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無性に文章が書きたくなる本ー『さみしい夜にはペンを持て』を読みました。

昨日、半年ぶりくらいに本屋へ足を運んだ。何か良い出会いはないかな?と思ったからだった。本は大好きなはずなのに、必要なものはネットで購入することが多くなってしまったため、中々本屋に行く機会がなかった。久しぶりに足を運ぶと、やはり本屋っていいな、と思った。あの独特な店内の匂いも、人々がページをめくったり、お目当てのものを探したりしている情景も、何もかもが私にとってはわくわくするものだった。本屋さんへ行くといつも決まって見るのは、話題の新刊書が並んでいるコーナーや、ビジネス書、自己啓発系の売り場だ。昨日もその辺りをうろちょろとしていた時に、その本に出会った。

『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』と並んで置いてあった『さみしい夜にはペンを持て』という水色の本は、同じ著者が書いたようだった。中身をパラパラめくってみると、意外とイラストが多いということと、物語調に書かれている本だということがわかった。自分が今読みたい本とは違うかもしれないと思い、一度、棚に戻した。そして、別のコーナーを見ていたのだが、なぜか気づけばまた、先ほど棚に戻したはずの水色の本を私は手に持っていた。ページを一枚めくったところに、こんな文章が書かれていた。

ぼくは、ぼくのままのぼくを、好きになりたかった。

『さみしい夜にはペンを持て』より引用

強烈に惹かれる何かがあった。私はすぐにその本をレジに持っていき、家路を急いだ。そして、帰宅して一気に読んだ。一日で本を一冊読み終えたのは、何年ぶりだろう。さらに、猛烈に文章が書きたくなって、今、このnoteを書いている。


本のあらすじ

海の中に住む、中学3年生のタコジローは、いつもいじめられていた。緊張すると顔が真っ赤になるため、「ゆでダコジロー」と言われる。勉強も運動も苦手、おしゃべりも上手くない。緊張すると口から墨が出てしまう。同じ中学校に、タコは自分一人しかいなく、タコジローはタコである自分が大嫌いだった。タコジローは、自分がいじめられているということ、タコである自分のことが大嫌いであるということを、お父さんやお母さんはもちろん、誰にも言うことができず、いつも一人で悩んでいた。
ある日のホームルームの時間に、体育祭で選手宣誓をする生徒を決めている最中、クラスメイトがグルになって、タコジローにしようと言い出す。くすくすと笑い声が聞こえ、タコジローは、「またみんな僕を笑いものにしようとしている」と悲しくなった。
翌朝、学校の前で停車したバスから、降りる勇気がなくなってしまったタコジローは、そのまま終点の市民公園前まで行った。その公園で出会ったのは、一匹のヤドカリのおじさんだった。タコジローは、ヤドカリのおじさんの背中を岩だと勘違いし、寄りかかりながら、自分の悩みをひとりごとでペラペラと喋ってしまい、おじさんに全て聞かれていたのだった。タコジローの話を聞いたおじさんは、自分の「家の中」へタコジローを案内した。おじさんの「家の中」は、思ったよりも広くて、たくさんのクラゲたちが泳いでいた。あの小さな殻の中に、どうやってこんな大きな家を作ったのだろうと、不思議な気持ちになっていると、おじさんは、その家の中を「おじさんの頭の中」だと言った。そして、家の中に泳いでいるたくさんのクラゲたちのことを、「コトバクラゲ」と呼び、頭の中にある言葉にならない思いを、そのコトバクラゲたちが片付けてくれている、と言っていた。突然の話に驚くタコジローだが、そこから、タコジローとおじさんとの不思議な10日間の物語が始まっていく。

自分の思いを「書いて」表現すること

この本を読み終えて真っ先に思ったことは、「今すぐ自分の思いを表現したい!」ということだった。頭の中にある、言葉にならない思いをきちんと言葉で表現するということは、自分をより理解することに繋がる、と改めて確信することができた。タコジローは、ヤドカリのおじさんのおかげで、今まで誰にも言えなかった自分の中の思いを、まずはおじさんに話すことができ、スッキリしたと同時に、自分の思いを言葉にすることの喜びを感じることができた。そして、それを続けていくことによって、自分は本当はこんなことを思っていたのだ、などと、自分の本当の思いに気づくこともできるようになった。タコジローは、勇気を持って自分の気持ちをヤドカリのおじさんに話したことによって、自分をより理解することに繋がっていったのだ。自分の思いを言葉で表現することは、自分との対話である、と、この本の中では表現されている。
さらに、自分の思いを表現することの中でも「書くこと」が極めて重要であると、この本には書かれている。私も、この考えには大いに賛成している。と言うのは、私は今から10年以上前に、ある一冊の本を読んだことがきっかけで、自分の思い、考えをノートに書くことが習慣となり、それによって、大きな体験を得たことがあったからだ。その本は『人生は1冊のノートにまとめなさい』(奥野宣之著)という著書だった。お気に入りのノートを一冊用意し、とにかくそのノートをいつも持ち歩いては、何でもかんでも記録していた。自分のその時の気持ちや自分の考えを記録することが習慣になってくると、心の底からの本心や、本当にやりたいことがどんどんわかってくるようになり、自分への理解度が深まっていった。自分と向き合う時間が増えて、より自分軸が出来てきたことが感じられた。自分に対する理解が深まってくると、自分に自信が持てるようになり、自分をどんどん好きになることができていった。

自分の頭で考える習慣を

さらに、この本に書かれていることは、単に文章を書くことの素晴らしさだけではない。書くことを「自分の頭で考える習慣を持つこと」だと捉えている。自分の頭で考えられない人がなんと多い世の中だろう。スマホを開けば、ありとあらゆる情報が行き交う。私たちは普段、自分の頭で考えることをせずに、流れてきている情報を鵜呑みにする習慣がついているのではないだろうか。それはとても危険なことだと感じている。マインドコントロールは、そういうところから生まれるからだ。そして、情報を鵜呑みにしたり、誰かに言われたからそれを選択する、という生き方をしていると、何か問題が起きた時に、それは自分ではなく「誰か」のせいになってしまうことになる。それはもはや、自分の人生の主導権を、誰かに明け渡していることと同じなのではないだろうか。自分の人生の主人公は、自分以外の何者でもない。一人になって、自分自身と向き合いながら自分の思いを書くことで、自分の考えを深め、自分の人生を誰かに操られることなく、自分で操縦していいくことができる。そこから、本当に充実した人生が始まっていくように思う。こうやって本を読み、考察をすることも、その一つになるかもしれない。タコジローと出会い、私は、改めて文章を書くことの楽しさを知ったのだった。とてもおすすめの一冊だ。


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