死刑がある国の映画
ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』(1958)は当然ながら、フランスに死刑制度があった頃の映画である。
逆に、死刑廃止(1981)以後のフランスでは、こうした作品は作りづらいのかもしれない。
実際には死刑がないのに、死刑への恐怖を前提にするのは無理があるからだ。
死刑存置国である日本では、2013年に『藁の楯』という映画が作られた。
凶悪犯の命を狙う一般市民と、その命を守る警察との攻防を描いている。
死刑になる犯人の命を守る意味はあるのか、死刑になる犯人の命を奪うのは罪なのか、といった疑問を投げかけているものと思われる。
この作品はカンヌ映画祭のコンペティション部門に出品されたそうだが、死刑廃止国の人々にはどう映ったのだろうか。
フランスでは既に死刑が廃止されており、死刑制度自体が「古いテーマ」とも言える。
それでも『藁の楯』は死刑制度の矛盾を、西洋流の「赦し」や「寛容」とは全く違った角度で描いてはいる。
ただし、死刑廃止論よりは厳罰化論に親和的だが。