくなります。

なお自然科学系の啓蒙書は、新書よりも文庫に良書が多いです。ということで、この記事にはそれ系の本があまり登場しません。好きな人はブルーバックスシリーズを片っ端から読んでいけばいいと思いますが、個人的にはこのシリーズあんまり合わないんですよね。


千野栄一『外国語上達法』(岩波新書)

1986年に発売されていまだに売れ続ける名著。

単語やら文法やらの勉強方法についても有益な内容ですが、いちばんの魅力は読者をモチベートする力に満ちていること。読んでるとやる気がわいてきます。


斎藤兆史『英語達人列伝』(中公新書)

日本人の英語マスターを紹介する本。異様におもしろい。どのような学習法を用いたのかも参考になります。

登場するのは以下の10名。

・新渡戸稲造
・岡倉天心
・斎藤秀三郎
・鈴木大拙
・幣原喜重郎
・野口英世
・斎藤博
・岩崎民平
・西脇順三郎
・白洲次郎


清水幾太郎『論文の書き方』(岩波新書)

タイトルには論文とありますが、実際には書くこと全般を扱った内容。文章力を向上させたい人におすすめ。ちなみに著者は戦後日本を代表する社会科学者のひとり。


野口悠紀雄『超文章法』(中公新書)

こちらは経済学者が語る文章の書き方。より実際的な内容。でも意外と文学趣味も垣間見えておもしろい。

本業の本も良書が多いので、経済系の知識がほしい場合はこの人をラインナップに入れるのも良いと思います。


板坂元『考える技術・書く技術』(講談社現代新書)

講談社現代新書のロングセラー。バーバラ・ミントの同名書よりもこっちのほうが威力あります。

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