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photochemie
【名文紹介】ヘルダーリン、神を語る
浄福の神々は自分では何一つ感じない
あえていうなら別の存在が
神々の名において彼らに思いを寄せつつ
感じなければならぬのだから
この別々の存在が神々には必要なのだ
19世紀ドイツの天才詩人ヘルダーリンの詩。
天上の詩人とも称される彼は、人生半ばで統合失調症を発症し、後半生を塔の一室に引きこもって暮らしました。
ヘルダーリンは哲学者ヘーゲルやシェリングの学友でした。シェリングは3人のなかでは年下ですが飛び級で進学した天才です。
この詩の内容もどこかヘーゲル的。
完全な神と劣った人間。両者を断絶させるのではなく、むしろ有機的に結びつけるような考え方。
しかも完全たる神のほうがむしろ人間を必要としているのだという視点。
全が個へと分裂することを堕落として捉えるのではなく、全が全自身を知るために不可欠なプロセスとして把握する。
ヘーゲルはヘルダーリンから影響を受けて、このような思想を発現させていったのでしょう。
後にハイデガーもヘルダーリンから大きなインスピレーションを得ることになります。上述の詩は彼の『シェリング講義』で引用されているもの。