『さよなら子供たち』の悲しいシーン
ルイ・マル監督の『さよなら子供たち』(1987)には、悲しいシーンがあります。
というより映画自体が悲しい作品なのですが、とくに筆者の記憶に残っている場面を二つ紹介します。
『さよなら…』は第二次大戦中、ナチ占領下のフランスでのユダヤ人迫害がテーマで、監督の実体験を元にしているそうです。
そこで、ユダヤ人の転校生が登場するのですが、同級生たちには出自を隠しています。
同級生たちは、お国柄的に皆カトリックです。
そして、学校でカトリック式の儀礼が行われた際、彼だけがその儀礼を受けませんでした。
儀礼を受けなかった理由を問われた少年は、自分はプロテスタントなのだと偽ります。
本当はカトリックよりも歴史が古いユダヤ教の信者なのに、プロテスタントだと名乗らねばならなかった彼の気持ち!
しかも、「信仰心がないだけじゃないか?」とか「無神論者め」とまで言われる始末。
労しい限りです。
もう一つは、タイトルにもなっている「さよなら子供たち」という台詞。
原文は«Au revoir, les enfants.»で、「さよなら」に当たる«Au revoir»は、字義的には「また会うときに」 といった意味になります。
しかし、この台詞は、再会の可能性が極めて低い状況で発せられます。
そのコントラストが、悲しいのです。
以上、『さよなら子供たち』の悲しいシーンでした。