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『シャーロック・ホームズの冒険』
読みました。
アーサー・コナン・ドイル 『シャーロック・ホームズの冒険』
年末からホームズ再燃していますが
この一冊を読むために『緋色の研究』と『四つの署名』を読んだと言っても過言ではありません。
(この二冊についてはすでに感想を記事にしてありますので、ご興味ある方はマガジンからどうぞ。)
ホームズが活躍する作品はたくさんありますが
“ホームズの冒険”とタイトルをつけられただけあって
この一冊に彼の魅力が凝縮されているように思います。
発表当時は週刊誌への連載というかたちでした。
ホームズとワトソンというお決まりの登場人物がいることで
今のちびまる子ちゃんやサザエさんのように
途中を見ていなくてもいつでも帰ってこれる
そんな安心感や親近感を読者に与えていたのではないでしょうか。
鉄道が普及し移動時間の暇つぶしが求められる社会で
知性溢れる主人公のスリリングな冒険は
退屈な読者たちにとって刺激的だったことでしょう。
また19世紀末の不安定なイギリス社会で
ホームズのような絶対的なヒーローの存在は
心の拠り所になっていたのかもしれません。
さて、前置きはこのくらいにして
今回も感想のようなまとめのようなノートをぽつぽつと書いていきたいと思います。
以下、若干のネタバレを含みます。
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この『冒険』を語るうえで欠かせないのが
「ボヘミアの醜聞」に登場する女性アイリーン・アドラーでしょう。
彼女に注目したアダプテーション作品や研究論文は数多く存在します。
ホームズを負かした唯一の女性として紹介されるアドラーですが
スーパー男性中心社会だった当時のイギリスにおいて
このような 脅威的な 女性の存在は
許されるものではなかったのかもしれません。
そんな意図があってのことか
物語のなかではすでに亡き者として語られるアドラー。
ヒーローとして絶対的な存在であるホームズを脅かす女性はもういないと
男性読者たちを安心させるような設定のように思われますが
いかがでしょうか。
また
この作品に収録されている物語のなかで
ホームズを認めさせる女性 として
アドラーの他に「ぶな屋敷」に登場するバイオレット・ハンターが挙げられます。
彼女はその他大勢の依頼人には見られないような機転と行動力をもち
自分の力で真相に辿り着こうとしますが
それでも結局“ホームズに救われる女性”という分類から外れることはなく
ここでも絶対的なヒーロー ホームズの存在が強調されています。
『冒険』には
多くの議論がされている「ボヘミアの醜聞」だけでなく
有名な「まだらの紐」事件や「唇のねじれた男」事件など
大胆なトリック(トリックと呼んでいいものか…)とホームズの活躍を楽しめる作品が収録されています。
ホームズ初心者の読者の方は
『緋色の研究』ではなくこちらから読み始めるのもいいかもしれませんね。
ちなみに
魅力的な物語が数多く収録された『冒険』のなかで
わたしが好きなお話は「技師の親指」です。
「技師の親指」は「ボヘミアの醜聞」同様に(いや全然似てないんですけどね)
ホームズが活躍しないお話のひとつです。
だからこのお話を好きというのはちょっとおかしなようにも思えますが
なんせわたしはホームズもののなかで「恐喝王ミルヴァートン」がいちばん好きなもので…
「技師の親指」が好きというのに
コレといった理由は特になく
説明できることもないので
どちらかといえば感覚的な好みなのかもしれません。
「技師の親指」にも
ちょっとした女性が登場します。
ホームズものという男性の物語のなかで
あえて女性キャラクターに注目する
そんな読み方をしてみるのも面白いかもしれませんね。(体験談)
最後まで読んでくださりありがとうございました。