君は何色が好きなんだい『迷走戦士・永田カビ』
やあ、僕だよ。
今日実は妊婦検診で性別がほぼ確定したんだ。
「性別なんてどちらでもいいよ」なんて吹聴していたけれど、実際分かるとすごくきちんと感動することが出来た。
そんな感動の直前、待ち合いの間読んでいたのがこちらの一冊。
僕は病院が苦手なので、なるべくテンションの上がる本を用意していつも乗り越えてるんだ。
今回も裏切らない面白さ、僕はこういうエッセイを書いていきたいと常々思っているよ(しかし憧れは理解と最も遠い感情なのである)。
さて、今日は「かけがえのないパートナーとは何なのか」と「性別について」の話をしていこうと思う。
最後まで付き合ってってくれよ。君が気に入ってくれると嬉しいのだけれど。
じゃ、始めようか。
本作あらすじと感想
『迷走戦士・永田カビ』永田カビ
生まれてこの方「一度も恋人が出来たことがない」作者が、友だちの結婚式をきっかけに突如「一人結婚式」をしたり、マッチングアプリで相手を探したり、自分を「大切に」したりするコミックエッセイ。
なお、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』や『現実逃避してたらボロボロになった話』も読了済みである。
この人の絵が大好きなんだよね、僕。特に永田カビ氏が泣いてる絵や背筋を丸めている絵が大好き(絶望希望の表情のバリエーションが多すぎる)。
画風だけじゃなく、エッセイ内容自体もとてもいい。
一瞬一瞬の感情の動きや思考を細やかに拾い、それを地道に積み重ねるような内容でいて冗長でない。
緻密なデッサンのごとき心情表現とそれに対する理知的な分析が漫画に緩急をつけ、内容がすっと入ってくる。
読み進めていくと頭がすっきりするコミックエッセイは貴重だ。
永田カビ氏は現時点では生き方が上手いとは言えない(作家として成功してはいるが)。
でも生き方が上手い人なんて、才能がある一握りかたまたま運が良い(これから予期せぬ大厄が迫る)か、あるいは上手く見えているだけに過ぎないと僕は思ってる。
これは、多かれ少なかれ皆が抱える「生きづらさ」を書いた一冊である。
トピックスは「婚活」や「恋愛」、「自己肯定感」などと最近流行りのものを取り上げてるわけだが、僕が好きなのはあくまでも行動に対する丁寧な感想と冷静なフィードバック、あとは彼女の不器用さとズレ。
流行りものばかりなのに他のコミックエッセイより一段面白いのはそこなのである。
かけがえのないパートナーって何だ
これまでの僕はというと重度な恋愛体質で恋人が途切れなかったクチである(友だちはいない)。
不特定多数とセックスするのがどうやらダメらしいと気付けた(当時浮気がバレて痛い目を見た)おかげで、友だちは「今のところセックスしないけど幸せを祈る人」、恋人は「セックスしてもいい幸せを共有する人」と線引きが出来るようになった。
そこに夫が現れ、しばらくして「セックスしてもしなくてもいい幸せにしたい人」となった。しかもこの人とは「幸せを祈る」し、「幸せを共有」する。
最近は「幸せだと分かると僕も幸せになる人」(これを家族愛と呼んでいる)の要素も備えつつある。僕の愛情欲張りセットか。
いや、恋人と友だちと夫の違いは気持ちの距離感なのかもしれないな。
もちろん性欲云々はファクターの一つではあるが、最重要ではない。原則、僕の中でセックスと愛は切り離されている。
「この人と気持ちいいこと共有してみたいな」、「もうちょっと知りたいな」くらいの感じでベッドを共にする感覚は正直、昔から変わっていない。でも当時だって僕の中で友だちは友だち、歴代恋人は恋人と明確に分けられていた(恋人は友だちではない。その時その時で切り替わることがあったとしても、長い付き合いになるときちんと定まるものなのだ)。
友だちも恋人も、兼用する夫は僕にとって唯一無二の存在であり、それはセックス云々とは関係ない気持ちのゼロ距離感がそうさせるのだ。
(もっとも、夫以外の人間にそんな感情を持つことは今後ないだろう。何せ僕、忙しいからね。)
僕の性的志向と性自認、優しい先生について
これまで僕の記事をいくつか読んできた暇な君なら薄々勘づいているかもしれないが、僕は男女関係なく恋愛が出来る性的志向だ。
このことでそれなりに悩んだ乙女な過去もあれど、世はダイバーシティ黎明期、多様性の社会を歩み始めているので悩んでいた時間は実に無駄であった。
そんな僕なので性自認に関しても少しだけ紆余曲折したことがある。
自分の体に大きな違和感を覚えるような、壮絶なものでは決してなかった。
でも腹の子の性別を聞いたら多少なりとも複雑な思いを抱くのでは、と結構怖かった。
でも全然、普通に素直にめっちゃ嬉しかった。
嬉しいというか感動した。感動して泣きそうになって眉間に皺が寄っているのに口元はずっと緩んでいた。
「もしかして、知りたくなかったですかね?」
優しいというより理路整然で冷静って感じな(でも優しくあろうとするホスピタリティ意識の高い)先生が気遣うくらい変な顔をしていたらしい。
声を出すと号泣するので首を横に振った。
性自認?性的志向?そんなもの犬に食わせておけ
大事なのは目の前にいるその人を「知りたい」と思えるのか、知った時「幸せにしたい」と思えるのかだ。
今いなくても世界には何十億人も人間が存在する。いくらでも話していくらでも知っていけ。
場合によってはセックスもありだ(と僕は思うけれどほどほどにしないと刺される可能性はある)。
自分の子どもにはそんなくだらないことに悩んで時間を無駄にしてほしくないと切に願う。
でもまあ、タレブさんも言ってたけれど、拒絶するマイノリティが世の中を良くするってこともある(ごく一部悪くすることもある、とのこと)から必要になったら考えるといい。
少なくとも「他の人と違うのが嫌」なんて絶対言わせたくない。
そもそも同じ人間など存在しないのだから、性自認や性的志向だって千差万別。厳密に言えば綺麗に区切れる人なんていない、と思うんだ(皆時間がないから定義しないだけさ、僕と違ってね)。
君は何色が好きなんだい
病院の帰り道、診察から引き続き、胎動がもの凄かった。
しかも暖かい日光を浴びていて、性別が分かった事実を噛みしめているのである。とんでもない多幸感に頭がふわふわお花畑だった。
実際、性別は本当にちゃんと、どっちでもよかったのだ。
僕は思った以上に彼女(今のところ)を愛していて、その彼女について強く「知りたい」と思っていた。
それだけだった。知れて嬉しいという感情しかない。
性別を知ったら複雑な気持ちになるなんて心配、まったく見当違いだった。
急に幸せすぎて逆に怖くなってきたくらいだ。
今日は3期生ライブもあるし、明日僕事故って死ぬのでは?と思った。
大丈夫大丈夫。
まだ産んでないし、一緒におしゃれしたり本読んだり映画行ったり推しの布教し合いをしてない。
これからもっと幸せになるのだ。だから僕は死なない。
(大体、死亡事故に遭う不運と自分の幸せには因果関係が一切ない。)
そろそろベビー用品を買い揃えようとしているが、いろんな色にしてあげようとふわふわの頭で想像していた。
人間以外の目の良い動物たちもそれぞれ色の嗜好が存在する。それは種族ごとでもそうだし、個体差もある。
うちのセキセイインコメスはセキセイインコの癖に体色(緑や黄)より黒が好きだ。黒いTシャツを見るとすぐに肩に乗ってくる。
逆に以前の勤め先にいたワシミミズクは黒が大嫌いで、警戒のサインをずっとやめない子だった。
僕や夫だって色の嗜好は存在する。それなら、人間でもあり動物でもある腹の子だって存在するのだろう。
「君は何色が好きなんだい」
図らずも初めて彼女に向かってはっきりと声をかけた。
相変わらず暴れていたので僕の声に反応したかどうかは分からない。
まあ、あと4カ月くらいで会えるのだからその時改めて聞いてみることにしよう。
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