こどものモチベーションを上げる方法
受け身でそろばんやっている子どもにはどうしたら良いか? というご相談をいただきました。そこで「モチベーションの高め方」について書いてみます。ご参考になれば幸いです。
お子さんのモチベーションをあげるには?
大前提:こどもへの深い信頼
まず大前提として
「心理的安全性」と「自律性」
が確保されていることが大事と考えています。
ちょっと難しいですね。要するに
「こどもを心の底から深く信頼する」
これがすべてのベースで、これができていれば、上の2つは自然にできていることと思います。
「心理的安全性」は、ひとことで言えば
『(失敗しようが)ありのまま受け入れられる安心・信頼感』
「自律性」は、
『自分の行動を自分で決められること』
と思ってもらえれば十分です。
より詳細はこちらの記事をご参考ください。
その上で、正解は無数にあるので、
モチベーションについて理解を深めながら、
こどもの「今」を感じ取って
その都度よく考えて最適な選択肢を選ぶ
ことでしょうか。
また、モチベーションを高める前に、
モチベーションを下げる行動(「心理的安全性」と「自律性」を損ねる行動)をしない
ことも非常に重要です。
最適な選択肢の選び方
さて、「心理的安全性」と「自律性」を踏まえたうえで、どうやって最適な選択肢を選ぶのかという話です。
こどもはひとりひとりまったくちがう個性を持っているし、おかれている環境もまったくちがいます。
そして、今、目の前のこどもは、昨日とも、さっきともちがうこともしばしば。
ですから私たちこどもの成長に直接関わる者は、
その子をよーく観察して、
できる限りその子自身の心のうちを理解しようと努め、
今のその子に一番よい選択肢は何かを判断し
トライ&エラーを繰り返してフィードバックループを回す
ことで、少しずつその子が楽しく自発的に学んでいける状況に近づけていけるようにしたいものですね。
選択肢の作り方はこちらをご参考ください。原理原則を活用して自分でどんどん作り出していけるようになればと幸いです。
2本で1つの記事で長くてすみません・・・
エピソード:母親の関わり方とモチベーション
まずは具体例からご紹介しますね。
非常に印象的な素晴らしいお母さんがいらっしゃいました。
そろばん教室に初めてやってきた年長さんになったばかりの男の子。
教室では最初、1人で座るのがイヤでどうしてもママに隣にいてほしいらしく、お母さまはいつも隣に座って本を読んでいらっしゃいました。
一見すると無関心なのですが、その関わり方が絶妙で素晴らしいのです。
すぐ隣にいるのにまったくと言ってよいほど口出ししません。何かあれば本人が手をあげて先生を呼びます。きっとお母さまはあえて教えずに、先生と本人との関係を尊重してくださっているのかな、と感じました。
次第にその子がどんどんたくましく成長していって、もう1人で大丈夫、と自分で宣言して、席にも1人で座るようになり、年上の子に混じって少しずつ頭角を表してきました。
始めてから9か月ほど経ったところでコロナによりオンラインになってしまいましたが、そこからの伸びが凄まじく、検定試験を次々に合格していきました。
何より、自分で練習方法を考えて工夫し、記録をつけて改善を繰り返すということを完全に身につけてしまったことに驚きました。練習の工夫自体に面白味を感じているようにも見えます。まだ小学1年生なのに、完全に自律学習ができてしまっているのです!
お母さまからうかがったお話を総合すると
① お母様も一緒にそろばんを始めた
② おうちで一緒にそろばんで競い合って共に楽しむ時間になった
③ 最初はお母さまが余裕で勝てたのに、いつしか到底かなわなくなった。
お話をうかがって本当に素晴らしいなと思ったのが、お母さまの立ち位置。一緒に学ぶ仲間というフラットな関係でサポート役に徹していらっしゃるように感じた点です。
このお母さまからは、大変多くの大切なことを学ばせていただきました。その中からまずは、「ママと一緒に競い合って学ぶ」について、モチベーションの観点から考えてみますね。
上に紹介した記事で説明しているのですが、6つの学習動機というモデルがあります。
内発的動機(他者、外部に関係なくやりたいからやる)として
①好き、興味関心 ②成長実感 ③実利・自分の役に立つ実感
外発的動機(他者からの報酬・承認など)として
④仲間と一緒 ⑤認めてもらいたい ⑥ごほうび
「ママと一緒に競い合って学ぶ」には、
① 好き、興味関心(大好きなママと一緒にそろばんで遊ぶこと自体も喜び)を引き出し、持続するだけでなく、
② 成長、④仲間、⑤認めてもらいたい 欲求も大きく満たしていますね。
ここで一番大事な点は、勉強させる/勉強する とか、教える/教わる という上下の関係ではない、対等、フラットな関係にいることです。
これは、「心理的安全性」と「自律性」に大きく作用します。
モチベーションをあげる目的別ハウ・ツーのつくり方
こどもの一般的性質として、真似したがる~「僕もやりたい!」があります。
小さなこどもは、ひたすら周りの人間のやることを真似して習得していきます。
母国語も、二足歩行も、よい癖も悪い癖も(笑)
なので、親が楽しそうにやっている姿を見せられればベスト。
「こっちの水は甘いぞ」作戦です(笑)
先のエピソードはそのお手本ですね。
仲のよい友だち、兄弟がすごく楽しそうに遊んでるのを見たら自分もやってみたくなりますよね。
また、動画などを見て「すごい!かっこいい!やってみたい!」となるのももちろん。
それではまず、①好き、興味関心 と② 成長したい をブーストさせるハウ・ツーのつくり方を考えてみましょう。
こどもは特に、楽しいことはやめろと言ってもやりたがります。楽しくなければまず自分からやろうとはしないですよね。
今学んでいることが楽しくてしかたなければ、モチベマックスのはず。
逆に楽しくない場合には、
「どうやったら楽しめるか?」「練習自体を楽しくする」方法
を考えだせばいいですよね。
楽しくなるには、いくつかの要素がありますが、
①興味・関心≒楽しさ これは、一言で言えば「ゲーム化」。
②成長したい これには、「できるという自信が得られること」と「成長実感」が絶対に必要。
それには、今の自分にぴったり合った練習内容・方法がベスト。
簡単にまとめるとこんな感じです。
楽しむ → 「ゲーム化」
「できる」「レベルアップ感」 → スモールステップ
自分にぴったり合った練習内容 → 自律練習(自分でやる内容・やり方を決める)
取り組みやすさ(短時間で結果が出る)
遊び化・ゲーム化で ①好き、興味関心をブースト
つまらない練習もスポーツ感覚・ゲーム感覚を取り入れると一気に前のめりになってどハマりする子が出てきます。遊び心、おふざけが鍵。
そろばんの場合だと
タイムトライアル
ストップウォッチを使ってどれだけ速くできるかのゲーム。九九の習得でも絶大な効果を発揮します。長くても30秒~1分程度の時間で済む分量がよいです。
九九なら1つの段だけとか、それも難しければ5個だけとか。
たしあげ
1~10までとか11~20とかをたす。または1分でどこまでたせるか。
みとり:1問を何秒でできるか
かけ、わり:1~3問を何秒でできるか
※たしあげ 1+2+3+4+...とたしていく練習。
やったことのないめっちゃくちゃ難しいものに遊びでチャレンジしてみる
すごいけたの数の計算。普段2桁のたし算引き算をやっている子に6桁+6桁とか。
簡単だけどめちゃくちゃ速くやるゲーム:限界にチャレンジ!
0.5秒間隔とかで言われた数をどんどん数をたしていく
さらに遊び化(おふざけ)
・はしでそろばんをはじいてみる
・目をつぶってそろばんをはじいてみる
他の遊びと組み合わせる(ごほうび的)
・1問やったら1つぶタマゴボーロを食べる(こどものアイデア)
・1問やったら漢字を1画書く(こどものアイデア)
・1問やったら積み木(カプラ)を1つ積む
・1個正解したらドラえもんの絵描き歌の1パーツずつ描く。→絵が完成するまでやりたがる
好きなものとリンクさせる
・ママと競い合う
・好きなキャラクターのシールをテキストに貼る(ごほうび的)
「かっこいい」「憧れ」の刺激
そろばんや暗算のすごい人の動画を見て刺激を受ける(自己実現的)
スモール・ステップ化で ②成長したいスイッチを入れる
「スモール・ステップ」
やるたびに、「できた!」という嬉しい成功体験をたくさん味わえるように工夫します。
・自分のレベルにあった練習内容にアレンジ
例えばそろばんのみとり算というものでは、10分間で150回のたし算引き算を行います。(1問につき15回の計算をして、それが10問)
これがハードなんです。
スモール・ステップ化して取り組みやすくしましょう。
①10問やるのは大変だから、小分けにします。
→1問ごとに答え合わせ
②さらに、1問につき15個も計算するのは大変だから、
レベル1:ゆっくり5個計算したところでいったん答え合わせ
レベル2:5個計算に慣れてきたら、今やってできた同じ問題をもっと速く
レベル3:ゆっくり10個計算
レベル4:10個計算に慣れてきたら、今やってできた同じ問題をもっと速く
レベル5:ゆっくり15個計算
レベル6:15計算に慣れてきたら、今やってできた同じ問題をもっと速く
レベル7:3問セットにチャレンジ・満点を目指す
レベル8:5問セットにチャレンジ・満点を目指す
これだけでも8段階にスモールステップ化できましたね。
達成可能なもの、常に自分の実力にちょうどあったレベルに取り組むことが大原則です。
「記録・やったことの見える化」
・ストップウォッチで計って記録をつける。
・九九やたしあげ練習のタイムトライアルを記録していると、スピードアップしているのが一目でわかり、「前はこれしかできなかったんだ~」と強い成長実感が持てます。
さらに、今のレベルがわかるので、もう少し上を目指したくなります。
検定試験の合格証・合格シールもよいモチベーションになります。
上記ではうまく行かない場合の③~⑥+1の動機づけについて詳しく考えてみましょう。
その他のモチベーション要因とハウ・ツーづくり
③実利・自分の役に立つスイッチを入れるには?
そろばんの場合だったら
「算数」「集中できてる」「姿勢」などを普段の生活の中で声をかけて気づかせてあげる
「計算すごいね~そろばんやってるしね」
「すごい集中力!そろばんでもすごい集中してるよね」
「姿勢いいね!そろばんで黙想してるもんね」
④仲間と一緒スイッチを入れるには?
親子で一緒に横並びで学ぶ(エピソードでご紹介した通りです。)
「〇〇ちゃんもがんばってる」~仲良しの友だち、クラスメイトを意識
⑤認めてもらいたいスイッチを入れるには?
「すごい」「さすが」「かなわない」など対等の関係の言葉かけがよい
過去と比べて進歩していることを言葉で伝えて認識させる
こどもにやりかたを教わって「ありがとう」と言う。大人に教えることができるというのは自尊心を大きく高めます。
⑥アメ・ごほうびスイッチを入れるには?
これは最後の手です。
⑦なりたい自分・自己実現スイッチを入れるには?
動画で/リアルで すごい人がプレイする様子を見る。→あんなふうになりたい!という憧れができる
まとめ
大前提として「心理的安全性」と「自律性」
モチベーションにはいろんな要因がある
そのうち、まず「好き/興味関心」と「成長」にアプローチ
ハウ・ツーを自分でつくる
こどもをよく観察して最適な選択肢を選んでトライ&エラー
子育ては、あまたある職業のうちもっとも重要性の高い仕事と断言できます。
人間を1人(兄弟姉妹のいる方は2人、3人も!)育て上げるってとてつもないことだと思いませんか?
何かの製品をつくるのとはわけがちがいます。
そして、ハウ・ツーではない子育ての智慧を磨いて熟達した方は、人間理解を相当に深めているはずなので、必ずや他の分野の仕事において他者と働く際にも「人を見る目」、「個性を生かしモチベートする力」など素晴らしい力を発揮されることと確信しています。
モチベーションに関する記事をこちらにまとめてます。
そろばん教室やってます。