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映画レポ|『リトル•ミス・サンシャイン』自分が1番だと思うならそれで優勝

飽きるほど耳にする“自己肯定感”という言葉。
ああ私は低いですよ、そりゃあもう…
自信を持てと言われても、なかなかそう簡単にはいかないのが現実だ。

今作の主役は、“落ちこぼれ”ばかりのとある家族。みんながみんな「うまくいくわけがない」と思いながら旅ははじまる。さて、無事目的地へ辿り着くことなんてできるのか…?

◾️あらすじ

田舎町アリゾナに住む少女オリーブ。なんともブサイクでおデブちゃんな彼女が、全米美少女コンテストでひょんなことから地区代表に選ばれた。オリーブ一家は黄色のオンボロ車に乗り、決戦の地カリフォルニアを目指すことに。人生の勝ち組になることだけに没頭する父親、ニーチェに倣って信念で沈黙を貫く兄、ゲイで自殺未遂の叔父、ヘロイン吸引が原因で老人ホームを追い出された不良ジジイ、そしてバラバラ家族をまとめようと奮闘する母親。そんな落ちこぼれ家族の、奇妙でハートフルな旅が始まった・・・!

【20世紀スタジオ】
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/little-miss-sunshine

◾️「だめだこりゃ」と笑える個性豊かな家族たち

あらすじにもある通り、フーヴァー家は変わり者。みんなが集まる冒頭の夕食シーンなんて最悪だ。自殺未遂をした叔父が来ることによる気まずい空気。それをないもののように扱う見え見えな配慮をする母親。極め付けは、空気が読めない祖父が夕食に文句を撒き散らしながら登場。この個性豊かな面々が、家族のカオス具合を醸し出していて笑える。
極端なようにも思える設定だが、案外この気まずさに共感を覚える人も多いんじゃないだろうか。毎日が平和な家庭なんてまずないだろう。どんな家にもひとつぐらいは問題はある。だからだろうか…どんなにダメダメでも、つい応援したくなってしまう。

◾️自信をなくすミス・サンシャイン

私のなかで最も印象的だったのは、モーテルでオリーブが祖父と話すシーンだ。完璧主義者で負け犬が大嫌いな父親のもとで育ったオリーブは、コンテストで負けることを恐れていた。眠る前、オリーブは心配そうに祖父へ問いかける。

「おじいちゃん、わたしってかわいい?」

“美少女コンテスト”というものは、第三者の目から見て顔やスタイルが美しくなければならない。オリーブはそういった類からはかけ離れた少女なのにも関わらず、祖父からみればかわいい孫は世界一の美少女そのもの。

「お前は世界一かわいい女の子だよ。わしがお前に惚れてるのは、頭や性格のせいじゃない。美しいからだよ。中も外もな。」

普段はめちゃくちゃな祖父だが、急に良いことを言いだすではないか…。微笑むオリーブ。彼女の自身は定まった。そして翌日、なんと祖父は目を覚まさなかった。し、死んだ?!なんてこった!

◾️ミスコンなんて、もうどうでも良い!

「離婚?破産?自殺?みんな負け犬じゃないか!!!」色弱であることが発覚し、パイロットになれないとわかったドウェーンが家族に叫ぶ。彼らはこの旅でやっとそれぞれが抱える問題に向き合うのだ。
「ミスコンなんてくだらない。僕らの人生はくだらないミスコンの連続さ。空軍アカデミーだってくだらない。飛びたきゃ自分のやり方で飛ぶ!」

ミスコンなんて…とオリーブを止めにかかるドウェーンだが、オリーブはすでに決心していた。そして出番は始まる…彼女は観客の前で踊りはじめた。祖父から振り付けを受けた、下品でヘンテコなダンスを。これにはフーヴァ一家も驚きである。周りからは「最低だ!」とヤジが飛ぶなか、今さら自分たちが最低なのは、もう知っている。決意を固めた家族は、オリーブのもとへ駆け寄りともに踊るのだった…。

◾️まとめ

こんなにもシュールなロードムービーははじめて観た。誰もが虚勢を張った負け犬で、観ているとなんだか安心さえしてくる。負け犬だっていい、舞台にあがって好きに踊ってしまえばいい。そんな強さをこの映画は教えてくれる。

祖父も、最期にオリーブへこう言っていた。
「負け犬っていうのはな、怖くて最初から何もやらないやつだ。お前は違うだろう?」
…そう考えれば、フーヴァー家はただの負け犬ではなかったのかもしれない。

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