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映画レポ|『ワイルド・アット・ハート』格好良いぜ、セイラーの兄貴
こんにちは。
映画大好きまにしです。
そこの君。
斜に構えて生きてはいないかね。
自分のことなんて、誰も理解できやしないさ……と他人の目を気にしないようで、他人の目を誰よりも気にしていた、それが私だった。
この映画は、そんな私を「ダサいんだよ!」と思いっきり殴ってくれるものでした。
◾️あらすじ
鬼才デビッド・リンチ監督がニコラス・ケイジ主演で放つバイオレンスなラブストーリー。ある日、恋人ルーラの目の前で襲いかかってきた男を返り討ちにし、殺してしまったセイラー。その男は、娘に異常なほどの愛情を持つルーラの母マリエッタが送り込んだ刺客だった。2年間の刑期を終え出所したセイラーは、ルーラを連れてカリフォルニアへと旅に出る。マリエッタは再び彼らの元に2人の男を送るが……。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。
◾️快と不快の演出が絶妙すぎる
はじめてデヴィット・リンチの映画作品を観た。
なんとなく知っているところでいうと(『ツイン・ピークス』だけ観たことある)、彼がつくりだす不快の演出……不穏な世界観が魅力な監督なのだろうということだろうか。
セイラーとルーラ、2人の逃避行を描く『ワイルド・アット・ハート』。サスペンス的な不穏さがありながらも“快”の演出もすごく良い作品だった。
とにかく、主人公の2人がちょっとダサいくらい愛に全力だ。
甘いラブソングを熱唱したり、決めポーズを決めたり、名前を叫んで走ったり……もはやベタすぎて気持ちが良い、振り切りすぎてて格好良い。
はじめて観たときは笑えるんだけど、私のなかでじわじわ彼らの愛し方こそが真理な気すらしてきてしまって、いつの間にか人生の指針に近いポジションの映画になっている。おかしいな。
◾️本気なことって格好良いぜ
言葉を選ばずにはじめ思ったままを書くならば、この若い男女は大変向こう見ずの馬鹿である。
襲いかかってきた男を殴り殺す。
出所後の監視期間中に街を出る。
金欲しさに悪事に手を染める。
一方で、
セイラーは自分の信念だという蛇皮のジャケットを格好良いから着ている。
“ワイフにしか歌わない”というラブソングを決め顔で熱唱する。
そんな彼にルーラはうっとりする。
もちろん誰かにけなされれば、その度にものすごくキレる。
馬鹿というより、とても素直だ。こいつら、お互いがお互いのことを本気でイカしてると信じていて、多分1mmも疑ってないな。
……いやでも、それってすごく格好良い。
なんか学生のころ体育祭とかで感じていた、“全力になれないコンプレックス”を苦く思い出す。
負け試合なんてやらないさ。そう思って拗ねていた自分がセイラーを馬鹿にする男と重なった。……お前の方がよっぽどダサいぜ。
きっと学生の頃の拗ねた私は、セイラーの視界になんか入っていなかっただろう。
◾️エルヴィスの波動を感じるぜ
今作で印象的な使われ方をしているのがエルヴィス・プレスリーの楽曲である。
“Love Me”と“Love Me Tender”。これが、またものすごく良い曲なんだ。
そもそもエルヴィスの曲って、当時の“俺についてこい”感と、“お前のためならなんだってするさ”みたいな恋の奴隷感を兼ねていて、とても甘い。
すごくモテる恋人が、私の前でだけ膝をつく様に満たされる感じがする。あれ、このキモい感覚、私だけだったらどうしよう。
……とにかく、セイラーも“エルヴィスの波動を感じし者”なのだ。恋人のルーラはいつも満たされた顔をしていて幸せそう。
そんな2人を見ているとたまらなくなる。叫びたいくらいだ。
結婚式では“Love Me Tender”を流したいね。
◾️最後に
Filmarksで最初★3.6をつけていたのが、日に日に上がって、★4.4になっていた。じわじわやられた映画だった。
最近では、エルヴィス・プレスリーが好きすぎて彼の主演映画まで漁る日々だ。キュート……。
今まで観たことのない名作をふと観ようという気になったとき、それが人生でその映画と出会うべき日なんだと思う。『ワイルド・アット・ハート』はそんな映画だった。
ハートに刺さったぜ、ありがとよ。