タイ政治
最近、タイの近現代政治史に興味をもった。
同国では、「ラックタイ」や「ラッタニヨム」といった概念・教条にもとづく教化政策が行われてきた。
http://peacebuilding.asia/thai-religion-buddhist-muslim/
タック・チャルームティアロン『タイ――独裁的温情主義の政治』(勁草書房)では、サリット政権(1959~1963)における「ポークン」「パッタナー」などの概念が紹介されている。
タイは「微笑みの国」と呼ばれるが、政治はけっこう独裁的で、それが現代にも尾を引いているようだ。
同国の歴史教科書をひもとくと、面白い事実に気がつく。
世界の教科書シリーズ6『タイの歴史 タイ高校社会科教科書』(明石書店)にはピブーンは出てくるが、彼が行ったラッタニヨム政策や、ラックタイを重んじたサリットのことは載っていないのだ。
日本でいう高校3年生用の教科書らしいので、影響力のあった首相について詳述されていてもよさそうなところだ。
独裁者や教化政策には触れにくい事情があるのかもしれない。
訳者による「あとがき」も、教科書としての内容の偏りを指摘してはいるが、サリットの名前が出てこないことに言及していないのが不思議である。
ちなみに訳者の柿崎千代さんは、東京外国語大学で修士号を取得しているようだ。