「ぬ」と「む」

「いやだからさ、それは流石に、ぬり!!」



打ち終わった文章に不安を感じる。
まってこれ違う?どっちだっけ、また分からなくなっちゃった。あれ。


「無理」の一文字目は muでしょ。mu っていう発音は分かる。今頭の中で聞こえてるよちゃんと。だけれどそれを文字にする時には「ぬ」って書くんだっけ「む」って書くんだっけ。いつも分からなくなるな。落ち着いて考えて、、、、いや、mu は「む」って書くんだ。そして、nu が「ぬ」なんだ。それじゃあ打ち直さないとね。よし次は絶対に忘れない。


「いやだからさ、それは流石に、むり!!」


よし、これでちゃんとできた。送信。打ち直しているうちに何が「むり」なのか自分の中で話が入れ替わってしまったな。

あと少しで21になるというのに今だに「ぬ」と「む」が苦手だ。mu という音を文字にしたいと思った時に「む」になるのか「ぬ」になるのかを頭の中で考えないと間違えてしまうし、「ぬ」という文字を見た時にそれを mu と発音するのか nu と発音するのかを瞬時に判断できない。漢字で表記されている場合には問題なく「ぬ」と「む」の区別ができるが、カタカナの場合には平仮名と同様に頭がこんがらがってしまう。

保育園でひばり組に上がった頃から私はひらがなを習い始めた。私はひばり組にして47都道府県とその県庁所在地、そして世界の国名と国旗を暗記していた秀才少女⭐️であったのにも関わらず、「ぬ」と「む」だけは何度勉強しても覚えることができなかった。お風呂の時に防水の五十音表を持ち込んで練習してみたり、「ぬヌVSむム 」と書いたカンニングペーパーのような秘密のメモをポッケの中に持ち歩いていたりしたが、やはり私の中で「ぬ」と「む」だけは格別に似すぎていたのである。どうしても覚えることができなかった。保育園の時にはまだ、ひらがなが読めるというだけで褒められたものだったから大した問題はなかった。

しかし、小学校に上がると国語の音読という恐ろしい時間が私を待ち受けていた。初めは、音読で「ぬ」か「む」に出会った際にはただただ当てずっぽうに「ぬ」か「む」をランダムに発音していた。しかし、先生に間違いを指摘されることが数回続いたため、授業前日に家で音読の練習をしてから学校へと向かうようになった。だが、いくら家で読みを練習しても学校へ行けばまた「ぬ」と「む」の読みを間違えるのである。なぜなら、ローマ字を知っていたらnu 、muと表記をすることで二つの発音の違いを区別をして読み上げることができるが、まだローマ字を習っていない小学校低学年の時には「ぬ」「む」という文字を使わずに発音の違いを表記する方法を持ち合わせていなかったからである。いくら練習したとしても教科書には「ぬ」「む」の形で文字が書いてある為、また間違ってしまうのである。そこで私は「ぬ」には丸印を、「む」には三角印をつけるという革新的な方法を発明した。みんなにとっては何の意味ももたない丸印が私にとっての「ぬ」、三角印は「む」となった。そして、この「ぬむ革命」が行われた直後に私の頭の中の五十音表もそれに沿って書き換えられることとなる。私の頭の中の五十音表は以下の通りになった。

「ぬむ革命」後の革新的な五十音表

そして、「ぬむ革命」が行われた小学一年生の春以来、私の頭の中の五十音表は書き変わっていない。紙で何かを読む際には最初のページに「ぬ=○、む=△」とメモをしてから読み物を始めるし、パソコンのデスクトップにはタイピングミスをしないように「ぬ=ヌ=nu=○、む=ム=mu=△」というメモがしてある。みんなが出来ることを1人だけできないのが嫌だから「ぬ」「む」を頑張っているけれど、そんな自分のことをたまに宇宙人じゃないかと思ってしまう時がある。私だけ「ぬ」「む」がない星から来た宇宙人なのではないかと。私は、自分が「ぬ」「む」ができないことに加えて、そもそもの出自がみんなと違う星だったらどうしようと本気で怖がっていたため、「ぬ」「む」が出来ないことを家族にも友達にも近所の猫にも誰にも言ったことがない。今この瞬間まで「ぬ」「む」問題は自分にしか言ったことがない秘密事項であった。だから、みんな、私が死んだ後に私の日記やノートからたくさんの○や△が出てきても怖がらないでほしい。NASAに持っていって宇宙人鑑定しようとしないでね。大量の○や△は宇宙語ではなくてただの「ぬ」「む」だからね。でももし、このことを知らない人が私の○と△を解読しようとした時には、宇宙人との関連性を仄めかしながらロマンをたっぷりと含ませた感じで放置していて欲しいです。よろしくお願いします。

では、ね△れ○よるには△りせ○程度にラジオを聞いて寝てくださいね。
おやすみなさい。











あとがき
今まで書いた文章の中で一番ハードな文章でした。何度も「ぬ」「む」が連続して出てくる為頭がパニックになりましたが、良い「ぬむトレーニング」になったと思います。もしかしたら、「ぬ」「む」が逆になっている箇所があるかもしれないので、見つけた人はこっそりと教えてください^ ^

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