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【ネタバレ感想文】映画『ラストマイル』を見た

⚠️注意⚠️
ネタバレ全開の感想文です。
純粋に作品を楽しみたい人は今すぐ回れ右してください!









はい、大丈夫ですね?ではいきます。

私はアンナチュラルもMIU404も履修済。特にMIU404にドハマりして、サントラを購入し、平日に半休をとって赤坂にメロンパン号の展示を見に行き、Blu-ray特典のミニチュアメロンパン号を何年もずっと会社のデスクに飾ってたくらい、好き。

ラストマイル公開の情報を知った時、伊吹と志摩にまた会えるんだ…しかも大きな劇場のスクリーンで…!と胸が熱くなった。

脚本家の野木さんは、安易に続編を書かないタイプの人なので、こんなオタクの都合のいい妄想みたいな作品が見られるなんて、夢か…!?と本気で思った。ありがとう…ありがとう…

私の前情報はどうでもいいですね。構成とかうまくまとめられないので、以下、箇条書きにします。あ、2回見ました。


•胸がいっぱいで、とりあえずため息しか出ない。犯罪は許されることではないけど、誰も悪者として描かれていないのがさすが野木さんだなと感じた。みんな、それぞれのポジションで、自分の仕事を日々、精一杯やってる、ただそれだけなんだよな。それが尊くて、涙が出る。みんな生きてる。

•佐野親子の、息子のセリフが、今の日本の物流業界に携わってる人たちの気持ちを全部代弁していて、辛かった。昼休憩を10分で切り上げて、1日200個荷物を配達しても、過労が原因で死んでしまったら、何の意味もない。そんな過酷な現状に目を向ける人なんて誰もいない。「誰も親父のこと、大切にしてないよ!」ほんとその通りで。クリックひとつで欲しいものが翌日には届く便利な生活に慣れきっているから、見て見ぬふりをしている。気づいているのに何もしない罪。

•エレナが想像以上に仕事ができる優秀な女性で、最初圧倒された。センター長に就任した初日に爆発事件が起きて、ひるむことなく臨機応変にきびきびと対応する。おそらく事前にこうなることがうすうすわかっていたんだろうけど、凡人にはとてもこんな風にはやれないわ。決断が早すぎて目が回りそう。なお、しごでき女性が登場するのはアンナチュラル(ミコト)、MIU404(桔梗隊長)と共通している。

•序盤のエレナは、会社の利益を最優先に考えているのがびしびし伝わってきて、いかにも外資系なドライな人だなと感じたけど、徐々に彼女の過去が明かされ、弱いところも見えてきて、人間くさいところに引き込まれ…というところで、まさか主人公が犯人…?うそやろ…!?とミスリードされるのがたまらん。本筋からそれるけど、エレナがやたらごついリングや大ぶりなピアスを身につけているのは、きっと彼女なりの武装なんだと思う。

•シークレットゲストの中村倫也には本当に驚いた。よく試写会から公開日まで一切情報が漏れなかったもんだ(少なくともTwitter上では)MIUでも事前告知なしで突然菅田将暉が出てきたもんな…まんまとやられたわ。

•ベルトコンベアを止めたくて、稼働率をゼロにしてやりたくて飛び降りたのに、ものの数分で再び動きはじめる描写、あまりにもむごすぎる。でも、これが現実なんだよな。人ひとりいなくなったところで、社会は変わらず動き続けるんだよ、とわりとすんなり受け入れている私も、狂ってるのかもしれない。ベルトコンベアの無機質な機会音がまるで心臓の鼓動のように延々と響く演出が、うすら寒くて不気味。

•エレナが深夜、おそらくアメリカ本社のサラとパソコンの画面越しに会話していて、心配してくれてありがとう、私は大丈夫、うまくやれる、などと言った後、ねぇ、私はどっちだと思う?とたずねるシーンが印象に残った。「どっち」とは何を指しているのか?アンナチュラルとMIUの流れを汲むならば、「間に合う方」か、「間に合わない方」なのか?気になるので、もうしばらく掘り下げて考えたい。

•全編通してデリファスのコーポレートカラーであるオレンジ色が鮮やか。エレナも赤やオレンジ色の服を着ているシーンが多い。対する筧まりかはエレナに会いに来た時、青いマフラーを巻いていて、MIUの6話と同様に、色の対比が美しく、切なかった。間に合った人と、間に合わなかった人。エレナだって一時期精神的に疲れ切ってしまい、カウンセリングを受け薬を飲んで休職していたのだから、一歩間違えれば山崎佑のようになっていた可能性はあったんだ。誰もが爆弾を抱えている。

•伊吹と志摩は、なーんにも変わってなくて安心した!劇伴「伊吹藍」が流れはじめた瞬間にゾワァッと鳥肌が立った。まさか同じ曲を使ってくれるなんて!伊吹はあいかわらずきゅるきゅるしてるし、匂いがどうこう言ってるし、でも志摩は伊吹のそんな言語化できない野生の勘を全面的に信じることにしたんだなと、伊吹の良さを大事にすることにしたんだなと、4年間の彼らの関係性が、そんなやりとりを見ているだけで伝わってきて、ほっこり幸せな気持ちになった。これからもずっときゃっきゃうふふしていてほしい。

•パンフレットの袋とじの中を読んで、最近読んだ本にあった「人は理由のない不幸に耐えられない」という言葉を思い出した。彼の衝動に何の意味もなかったなんて思いたくないんだよね。理由がほしくて事件を起こしてしまった気持ちもわかってしまうから、つらい。筧まりかが爆弾を仕掛けるために選んだ商品が、アロマディフューザー、安眠枕、ポータブルスピーカーなど、きっと眠れなくなった彼のことを思って選んだんだろうなと想像できるものばかりで、泣ける。優しい人だったんだろうな…。ただ、2人で幸せになりたかっただけなのに。

•筧まりかは広告代理店勤務で、直近2年の土日は復讐の準備のためデリファスで働いて、もうまともな思考ができる状態じゃなかったんだろうと想像できる。働きすぎダメ絶対。エンドロール後の注釈文、最後の一文が製作陣の一番伝えたいメッセージなんだろうなと感じた。生きてさえいれば、何度でもやり直せる。ゼロ地点からもう一度スタートできる。野木さんの脚本はいつだって、「生きろ」と言っている。

•松本家のお母さんや、佐野親子が、辛さを吐露しつつ、わざわざ食事をしているシーンを丁寧に描いているのも良い。食べるということは、生きることだから。

•大手運送会社3社がストを起こし、賃上げ要求の交渉にこぎつけた!と八木さんが発表するシーンで、思わず拍手したくなった。ネットで買い物するときはどうしても送料が気になるけど、むしろ安すぎるくらいだと反省。

•爆弾はまだある。ロッカーの鍵を受け取った孔はあの後どうするのか、誰にもわからない。孔とともにとてつもなく重い荷物を受け取った私たちは、考え続けなければいけない。

•エレナがやっと、眠れてよかった。



✳︎


転職したばかりの新しい職場では、毎日大量の荷物を発送しているし大量の荷物が届く。海外に送る荷物もある。これが、翌日には正しい住所に確実に届くんだよな…と考えると、運んでくれる運送会社の人たちには頭が上がらない。そう思いながら毎日送り状を作成している。

映画を見た日、帰宅途中に運送会社のトラックが止まっていて、おそらく受け取る人が不在で荷物を持ったまま車に引き返してくるドライバーさんとすれ違った。あのおじさんがラストマイルを見たら、どう感じるんだろうか。



はぁ、ムビチケあと3回分くらい買っときゃよかったな。たぶんあと1回は確実に見る。


たい焼き




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たい焼き
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